毛利宮彦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

毛利 宮彦(もうり みやひこ、1887年明治20年)8月25日 - 1957年昭和32年)1月27日)は、日本図書館学者早稲田大学図書館員・講師。日本の図書館学の創成に大きく関わる草分けの1人であり[1][2]、早稲田大学新図書館の設計図案を作成するなど図書館施設・設備にも高い関心を示した[3][4]

来歴[編集]

1887年8月25日士族である毛利義保・鋺子の子として愛知県に生まれる[1][5][注釈 1]

1912年早稲田大学大学部文学科英文学科第一部を卒業し[7]早稲田大学図書館の図書館員となる[1][3]1915年5月から1916年7月まで[8]、図書館・大学研究室制度の研究のためにニューヨーク公共図書館附属ライブラリースクールに留学する[1][3]。帰国した後、1916年10月9日から山形県山形市で開催された第11回全国図書館大会において「個人と公衆図書館」という演題で講演を行う[3][9]1917年、早稲田大学図書館を辞職し[10]1918年大阪毎日新聞社に入社する[1][3]。同社では、資料室書架の近代化、調査資料の整理、『毎日年鑑』の編纂等を担う[1]1926年、同社を退任する[1]

1928年、「図書館事業研究会」を主宰し、『図書館学講座』を発刊する[1][3]1942年陸軍士官学校文庫の拡充のために教授嘱託として参画する[1][3]1950年早稲田大学教育学部の講師となり、「図書館学[11]」を担当する[1][3]

1957年1月27日、死去、享年69歳[1]

著作[編集]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『図書の整理と運用の研究』図書館事業研究会〈図書館事業研究会叢書 第2〉、1936年6月。 NCID BN13574074全国書誌番号:46066732 
  • 『図書館学綜説 図書の整理と運用の研究』同学社、1949年12月。 NCID BN06811679全国書誌番号:61005335 
    • 『図書館学綜説 図書の整理と運用の研究』(再版)同学社、1950年3月。 NCID BA31485702 
  • 『図書館学序説』長谷川書房、1955年7月。 NCID BN02185354全国書誌番号:55007560 

編集[編集]

共著[編集]

論文[編集]

  • 「最近の図書分類法の問題 1」『図書館雑誌』第43巻第10号、日本図書館協会、1949年10月、137-138頁、NAID 40002724739 
  • 「最近の図書分類法の問題 2」『図書館雑誌』第43巻第11号、日本図書館協会、1949年11月、157-159頁、NAID 40002724671 
  • 「図書分類法の指標」『図書館雑誌』第44巻第5号、日本図書館協会、1950年5月、3-5頁、NAID 40002724729 

図書館学講座(図書館事業研究会)[編集]

