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2023年10月に行われた第67回[[ロンドン映画祭|BFI ロンドン映画祭]]のコンペティション部門において、審査員の全員一致で作品賞 (Best Film) を受賞した。審査団は声明で「(この作品は)繊細かつ映画的で、力のこもった演技によって支えられている。 (…) 家族とそのコミュニティに関する美しい肖像であると同時に、自然の再開発をめぐる倫理的課題の複雑さについての考察にもなっている」と述べている<ref>{{Cite web |title=Award winners announced at 67th BFI London Film Festival |url=https://www.bfi.org.uk/london-film-festival/news/award-winners-67th-bfi-london-film-festival |website=BFI |access-date=2023-12-29 |language=en}}</ref><ref name="cinematoday N0139493">{{Cite news|author=市川遥|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0139493|title=濱口竜介『悪は存在しない』ロンドン映画祭で作品賞受賞!|work=[[シネマトゥデイ]]|publisher=[[シネマトゥデイ (企業)|株式会社シネマトゥデイ]]|date=2023-10-16|accessdate=2023-10-30}}</ref>。[[黒沢清]]が審査員長をつとめた第17回アジア・フィルム・アワードでは作品賞と音楽賞を授与された<ref>{{Cite web |title=Asian Film Awards Academy – 亞洲電影大獎學院 |url=https://www.afa-academy.com/ja/%e3%83%9b%e3%83%bc%e3%83%a0/ |access-date=2024-03-22 |language=ja}}</ref><ref name=":2" />。
2023年10月に行われた第67回[[ロンドン映画祭|BFI ロンドン映画祭]]のコンペティション部門において、審査員の全員一致で作品賞 (Best Film) を受賞した。審査団は声明で「(この作品は)繊細かつ映画的で、力のこもった演技によって支えられている。 (…) 家族とそのコミュニティに関する美しい肖像であると同時に、自然の再開発をめぐる倫理的課題の複雑さについての考察にもなっている」と述べている<ref>{{Cite web |title=Award winners announced at 67th BFI London Film Festival |url=https://www.bfi.org.uk/london-film-festival/news/award-winners-67th-bfi-london-film-festival |website=BFI |access-date=2023-12-29 |language=en}}</ref><ref name="cinematoday N0139493">{{Cite news|author=市川遥|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0139493|title=濱口竜介『悪は存在しない』ロンドン映画祭で作品賞受賞!|work=[[シネマトゥデイ]]|publisher=[[シネマトゥデイ (企業)|株式会社シネマトゥデイ]]|date=2023-10-16|accessdate=2023-10-30}}</ref>。[[黒沢清]]が審査員長をつとめた第17回アジア・フィルム・アワードでは作品賞と音楽賞を授与された<ref>{{Cite web |title=Asian Film Awards Academy – 亞洲電影大獎學院 |url=https://www.afa-academy.com/ja/%e3%83%9b%e3%83%bc%e3%83%a0/ |access-date=2024-03-22 |language=ja}}</ref><ref name=":2" />。


2024年4月に本作がイギリスで公開されると、同国の映画批評誌『Sight & Sound』は濱口を表紙とする特集を組み、彼がもっている「自信にみちていながら繊細な感情表現や、物語上のひねりを重視するきわめて独自の映画言語」は東京藝大の修了製作から本作まで一貫している、などと論じた<ref>{{Cite web |title=Sight and Sound: the May 2024 issue |url=https://www.bfi.org.uk/sight-and-sound/news/sight-sound-may-2024-issue |website=BFI |access-date=2024-04-07 |language=en}}</ref>。
2024年4月に本作がイギリスで公開されると、同国の映画批評誌『[https://www.bfi.org.uk/sight-and-sound Sight & Sound]』は濱口を表紙とする特集を組み、彼がもっている「自信にみちていながら繊細な感情表現や、物語上のひねりを重視するきわめて独自の映画言語」は東京藝大の修了製作から本作まで一貫している、などと論じた<ref>{{Cite web |title=Sight and Sound: the May 2024 issue |url=https://www.bfi.org.uk/sight-and-sound/news/sight-sound-may-2024-issue |website=BFI |access-date=2024-04-07 |language=en}}</ref>。


