赤旗法

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赤旗法(あかはたほう、: Red Flag Act)とは、19世紀後半に英国で施行された法律。正式にはLocomotive Act

英国公道における自動車(当時は大多数が蒸気自動車で、ガソリン車はまだ実用化されていなかった)の運用方法について定めた法律であり、歩行者や馬車の安全に配慮するという名目ではあったが、実際には馬車関連業者の権益を保護するために自動車を規制しようとした法律である。結果的に同国における自動車産業の発達を妨げ、ドイツフランスに遅れをとることになる[1]。1865年に制定された機関車法(The Locomotive Act 1865)にはじまる。

貴族のチャールズ・スチュアート・ロールズロールス・ロイス社創業者)らが、制限速度を無視した走行で赤旗法撤廃運動[2]をおこなった。その結果イギリスでの赤旗法は1896年に廃止された。

条例[編集]

  • The Locomotives on Highways Act 1861
    • 車両の重量は12トンに制限する。
    • 10 mph(16 km/h)、市街地では5 mph (8 km/h)の速度制限を課す。
  • The Locomotive Act 1865(赤旗法
    • 郊外では4 mph(6 km/h)、市街地では2 mph(3 km/h)の速度制限を定める。
    • 自動車は、運転手、機関員、赤い旗を持って車両の60ヤード(55メートル)前方を歩く者の3名で運用することを規定する。赤い旗かランタンを持った人は、歩く速度を守り、騎手や馬に自動車の接近を予告する。
  • Highways and Locomotives Act 1878(改正法)
    • 赤旗の必要性は除去。
    • 未だに必要とされた前方歩行要員の距離が20ヤード(18メートル)に短縮。
    • 馬に遭遇したら車両は停止しなければならない。
    • 車両が馬を驚かす煙や蒸気を出すことを禁ずる。
  • 1896年に廃止。

類似の法律[編集]

20世紀初頭まで、アメリカのいくつかの州に「自動車を運転するときには、必ず誰か一人が赤い旗を持って自動車の十数ヤード先を歩かなければならない」という法律があった(宇沢弘文「自動車の社会的費用」岩波新書、P68)。

日本の路面電車の黎明期である1895年(明治28年)開業の京都電気鉄道京都市電の前身)には、京都府令第67号電気鉄道取締規則により、赤旗や提灯を持って電車の前を先導する告知人(前走り)制度が1904年まで存在した[3]

脚注[編集]

  1. ^ [1]<危機の韓国自動車産業(上)>英議員「規制をなくせばトヨタ・日産工場が集まってきた」中央日報日本語版,2018年03月22日
  2. ^ CORPORATION, TOYOTA MOTOR. “ロールス・ロイスとベントレー(1906年)”. GAZOO.com. 2021年6月3日閲覧。
  3. ^ 英国「赤旗法」と京都「路面電車告知人」のよく似た関係 | CAR and DRIVER 2019年09月01日