  • 第1巻(1928年6月30日発行)
    • 『発刊に際して』(毛利宮彦)
    • 『図書館学の学としての可能性』(毛利宮彦)
    • 『図書の種別と規模・意義と目的』(毛利宮彦)
    • 『地方公共図書館の経営』(毛利宮彦)
    • 『近代的図書館の諸相』(ウヰリアム・エス・ラーネツド)
  • 第2巻(1928年8月31日発行)
    • 『図書館の建設』(毛利宮彦)
    • 『児童図書館』(毛利宮彦)
    • 『図書館選択と思想問題』(今沢慈海
    • 『小図書館の維持と経営』(伊東平蔵
    • 『古本と図書費の利用法』(神代種亮
  • 第3巻(1928年10月31日発行)
    • 『図書館の経費』(毛利宮彦)
    • 『児童図書館(続)』(毛利宮彦)
    • 『郷土誌料の蒐集と整理』(波多野賢一)
    • 『古本と図書費の利用法』(神代種亮)
  • 第4巻(1928年12月31日発行)
    • 『礼記子本疏義に就いて』(市島春城
    • 『図書館の職員と事務』(毛利宮彦)
    • 『図書館教育の諸機関』(毛利宮彦)
    • 『本邦書誌学概要』(植松安)
    • 『書誌雑簏』(橘井清五郎)
    • 『古本と図書費の利用法』(神代種亮)
  • 第5巻(1929年2月28日発行)
    • 『都名所図会の出版者』(和田万吉
    • 『図書館の建築』(毛利宮彦)
    • 『本邦書誌学概要』(植松安)
    • 『著者記号法の研究』(波多野賢一)
    • 『書誌雑簏』(橘井清五郎)
  • 第6巻(1929年4月30日発行)
    • 『故シヴアースについて』(今沢慈海)
    • 『図書館の器具』(毛利宮彦)
    • 『分館と配給機関』(毛利宮彦)
    • 『本邦書誌学概要』(植松安)
    • 『著者記号法の研究』(波多野賢一)
    • 『書誌雑簏』(橘井清五郎)
  • 第7巻(1929年8月30日発行)
    • 『書誌雑簏』(橘井清五郎)
    • 『図書の選択と購入』(毛利宮彦)
    • 『図書解題の解題』(田中敬)
    • 『図書館協会と法人組織について』(波多野賢一)
    • 『定款問題についての一考察』(毛利宮彦)
  • 第8巻(1929年11月30日発行)
    • 『書誌雑簏』(橘井清五郎)
    • 『図書の註文と受入』(毛利宮彦)
    • 『巡回文庫法』(毛利宮彦)
    • 『図書解題の解題』(田中敬)
    • 『定款問題と私の立場』(竹内善作)
  • 第9巻(1930年3月20日発行)
    • 『目録応用の形勢』(市島春城)
    • 『図書の分類と記号』(毛利宮彦)
    • 『西洋書誌学要略』(橘井清五郎)
    • 『読書と図書の力』(田中敬)
    • 『続定款問題と私の立場』(竹内善作)
  • 第10巻(1930年5月15日発行)
    • 『図書の配列と整頓』(毛利宮彦)
    • 『西洋書誌学要略』(橘井清五郎)
    • 『読書と図書の力』(田中敬)
  • 第11巻(1930年11月25日発行)
    • 『書斎について』(市島春城)
    • 『目録の編成と記入』(毛利宮彦)
    • 『辞書体目録編纂規則』(毛利宮彦)
    • 『西洋書誌学要略』(橘井清五郎)
    • 『博物館的施設』(竹内善作)
  • 第12巻(1931年3月15日発行)
    • 『終刊の辞』(毛利宮彦)
    • 『書斎について(続)』(市島春城)
    • 『参考事務の組織と実際』(毛利宮彦)
    • 『館内閲覧と館外貸出』(毛利宮彦)
    • 『西洋書誌学要略(続)』(橘井清五郎)
    • 『博物館的施設(続)』(竹内善作)

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 母の名前は、『図書館学者毛利宮彦の洋行』では「鈂子」となっているが[5]、『翻刻『春城日誌』(二四)』では「鋺子」となっている[6]。いずれも『春城日誌』(自筆写本)の同じ箇所が出典であり、より新しく発表された「鋺子」の方で本文は記述している。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k 中村 1957, p. 26.
  2. ^ 二川 2006, p. 171.
  3. ^ a b c d e f g h 日本図書館文化史研究会編 編「毛利 宮彦 もうり・みやひこ」『図書館人物事典』日外アソシエーツ、2017年9月25日、266頁。ISBN 9784816926785 
  4. ^ 中西裕 (1991年2月1日). “現図書館の完成”. ふみくら:早稲田大学図書館報. 早稲田大学. 2020年9月18日閲覧。
  5. ^ a b 中西 2006, p. 72.
  6. ^ 春城日誌研究会 2007, p. 241.
  7. ^ 「各科得業生及特待生氏名 文学科 英文学科第一部」『早稲田学報』第110号、早稲田大学校友会、1912年8月10日、13頁。 
  8. ^ 百年史第2巻 1981, p. 709.
  9. ^ 中西 2006, p. 78.
  10. ^ 中西 2006, pp. 78–79.
  11. ^ 百年史第4巻 1992, p. 977.

参考文献[編集]

  • 中村初雄「毛利宮彦先生のことども」『図書館雑誌』第51巻第3号、日本図書館協会、1957年3月、26頁。 
  • 早稲田大学大学史編集所編 編『早稲田大学百年史』 第2巻、早稲田大学、1981年9月14日。 
  • 早稲田大学大学史編集所編 編『早稲田大学百年史』 第4巻、早稲田大学、1992年12月20日。 
  • 二川幸広「図書館学の創成期における毛利宮彦氏の事績について」『図書館雑誌』第100巻第3号、日本図書館協会、2006年3月20日、170-171頁。 
  • 中西裕「図書館学者毛利宮彦の洋行」『学苑』第792号、昭和女子大学近代文化研究所、2006年10月1日、71-86頁、NAID 110006424401 
  • 春城日誌研究会「翻刻『春城日誌』(二四) ――『双魚堂日誌』 大正四年一月~一二月――」『早稲田大学図書館紀要』第54号、早稲田大学図書館、2007年3月15日、185-314頁、NAID 120005691642 

関連項目[編集]