ホログラフィック顕微鏡

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ホログラフィック顕微鏡: digital holographic microscopy)とは、光の干渉を応用した顕微鏡。

概要[編集]

従来の光学顕微鏡にはなかった利点を備える。従来の光学顕微鏡では観察が困難な可視光において透明な試料でも屈折率の差を可視化することにより撮像できる。1960年代から既に開発に着手されていたものの[1]、技術的な困難により普及は限定的だったが、2000年代以降、デジタル撮像素子の高精細化や並列演算処理能力の進化に伴うデジタル技術の導入により徐々に普及が進みつつある[2][3]。これらのデジタルホログラフィック顕微鏡 (DHM) は、デジタルホログラフィの像再生計算によって得られる複素振幅分布のうち、位相成分を抽出して再生像として用いることで、ナノメートルオーダの高さ変化や屈折率変化の検出が可能になった[3]

特徴[編集]

  • 被写界深度が従来の光学顕微鏡よりも深いので3次元像を記録でき、歪の無い自由焦点画像を再生可能。
  • 従来の光学顕微鏡で必要だった固定や染色が不要で水において透明な生体細胞や微生物を生きた状態で観察可能で光位相解析が可能[4]
  • 生体細胞の低エネルギー照射高速撮像が可能なので生体細胞への悪影響が少ない。

脚注[編集]

  1. ^ 本田捷夫、辻内順平「透過型ホログラフィック干渉顕微鏡」『光学』第2巻第2号、日本光学会、1973年4月25日、101-108頁、doi:10.11438/kogaku1972.2.101ISSN 1883-9673OCLC 984782119 
  2. ^ 白木 厚司、朋禄 下馬場、豊田 太郎、増田 信之、伊藤 智義「I-001 低コストなポータブル・デジタルホログラフィック顕微鏡の開発 (ホログラム, I 分野: グラフィクス・画像)」『情報科学技術フォーラム講演論文集』第10巻第3号、2011年、279-280頁。 
  3. ^ a b 松尾司、木下晴之、安木政史、大島まり、藤井輝夫「デジタルホログラフィック顕微鏡の開発とその応用」『ライトエッジ』第41号、ウシオ電機、2014年12月。 
  4. ^ 佐藤邦弘. “レンズレス無歪高分解能ホログラフィック3次元顕微鏡” (PDF). 兵庫県立大学. 2019年10月27日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]