桐原家の人々

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桐原家の人々
ジャンル コメディ
小説
著者 茅田砂胡
イラスト 成瀬かおり
(C★NOVELSファンタジア版)
出版社 角川書店中央公論新社
レーベル 角川ルビー文庫
C★NOVELSファンタジア
巻数 全3巻(角川ルビー文庫)
全4巻(C★NOVELSファンタジア)
テンプレート - ノート
プロジェクト ライトノベル

桐原家の人々』(きりはらけのひとびと)は、茅田砂胡による日本ライトノベル

角川ルビー文庫角川書店)で全3巻のシリーズとして刊行。約6年後に、新書のレーベルであるC★NOVELSファンタジア中央公論新社)から、大幅に改稿し、外伝的な書き下ろし1冊を加えた全4巻のシリーズとして刊行。ルビー文庫版イラストは羽崎安美、C★NOVELS版イラストは成瀬かおり

作者曰く「大嘘恋愛シリーズ」(C★NOVELS版あとがきより)。

概要[編集]

呉里六郷(くれさとりくごう)市という関東近郊の田舎町に住む桐原一家は、母方の祖母を含めて総勢7人の大家族。その中の1人である眞己(まさみ)の容姿に関する問題がきっかけで、その大家族のほとんどが身内に隠してきた様々な事実が明かされていく。

主な登場人物[編集]

桐原家[編集]