=== 受賞 ===
=== 受賞 ===

2024年4月7日 (日) 15:34時点における版

悪は存在しない
Evil Does Not Exist
監督 濱口竜介
脚本 濱口竜介
製作 高田聡
製作総指揮 原田将
徳山勝巳
出演者 大美賀均
西川玲
音楽 石橋英子
撮影 北川喜雄
編集 山崎梓・濱口竜介
制作会社 NEOPA
fictive
配給 Incline
公開 イギリスの旗 2024年4月5日/日本の旗 2024年4月26日/アメリカ合衆国の旗 2024年5月3日
上映時間 106分
製作国 日本の旗 日本
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悪は存在しない』(あくはそんざいしない)は、濱口竜介監督による2023年製作の日本映画。同年のヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞(審査員賞)を受賞した作品で[1]、この受賞によって濱口監督は、アメリカのアカデミー賞世界三大映画祭のすべてで主要賞の受賞を果たした黒澤明以来2人目の日本人監督となった[2]

概要

この作品は、濱口の前作『ドライブ・マイ・カー』で作曲をつとめた石橋英子の依頼から始まっている。石橋は『GIFT』と題する自身のライブ・パフォーマンスのための映像制作を濱口に依頼[3][1]。しかし濱口はそうした制作の経験がなく、石橋との協議をかさねるうち、抽象的なイメージ映像のようなものではなく、明確な物語映像を希望していることがわかり、しだいに物語が膨らみ始めたという[4]

濱口は石橋の仕事場に近い八ヶ岳をたびたび訪れ、この映画の撮影も多くはそこで行われた。また濱口は集落の人々から森や動物たちについての実践的な知識を数多く習得し、それは劇中に盛り込まれている[4]。また映画に登場する開発計画も、一部は実際に八ヶ岳周辺で説明会が行われた計画からアイデアをとっている[4]

本作は2023年夏のヴェネツィア国際映画祭を皮切りに各国の主要映画祭で上映されたのち、日本国内では同年11月に広島国際映画祭で初公開された[5][6]。石橋のライブ・パフォーマンス版『GIFT』は、2023年10月18日にベルギーの第50回ゲント国際映画祭で公開され[7][8]、日本では11月23日には第24回東京フィルメックスにて初上映されている[9]

あらすじ

山奥の小さな集落「水挽町」で暮らす寡黙な男・巧と、その一人娘・玲花。集落の人々は美しい森と澄んだ雪解け水に支えられて静かな暮らしを守ってきた。ある日、そこへ企業からキャンプ場建設の話がもちこまれる。企業はホテル施設を備えたキャンプ場「グランピング」の設置をうたっていた。これが実現すれば東京から多くの観光客を呼び込むかもしれないが、そこに置かれる浄化槽は、集落が誇りとする自然水を汚染するだろう。そしてこれはコロナ助成金目当てのずさんな計画らしい。ざわめきはじめる集落の人々。

住民説明会へやってきた事業側の男女に、集落の人々は理を尽くして反論する。この集落はもともと都会からの移住者ばかりだし、ここへ新たに加わりたいときちんと考えた計画なら反対する理由はなにもない。しかしその前に、この土地の人にとって自然水がどんな意味をもつのか、そこで暮らすことがどんな責任を負うことなのか、どうか一度よく考えてほしい。集落の人々のおだやかな姿勢に、事業側の男女は「地元の人は決して愚かではない」と態度を改め、計画のいいかげんさに気づくようになる。

しかし親会社は、助成金の申請期限が迫っているし、ガス抜きの説明会が済んだ以上、予定どおり設置をすすめればよいと方針を曲げない。説明会に出た男女は板ばさみとなって困惑し、集落から信頼を得ているらしい巧に協力をあおぐことを思いつく。そしてふたたび集落を訪ねるうち、森と山の自然が人間にとって善でも悪でもなく、ただ人間の世界とは別にそこに並立している存在だとかすかに気づき始める。そんな中、巧の娘・玲花の様子がしだいに変わりはじめる。

キャスト

  • 巧:大美賀均
  • 西川玲花:西川玲
  • 高橋:小坂竜士
  • 黛:渋谷采郁
  • 梅村:菊池葉月

スタッフ

評価・受容

野辺山高原からのぞむ八ヶ岳(2010年)。映画は主に八ヶ岳周辺など長野県の諏訪地域で撮影された[10]

この作品はヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞したのち、多くの映画祭に招聘された。

とくに2021年に『ドライブ・マイ・カー』がアメリカで高評価をよぶきっかけとなったニューヨーク映画祭は、『悪は存在しない』を「予測のつかない映画的体験をもたらす」と評して、ふたたび主要紹介作品のひとつに選び出した[11]

