ハリナシバチ

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ハリナシバチ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: 膜翅目 Hymenoptera
亜目 : 細腰亜目 Apocrita
上科 : ミツバチ上科 Apoidea
: ミツバチ科 Apidae
亜科 : ミツバチ亜科 Apinae
: ハリナシバチ族 Meliponini
英名
stingless bee

ハリナシバチ(Meliponini族、英名stingless bees)は、ミツバチ族、マルハナバチ族、シタバチ族などとともにミツバチ亜科に含まれるハナバチの一族で、ハリナシミツバチとよばれることもある。ミツバチ族に匹敵する高度な真社会性生活を営む種を含み、世界の熱帯亜熱帯地域から500種以上が知られ、特に中南米に多い[1]。東アジアの分布北限は台湾で、日本には分布していない[2]

体長は数ミリから2センチと種により様々。針が退化しており、毒針を持たない。その生態も、ミツバチと様々な点で異なる。外敵からの巣の防衛は噛みつくことと大顎腺から分泌する蟻酸などの化学物質による。巣は樹洞や岩の隙間などに造られ、ミツバチのような蜜蝋でできたハニカム構造の巣盤ではなく、マルハナバチのような小さな壷(ポット)の集合体である。出入口には樹脂でできたチューブが備わっていることが多い。幼虫の保育は、ミツバチが随時給餌なのに対し、一括給餌を行い、花粉や蜜を蓄えたポットに女王が産卵すると、ポットは成虫が羽化するまで閉じられる。新コロニーの創設はミツバチ同様、分蜂によるが、ミツバチと違って新たに生まれた女王バチが働きバチとともに巣を出ていく。一部の種は、自分たちで採餌せず、他種のハリナシバチの巣を襲って略奪する。また別の種では栄養源としてもはや花粉や花蜜ではなく専ら腐肉を利用することが知られる[1][3][4]

人との関わり[編集]

中南米では、数千年前からハリナシバチ類の養蜂が行われ、蜂蜜やプロポリスが、食用や薬用に利用されてきた。しかしハリナシバチの作る蜂蜜やプロポリスの効能についてはまだまだ未知であり、ハリナシバチの養蜂の発展とともに今後の研究が期待されている[5][4]

脚注[編集]

  1. ^ a b S.A. Marshall 2023 Hymenoptera: the natural history & diversity of wasps, bees & ants. Firefly books
  2. ^ SUNG I-Hsin, SUNG I-Hsin, YAMANE SOICHI, HO Kai-Kuang, CHEN Wen-Shyong 2006 Geographic Distribution and Nesting Sites of the Taiwanese Stingless Bee Trigona ventralis hoozana and an Unidentified Subspecies of Asian Honeybee Apis cerana in Taiwan (Hymenoptera: Apidae). 昆蟲.ニューシリーズ 9 (2), 33-45, 2006-06-25
  3. ^ 坂上昭一「 ミツバチのたどった道」思索社、1973年
  4. ^ a b 天野和宏 2003 メキシコにおけるハリナシミツバチ類の遺伝資源としての現状と利用に関する調査. 動物遺伝資源探索調査報告 13: 1−33.
  5. ^ Douglas Main、稲永浩子訳 人を刺さないハチが作る蜂蜜 薬効に注目が高まる NIKKEI STYLE 2022年5月19日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOLM250M80V20C22A4000000/