「見た目と中身が一致しない一家」(眞己の評)。特に豊と麻亜子は、「タフとワイルドを過激で固めたような人たち」(零の評)。

桐原眞己(きりはら まさみ)
桐原家の三つ子の1人で男の子。16歳。県立呉里六郷高校1年2組に在籍。喧嘩沙汰が嫌いな、穏やかな性格(ただし麻亜子に仕込まれているため、本気を出すとそこそこ強い)。他の兄弟をはじめ、家族の中で唯一容姿の系統が違う[1]ため悩んでいる。が、180cm近い長身とがっしりした体つき、男らしいハンサム顔のため、他の2人と兄弟であるとは分からなくとも、そこそこ人気がある。努力型秀才。
桐原猛(きりはら たける)
桐原家の三つ子の1人で女の子。1年5組に在籍。陸上部に所属。もう1人の兄弟・都とよく似た容姿をしている。女の子としては長身(大体165cmほど。都も同じくらい)で、男名前であるため、新学期になると教師に困惑される。言動が男っぽいせいか同性にもてる。私服は動きやすさ優先で、スカートがほとんど無い。口達者。
小学生の頃に、眞己とは血のつながりがない可能性に気づき、それを都と2人で眞己に隠し通してきた。この時、都と相談した結果「将来自分が眞己と結婚すれば本当の兄弟になれる」と結論付けていた。どこまで本気だったかは不明だが、真相の発覚後に麻亜子から「そんな事を考えてたんじゃないか?」と話を振られた際には三人そろって気まずい顔をしていた。
桐原都(きりはら みやこ)
桐原家の三つ子の1人で男の子。1年1組に在籍。男の子としては小柄で、線が細く見えることと女名前であるため、猛同様、新学期になるとよく女の子に間違えられる。こちらも同性にもてており、下駄箱に同性の生徒からの手紙が入っていることも。ある事情から、細身の割にやたら喧嘩に強い。
猛と都は容姿が非常に似ていたため、当人も家族以外の周囲も2人が双子であると思っていたが、実は猛と眞己の叔父で、双子だったのは眞己と猛(正確な続き柄を知らなかったのは三つ子たちのみ)。他の2人からは「みや」と呼ばれることが多い。
桐原零(きりはら れい)
桐原家長男[2]。28歳。東京で1人暮らし。建築設計関係の仕事に就いているが、仕事の内容は「海外の僻地に建物を建てる」とかで、よく海外出張するため、滅多に実家にも帰ってこない[3]。実はずっと麻亜子が好きだったが、眞己以外には気づかれていなかった(その後、紆余曲折を経て結ばれる)。麻亜子の妊娠発覚後は、仕事を少しずつ在宅へ切り替えた。また、桐原家では数少ない喫煙者であるため、灰皿を持って帰宅し、部屋に臭いがこもらないよう気を使いつつ吸っている。
大学時代に、輪の知人である女性が経営するスナックでアルバイトをしていたが、偶然その店に森崎が現れ、後日、脅迫スレスレの手段で迫られたため、双子の名前を教えたところ、ひょんなことから麻亜子にバレてしまい、得意のプロレス技で痛めつけられたことがある。
免許は持っているが、ある事情から夜間の車のライトがトラウマになっている。そのためずっとペーパードライバーだったが、子供の誕生に合わせ、麻亜子に付き添う形で教習所に通い猛練習したらしい。
桐原麻亜子(きりはら まあこ)
桐原家長女。30歳をいくつか過ぎている[4]が、そうは見えない美女(そのため「あたしは(今でも)27歳よ!」と主張する)。大手アパレル会社で服飾デザイン関係の仕事をしており、東京で1人暮らし。「彼氏を作るより仕事をする方が楽しい」と豪語する。
プロレスをはじめ各種の武術が好きで、護身術も兼ねて覚え始めてはまり込み、兄弟喧嘩では、よく弟達(猛を除く)に技をかけるが、喧嘩や護身目的に使えるよう仕込んでもいる(そのため、都は細い体ながらもかなり喧嘩に強くなった)。その際、2階にある一番大きな部屋を使うことが多いため、喧嘩中は地震と間違えかねないほどに家が震動する。得意技はジャーマン・スープレックス
零をずっと弟として扱ってきたが、ある一件がきっかけで結婚。その後、零との間に双子を妊娠したことが判明した。生まれたのは男女の双子で男の子に「雫(しずく)」、女の子に「彬(あきら)」と名づけた(三つ子が高校3年の8月に生後10か月)。もとから仕事を辞めるつもりはない上に部署が部署だったので、産休の後半年だけ育休を取ったらしい。「交通網が発達している都心で暮らす以上車は不要」と思っていたが、双子の妊娠が発覚してからは双子を連れた移動が必要になるからと、車を置けるマンションへ引っ越し、教習所へ通った。
桐原豊(きりはら ゆたか)
旧姓・松宮。桐原家の母。50歳を過ぎた主婦で、見た目はおっとりとした女性だが、中身は容赦ないオカン気質である。名前は、「豊」と書いて「とよ」と読ませるはずが、父・銀次郎が慌てて書類に書き込んだため、読み仮名を間違えた、という逸話があり、結果として結婚式のとき、司会者に「新郎の豊さん」と呼ばれてしまった。若いころは更にかっ飛んでいたらしく、高校生だった麻亜子の保護者面談にキャミソールにジーンズというスタイルで現れたという。
広美が海外出張から帰ってくる日は、普段東京にいる麻亜子・零も呼び戻して家族で夕飯を囲む慣例を作った。また、広美がいない間は家長の代役となるため、裁量権はかなり大きい。タバコが嫌いなため、家の中には灰皿がひとつもない。
桐原広美(きりはら ひろみ)
家長。両親が早くに他界したため、弟である俊美と助け合って生きてきた。海外出張が多く、かつて海外出張中に軍事クーデターに巻き込まれたことがある。この時にはなんとか生きて帰ったが、弟に義父と立て続けに亡くした経験もあって数年間の間「仕事より家族が優先」を公言し、首になる一歩手前だったとは豊の弁。子供たちが成長してからは巻き返すように仕事をこなしていたが、零と麻亜子の結婚という報告を聞いた際には仕事のほとんどを部下に放り投げる勢いでスケジュールを組んで帰国した。
松宮締(まつみや てい)
豊の母。かつて従軍看護婦だった。娘同様、容姿に似合わずなかなか豪快な性格で、薙刀の使い手でもある。
松宮銀次郎(まつみや ぎんじろう)
豊の父。当時18歳の豊が妊娠をきっかけに広美と結婚しようとしたのを反対する(豊と締曰く「娘を他の男に取られたためのヤキモチ」)が、結果として豊の駆け落ちを招いた。さらには豊よりも若くして妊娠した孫の麻亜子に驚くが、最終的に好きにさせた。
作中ではすでに故人だが、松宮家が東京に住んでいた頃の自宅を建て、呉里六郷市の自宅の設計にも関わる。引越し前の、麻亜子の出産から2日後、交通事故で亡くなった。

森崎家[編集]

眞己と猛の実父である男とその養子。2巻目と3巻目に登場。

森崎崇史(もりさき たかし)
麻亜子の高校の同級生で、当時、複雑な事情から麻亜子と婚約関係にあったが、結果的に破局。子供の認知もさせてもらえなかった。
20代から30代向けの服飾ブランド「タカシ・モリサキ」の社長でデザイナー。業界では有名。仕事の都合で麻亜子と会うことが多いが、家族問題に関しては麻亜子の怒りが未だ治まっていないため、教えてもらえないでいた。
服のモデルは主に麻亜子だが、猛が娘だと分かってからは、猛のようなティーン向けの服も手がけ始めた。また、麻亜子が自分の花嫁衣裳と零の衣装を強引に(デザインと生地や飾りパーツ選びは同業者の麻亜子が担当したが)頼み込んだ際、チーム総出で1週間以内に仕上げるという荒業をやってのけた。
「その外見も性格も崇史のミニチュア版」と周囲の人間に評されるほど、眞己は実父に似ている。
仕事では有能(デザインセンスと才能は麻亜子の保証つき)だが、家事能力は今も過去も低く、のぞみがすべての家事をこなすはめになっている。
森崎のぞみ
旧姓・美作。女名前だがれっきとした男子で、染め直していないため妙なグラデーションになっている長い髪を持つ。父親は、かつて教育実習生として麻亜子と崇史の高校に来ていた男。
崇史が寝言で麻亜子の名を呼んだため、麻亜子に復縁してもらおうとやってくるが、過去の事実を知って諦める。
軽薄そうな容姿とは裏腹に、多少軽率ではあるが作中屈指の常識人。養父がだらしないので、家事は全て担当し、さらに、養父の仕事場に顔を出すことも多いため、社内の人間(特に崇史の側近とも言える3人)とは顔なじみ。

