宇宙原理

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宇宙原理 (うちゅうげんり、cosmological principle) とは、「大きなスケールで見れば、宇宙は一様かつ等方である」という主張である。分かりやすく言うと「宇宙には特別な場所は存在しない」と言い換えることができる。

宇宙を観測することで、ビッグバン以降どのぐらいの時間が経過しているのかを知ることは出来るかもしれないが、観測者が宇宙の中でどの地点にいるのかを知ることはできないという意味である。ここで言う「場所」「地点」とは3次元空間での位置を指す。よって宇宙原理では時間的な一様性までは要請しない。この仮定は簡単ながら非常に強力で、この前提に立てば、宇宙モデルを考える際にはロバートソン・ウォーカー計量に従うタイプの宇宙のみを考えれば十分であることが分かる。

もちろん、小さなスケール長で見れば宇宙は一様でも等方でもなく、大規模構造銀河団銀河といった様々な天体からなる構造が存在する。現在の観測では、ハッブル半径(約100億光年)程度のスケールで平均化してみると、我々の宇宙のある地点での物質密度は平均密度からおよそ1/100程度のゆらぎがあるとされている。

宇宙原理の限界[編集]

宇宙原理が成り立つ宇宙は、シンプルで美しい。宇宙原理には、宇宙は美しくあるに違いない、あるいは美しくあってほしいという人間の願望が含まれているともいえる。その一方で、因果関係がつながっていない2つの地点が、偶然同じ姿になるはずがないという考えも、多くの科学者が強く主張しているところである。ビッグバン以降、我々のいる地球と因果関係がつながっている宇宙の範囲は、半径約470億光年以内であると考えられている。もし、宇宙全体で宇宙原理が成り立っていると主張するのであれば、この範囲を超えて、なぜ宇宙全体が一様等方になったのかのメカニズムを説明する必要がある。これは、宇宙の地平線問題として問題提起されている。

宇宙の地平線問題を説明する理論としては、宇宙のインフレーションが有力である。これは、宇宙誕生直後に、因果関係がつながっていた小さな領域があって、それが指数関数的に10の数十乗倍の大きさに一気に膨張し、その後、ビッグバンに移行したという理論である。これによれば、半径約470億光年の範囲を超えて、相当広い範囲で因果関係がつながっていたことになるため、その範囲内で宇宙原理が成り立っているとしても不思議ではない。しかし、インフレーション理論とは、あくまでも最初に因果関係がつながっていた領域が大きく拡大したという理論であって、その外側には因果関係がつながっていない領域が依然として存在するはずである。

このように、宇宙全体が一様等方になっていることをうまく説明できるような理論は今のところ存在しない。したがって、宇宙全体で宇宙原理が成り立っているというのは、根拠のない仮説に過ぎないといえる。一つの例として、レオナルド・サスキンドランドスケープ宇宙論というものがある。ランドスケ-プ宇宙論とは、我々の宇宙を含むメガバースの中には10の500乗種類もの別の宇宙が含まれており、それらの別の宇宙の中では我々が知っている物理法則とは全く違う法則に支配されているというものである。これは、明らかに宇宙原理が成り立たない宇宙論の例である。

関連項目[編集]