イギリスの『ガーディアン』紙やアメリカの 『IndieWire』誌は、都会と自然の対立という昔ながらの問題に安易な解決をゆるさない脚本と、濱口独特の不気味な物語技法があいまってつよい印象を残す、などと論評した[12][13][14]。『ハリウッド・レポーター』誌や『バラエティ』誌も本作に描かれた自然と人間の関係に注目し、それをきわめて繊細・優雅に表現したところに濱口の独自性とすぐれた手腕が示されていると評した[15][16]

また英国映画協会は、『ドライブ・マイ・カー』につづく本作で濱口は現代のもっとも偉大な演出者のひとりであることをふたたび証明したと指摘[17]。『デッドライン』誌なども『ドライブ・マイ・カー』との類似性を論じ、なにげない会話から不穏で予測不能な空気をつくりだしてゆく催眠術のような力をはらんだ作品、などと評した[18]。『フィナンシャル・タイムズ』紙は、作品がはらむこうした不穏さ・不吉さが、濱口流の省略の多い作劇法から来るものだと論じている[19]

2023年10月に行われた第67回BFI ロンドン映画祭のコンペティション部門において、審査員の全員一致で作品賞 (Best Film) を受賞した。審査団は声明で「(この作品は)繊細かつ映画的で、力のこもった演技によって支えられている。 (…) 家族とそのコミュニティに関する美しい肖像であると同時に、自然の再開発をめぐる倫理的課題の複雑さについての考察にもなっている」と述べている[20][21]黒沢清が審査員長をつとめた第17回アジア・フィルム・アワードでは作品賞と音楽賞を授与された[22][23]

2024年4月に本作がイギリスで公開されると、同国の映画批評誌『Sight & Sound』は濱口を表紙とする特集を組み、彼がもっている「自信にみちていながら繊細な感情表現や、物語上のひねりを重視するきわめて独自の映画言語」は東京藝大の修了製作から本作まで一貫している、などと論じた[24]