三条家[編集]

東京・麹町に住む、零の母方の実家。旧華族の資産家(ただし内情はすでに火の車)。3巻目に登場。

三条成臣(さんじょう なるおみ)
零の祖父に当たる、三条家当主。かなりの暴君で、家族ですらその顔色を窺いながら暮らしている。身分や体面といったものを重要視するため、娘である園子の恋人が気に入らず、結果として駆け落ちされる。その後、零を残して夫婦が事故死した際、一応の礼儀として連絡を入れた桐原家に対し「娘は勘当された身だから、その娘の産んだ子はこちらで引き取るつもりはない」というような内容の発言をし、桐原家の怒りを買った。
体を壊したと偽って、家人を使って零に縁談を持ちかけ、強引に三条家の人間にしようとした。
三条行成(さんじょう ゆきなり)
三条家長男。病気を疑うほどに貧相で存在感の薄い男。
三条頼寛(さんじょう よりひろ)
三条家次男。次男の頼人(よりひと)に縁談を持ち込まれた。
武者小路充子(むしゃのこうじ みつこ)
三条家次女。頼人に持ち込まれた縁談の相手は、彼女の夫の姪。頼人の代理である零の付き添い役を務める。

その他[編集]

美作祐司(みまさか ゆうじ)
4巻目(名前だけは2巻目から)に登場。麻亜子と森崎の高校に数学の教育実習生として来ていた男(ただし、麻亜子は教え子ではない)。当時12歳の零が、長身の森崎と比較して「美少年」と評するほどの美貌を持つ。当時20歳で、学生結婚していた。
実はホモで、森崎を気に入り、相談を受ける振りをして、彼に(妊娠したため退学して花嫁修業中の)麻亜子がいるにも拘わらず、白昼堂々と手を出し、現場を偶然麻亜子に見られてしまった人。
森崎が麻亜子に絶縁されてから、復縁するよう懇願するが聞き入れられず。さらに、幼い子供(のぞみ)を置いて妻に逃げられた後、男手一つで子供を10歳まで育てるが、癌を発症して病死。
桐原俊美(きりはら としみ)・園子(そのこ)
零の両親。零が12歳のとき、家族で車を使って遠出していて、センターラインを越えてきた長距離トラックとの衝突事故で他界。当時園子は妊娠4か月ほどだった。
母は田舎をほしがる零に対し「自分の田舎はない」と繰り返していた。住所を書かない手紙を極たまに桐原家へ送り、俊美が時々電話で近況を伝えていた。
また事故当時、零は後部座席で寝転がっていたが、衝突したときに体を車体に挟まれ、救助されるまでの間、運転席と助手席に座っていた両親の成れの果てを見続けたため、無意識に自らの心を守るべく事故直後のことを忘れたらしい。
城段輪(じょうだん りん)
3巻目の終わりと4巻目に登場。零の中学時代の同級生で、大学では零とは違う学部に在籍している(零はその事実をコンパに参加して再会するまで知らなかった)。零の親友ともいえる友人。特殊な名前のため、よく教師から読み間違われていた。
アルバイトでモデルをしたこともあるくらいの容姿の持ち主だが、モデル業との相性は良くなかったらしい。
2つ下に弟の環(たまき)がいる。円(まどか)という名の妹もいたが、幼い頃に目の前で踏切事故に遭い、亡くしている。それに加え、大学に入ってから、自分が乗っていた地下鉄が人身事故を起こしたため、電車がトラウマになっている。
現在、学生時代に知り合った妻と娘の3人で、アメリカのボストンで生活しているが、零の結婚の報告を聞いてすっ飛んできた[5]

16年前の桐原家のトラブルについて[編集]

