ポロニウム化物

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ポロニウム化マグネシウム空間充填モデル。Mg2+ イオンは緑色、Po2- イオンは茶色で表されている。

ポロニウム化物(ポロニウムかぶつ、: polonide)は、放射性元素であるポロニウムとそれより電気陰性度が低い元素との化合物である[1]。ポロニウム化物は通常、元素同士の直接反応によって合成される[2][3]。これらは化学的に最も安定したポロニウム化合物であり[4]、大きく2つのグループに分けることができる。

  • Po2- アニオンを含むようなイオン性ポロニウム化物
  • より複雑な結合をもつ金属間ポロニウム化物

この2つの中間をとるポロニウム化物や、不定比化合物のものもある。ポロニウムを含む合金もポロニウム化物として分類される。ポロニウムは周期表においてテルルの真下にあるため、ポロニウム化物とテルル化物の間には多くの化学的、構造的な類似性がある。

イオン性ポロニウム化物[編集]

最も陽性な金属のポロニウム化物は古典的なイオン性結晶構造を示し、これは Po2- アニオンを含んでいると考えられている。

化学式 構造 格子定数 出典
Na2Po 逆蛍石型 747.3(4) pm [4][2]
CaPo 塩化ナトリウム型 651.0(4) pm [4][2]
BaPo 塩化ナトリウム型 711.9 pm [4][3]

より小さなカチオンを含む結晶の構造は、より大きな共有結合性またはより大きなポロニウム化物イオンの分極を示唆する。テルル化マグネシウム[3] TeMg はウルツ鉱型構造をもつ[5]が、ポロニウム化マグネシウムはもたないため、この2つが等構造でないことは特徴的な点である。しかしヒ化ニッケル型構造のポロニウム化マグネシウムも報告されている[6]

化学式 構造 格子定数 出典
MgPo ヒ化ニッケル型 a = 434.5 pm
c = 707.7 pm
[4][3]
BePo 閃亜鉛鉱型 582.7 pm [4][2]
CdPo 閃亜鉛鉱型 666.5 pm [4][3]
ZnPo 閃亜鉛鉱型 628(2) pm [2]

ポロニウム化物イオン Po2-有効半径は、シャノン (1976) のカチオン半径から計算することができる[7]。4配位 216 pm、6配位 223 pm、8配位 225 pmである。6配位のテルル化物イオン Te2- のイオン半径は221 pmであるため、ランタノイド収縮の効果が明確に表れているといえる[7]

ランタノイドは、同じくイオン性化合物であると考えられるセスキポロニウム化物 Ln2Po3 を形成する[8]

金属間ポロニウム化物[編集]

ランタノイドは、 LnPo で表される塩化ナトリウム型構造の非常に安定したポロニウム化物を形成する。ほとんどのランタノイドは+2の酸化数をとらないため、これらは電荷分離イオン種ではなく金属間化合物とみなすほうが適切である[4][9][10]。これらの化合物は少なくとも1600 °Cまで安定(ポロニウム化ツリウム融点は2200 °C)だが、対照的にセスキポロニウム化物 Ln2Po3 を含むイオン性ポロニウム化物は約600 °Cで分解する[4][8]。これらの化合物の熱的安定性および不揮発性(金属ポロニウムの沸点は962 °C)は、ポロニウムベースの熱源の使用において重要である。

水銀は1:1ポロニウム化物を形成する。白金は PtPo2 と定式化された化合物を形成するのに対し、ニッケルは NiPox (x = 1–2) の幅がある不定比化合物を形成する。ビスマスとポロニウムは完全に混和性である[3]のに対して、は広範囲な組成の固溶体を形成する[4][2][11]アルミニウム炭素モリブデンタンタルタングステンとの反応は認められない[3]

出典[編集]

  1. ^ International Union of Pure and Applied Chemistry (2005). Nomenclature of Inorganic Chemistry (IUPAC Recommendations 2005). Cambridge (UK): RSCIUPAC. ISBN 0-85404-438-8. pp. 69, 260. Electronic version.
  2. ^ a b c d e f Moyer, Harvey V. (1956), “Chemical Properties of Polonium”, in Moyer, Harvey V., Polonium, Oak Ridge, Tenn.: United States Atomic Energy Commission, pp. 33–96, doi:10.2172/4367751, TID-5221, http://www.osti.gov/bridge/servlets/purl/4367751-nEJIbm/ .
  3. ^ a b c d e f g Bagnall, K. W. (1962), “The Chemistry of Polonium”, Adv. Inorg. Chem. Radiochem. 4: 197–229, ISBN 9780120236046, http://books.google.com/?id=8qePsa3V8GQC&pg=PA197#v=onepage&q&f=false 
  4. ^ a b c d e f g h i j Greenwood, Norman N.; Earnshaw, A. (1984), Chemistry of the Elements, Oxford: Pergamon, p. 899, ISBN 0-08-022057-6 
  5. ^ Zachariasen, W. (1927), Z. Phys. Chem. 128: 417–20 
  6. ^ Rached, D.; Rabah, M.; Khenata, R.; Benkhettou, N.; Baltache, H.; Maachou, M.; Ameri, M. (2006), “High pressure study of structural and electronic properties of magnesium telluride”, J. Phys. Chem. Solids 67 (8): 1668–73, Bibcode 2006JPCS...67.1668R, doi:10.1016/j.jpcs.2006.02.017 
  7. ^ a b Shannon, R. D. (1976), “Revised Effective Ionic Radii and Systematic Studies of Interatomic Distances in Halides and Chalcogenides”, Acta Crystallogr., Sect. A: Found. Crystallogr. 32 (5): 751–67, Bibcode 1976AcCrA..32..751S, doi:10.1107/S0567739476001551 
  8. ^ a b Heat Sources for Thermoelectric Generators, Miamisburg, Ohio: Monsanto Research Corporation Mound Laboratory, (1963), https://www.osti.gov/opennet/servlets/purl/16137309-oYiakP/16137309.pdf 
  9. ^ Kershner, C. J.; DeSando, R. J.; Heidelberg, R. F.; Steinmeyer, R. H. (1966), “Rare earth polonides”, J. Inorg. Nucl. Chem. 28 (8): 1581–88, doi:10.1016/0022-1902(66)80054-4 
  10. ^ Kershner, C. J.; Desando, R. J. (1970), “Promethium polonide synthesis and characterization”, J. Inorg. Nucl. Chem. 32 (9): 2911–18, doi:10.1016/0022-1902(70)80355-4 
  11. ^ Witteman, W. G.; Giorgi, A. L.; Vier, D. T. (1960), “The Preparation and Identification of some Intermetallic Compounds of Polonium”, J. Phys. Chem. 64 (4): 434–40, doi:10.1021/j100833a014