受賞

関連項目

脚注

  1. ^ a b Biennale Cinema 2023 | Aku wa sonzai shinai (Evil Does Not Exist)” (英語). La Biennale di Venezia (2023年7月6日). 2023年10月12日閲覧。
  2. ^ “濱口竜介監督「背中を押された」と喜びの声 最新作『悪は存在しない』でヴェネチア銀獅子賞”. シネマカフェ (イード). (2023年9月12日). https://www.cinemacafe.net/article/2023/09/12/87430.html 2023年11月1日閲覧。 
  3. ^ Gift, new film by 'Drive My Car' director Ryûsuke Hamaguchi, to world premiere at FFG with Eiko Ishibashi performing a…” (英語). World Soundtrack Awards. 2023年10月12日閲覧。
  4. ^ a b c (日本語) Ryûsuke Hamaguchi on Evil Does Not Exist | NYFF61, https://www.youtube.com/watch?v=VCXMbhC794I 2023年10月12日閲覧。 
  5. ^ 『悪は存在しない』ジャパンプレミア 上映後には濱口竜介監督やキャストらのトークショーも”. 広島国際映画祭 (2023年11月26日). 2023年12月23日閲覧。
  6. ^ “濱口竜介監督『悪は存在しない』2024年4月26日公開決定!広島国際映画祭にてジャパンプレミア開催!”. Fan's Voice. (2023年11月26日). https://fansvoice.jp/2023/11/26/evil-does-not-exist-date/ 2023年12月22日閲覧。 
  7. ^ 濱口竜介; 石橋英子(インタビュアー:佐藤久理子)「濱口竜介×石橋英子が語る、映像と音楽の幸福な関係。『GIFT』『悪は存在しない』プロジェクト」『CINRA』、CINRA, Inc.、2023年11月10日https://www.cinra.net/article/202311-gift_iwmkr2023年12月22日閲覧 
  8. ^ 【大使】第50回ゲント国際映画祭における『GIFT』ワールドプレミア上映およびトークショー”. 在ベルギー日本国大使館 (2023年10月30日). 2023年12月22日閲覧。
  9. ^ GIFT / 特別招待作品”. 第24回 東京フィルメックス (2023年). 2023年12月22日閲覧。
  10. ^ 諏訪地域で撮影された映画『悪は存在しない』の第80回ベネチア国際映画祭「銀獅子賞」受賞を祝し、阿部知事からお祝いのメッセージをお贈りしました/長野県”. www.pref.nagano.lg.jp. 2023年10月15日閲覧。
  11. ^ Evil Does Not Exist” (英語). Film at Lincoln Center. 2023年10月12日閲覧。
  12. ^ Bradshaw, Peter (2023年9月4日). “Evil Does Not Exist review – Ryu Hamaguchi’s enigmatic eco-parable eschews easy explanation” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/film/2023/sep/04/evil-does-not-exist-review-ryu-hamaguchis-enigmatic-eco-parable-eschews-easy-explanation 2023年10月12日閲覧。 
  13. ^ Lattanzio, Ryan (2023年9月5日). “‘Evil Does Not Exist’ Review: Ryûsuke Hamaguchi Retreats Post-‘Drive My Car’ Oscars Marathon Into an Eerie Eco-Poem” (英語). IndieWire. 2023年10月12日閲覧。
  14. ^ Liu, Rebecca (2024年4月1日). “Oscar-winning director Ryûsuke Hamaguchi: ‘The world is full of mystery and absurdity’” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/film/2024/apr/01/ryusuke-hamaguchi-interview-drive-my-car-evil-does-not-exist 2024年4月4日閲覧。 
  15. ^ Kiang, Jessica (2023年9月4日). “‘Evil Does Not Exist’ Review: Ryusuke Hamaguchi’s Tale of Rural Gentrification Is a Tone Poem with an Atonal End” (英語). Variety. 2023年10月13日閲覧。
  16. ^ Rooney, David (2023年9月4日). “‘Evil Does Not Exist’ Review: Ryusuke Hamaguchi Follows ‘Drive My Car’ With an Unsettling Reflection on Man and Nature” (英語). The Hollywood Reporter. 2023年10月13日閲覧。
  17. ^ Evil Does Not Exist review: a beguiling eco-drama” (英語). BFI. 2023年10月13日閲覧。
  18. ^ Bunbury, Stephanie (2023年9月4日). “‘Evil Does Not Exist’ Review: Ryusuke Hamaguchi Delivers A Constantly Surprising, Intellectually Agile Film – Venice Film Festival” (英語). Deadline. 2024年3月22日閲覧。
  19. ^ Evil Does Not Exist review — city meets country in a delicate tingler of a film”. www.ft.com. 2024年4月4日閲覧。
  20. ^ Award winners announced at 67th BFI London Film Festival” (英語). BFI. 2023年12月29日閲覧。
  21. ^ a b 市川遥 (2023年10月16日). “濱口竜介『悪は存在しない』ロンドン映画祭で作品賞受賞!”. シネマトゥデイ (株式会社シネマトゥデイ). https://www.cinematoday.jp/news/N0139493 2023年10月30日閲覧。 
  22. ^ Asian Film Awards Academy – 亞洲電影大獎學院”. 2024年3月22日閲覧。
  23. ^ a b Brzeski, Patrick (2024年3月10日). “Asia Film Awards: Ryusuke Hamaguchi’s ‘Evil Does Not Exist’ Wins Best Film” (英語). The Hollywood Reporter. 2024年3月10日閲覧。
  24. ^ Sight and Sound: the May 2024 issue” (英語). BFI. 2024年4月7日閲覧。
  25. ^ Award winners announced at 67th BFI London Film Festival” (英語). BFI. 2023年10月15日閲覧。
  26. ^ “第16回アジア太平洋映画賞:『PERFECT DAYS』が最優秀作品賞、『悪は存在しない』が審査員特別賞受賞!”. Cinema Factory. (2023年11月4日). https://www.cinema-factory.jp/2023/11/04/36680/ 2023年12月23日閲覧。 
  27. ^ Asia Pacific Screen Awards - 2023 Awards”. IMDb (2023年). 2023年12月23日閲覧。
  28. ^ Asian Film Festival Barcelona - 2023 Awards”. IMDb (2023年). 2023年12月25日閲覧。
  29. ^ Kerala International Film Festival - 2023 Awards”. IMDb (2023年). 2023年12月23日閲覧。
  30. ^ Welcome to Asian Film Festival Barcelona 2023” (英語). Asian Film Festival Barcelona. 2024年3月22日閲覧。

外部リンク