詳細はC★NOVELSの4巻を参照。

3月下旬頃。
桐原家はまだ東京にあり、呉里六郷市の自宅はほぼ完成。零はこの頃に引き取られる。また、この時呉里六郷市への引越し準備をしていたが、豊が第2子を妊娠中で、麻亜子も妊娠していた。予定日に1カ月ほどの差があるものの、共に臨月。
零が引き取られて数日後のある日。
麻亜子は将来自分の夫となる森崎に引き合わせようと、零を連れて1人暮らしの森崎のワンルームアパートに行くが、ある現場を目にして、怒りをあらわに電話台を投げつけ、絶縁する。
麻亜子が双子を出産してから2日後[6]
祖父・松宮銀次郎が散歩に出て交通事故に遭い、他界。麻亜子、出産して間もない体で無理やりに退院。父・広美は中南米のとある国に出張中で、連絡がつかないまま葬儀を行う。
銀次郎の葬儀翌日(あるいは翌々日。ここは作中でも登場人物の記憶が曖昧)。
夕飯を食べながら切り出された「麻亜子が産んだ子供を自分の子供として届ける」という豊の提案に麻亜子が激怒。さらに、見ていたニュースに一家が驚く。広美の出張先で軍事クーデターが発生し、外国人が中心に狙われ、日本大使館が攻撃を受けたため、情報が届かない。そのため、双子の件を含め、数日バタバタする。このバタバタした数日間に、零は呉里六郷市の中学に入学。往復3時間かけての登校が始まる。
銀次郎の初七日。
法事の最中に電話が鳴る。相手は広美。クーデターは失敗に終わり、一応帰国のメドが立ったと連絡してきた。その連絡を受けた一家は法事の最中であるにも拘わらず、笑み崩れる。法事直後、安心したためか、豊が産気づき、法事に来ていた僧に車を運転してもらい、病院へ運ばれ、出産。
1週間後。
豊退院。双子の出生届をまだ出していないことに気付き、麻亜子の双子も自分の子供として届けることを再度提案。
その3日後。
広美帰宅。義父の他界に唖然とするが、麻亜子の子供を豊の子供として届けることを了承。さらに、引っ越した後、甥の零を形式上「長男」として紹介することを提案。
  • 一連の事件の中で、引き取られた直後の零は赤子達の面倒を見る役にされ、ミルクの作り方からオムツの替え方まで教わる。が、バタバタしていたために、引越しの直前まで、後に三つ子として届けられる子供の出生届を出していないことと名前がまだ決まっていなかったことが判明する。
  • 実は眞己と猛は4月1日生まれで、当時の基準では都より一学年上となるはずだったが、子供の内に一年の差は大きいということもあって、都に寄せた誕生日に修正した。この話を聞いた都は2人を兄姉と呼ばずに済んだことに、母に対して最大級の感謝の念を抱いた。
  • さらに、3人の1カ月検診の通知を見るまで、第2子(麻亜子が産んだ女の子)と第3子(豊が産んだ男の子)の名前が入れ替わっていることに気づかなかった。当然だが名前が入れ替わっていた猛と都は互いに「そっちが良かった」と憤慨してた。

シリーズ一覧[編集]

ルビー文庫版[編集]

  1. 恋愛遺伝学講座 ISBN 4044343012
  2. 恋愛心理学入門 ISBN 4044343020
  3. 恋愛統計総論 ISBN 4044343039

C★NOVELS版[編集]

  1. 恋愛遺伝学講座 (1999年9月発売) ISBN 978-4125006130
  2. 恋愛心理学入門 (2000年1月発売) ISBN 978-4125006345
  3. 恋愛統計総論 (2000年9月発売) ISBN 978-4125006758
  4. 特殊恋愛理論 (2001年8月発売) ISBN 978-4125007182

脚注[編集]

  1. ^ 猛の友人である能代瑛子に「ブルーのシールポイントのシャム猫ジャーマンシェパード」に例えられるほど、他の2人とは似ていない。ただし、零曰く「2歳ごろまでは見分けがつかなかった」らしい。
  2. ^ と思いきや、家長・広美の弟夫婦の1人息子で、ある事故で両親が亡くなったことから引き取られてきた。そのため、麻亜子との正しい続き柄は従姉弟であり、豊と伯父を名前で呼ぶ。養子縁組はしていない(が、姓が同じなのでバレなかった)。
  3. ^ 3巻目では、出張先がろくに学校や病院などが無い地域であり、3年は帰って来られないという条件の下で打診されていた。その上、上司が仲介役となった結婚を迫られてもいた。
  4. ^ さらに、眞己と猛の実の母親でもある。産んだのは17歳のとき。
  5. ^ 輪の結婚式に零はリオデジャネイロから駆け付けたとのことで、輪も不義理をする気はなかった。
  6. ^ 麻亜子が「4月1日に産んだ」と言っているところから、おそらく4月3日ごろ。