ミツバチ
| ミツバチ属 Apis | ||||||||||||||||||||||||||||||
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セイヨウミツバチ Apis mellifera
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| 分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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| 英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| Honey bee | ||||||||||||||||||||||||||||||
| 種 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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(本文参照) |
ミツバチ(蜜蜂)とはハチ目(膜翅目)・ミツバチ科(Apidae)・ミツバチ属(Apis アーピス)に属する昆虫の一群で、花の蜜を加工して巣に蓄え蜂蜜とすることで知られている。世界に9種が知られ、とくにセイヨウミツバチは全世界で養蜂に用いられており24の亜種が知られている。
目次 |
種類 [編集]
- セイヨウミツバチ(学名:Apis mellifera) - ヨーロッパ・アフリカに分布。世界中に移入され、近代的養蜂において主に用いられる種。
- イタリアミツバチ(Apis mellifera ligustica)はセイヨウミツバチの亜種。世界中に移入され、ヨーロッパ・アメリカに分布。本亜種は世界中の養蜂家によって飼育される。彼らは非常に気性が穏やかで、大量の蜂蜜を集める。彼らには殆ど欠点がない。コロニーは冬期を通してより大きな個体群を維持する傾向があるので、彼らは他の温帯の亜種よりも冬の蓄えが必要である。彼らは明るい色をしているが、若干の種は金色である。
- イベリアミツバチ(Apis mellifera iberiensis) (別名Apis mellifera iberica)Engel, 1999 - このミツバチはイベリア半島(スペイン、ポルトガル)原産である。
- ヨーロッパクロミツバチ(ドイツクロミツバチ)(Apis mellifera mellifera Linnaeus, 1758 - 北ヨーロッパの暗いミツバチEuropean dark bee(「ドイツのミツバチ」German black beeと呼ばれる)は近代に採り入れられ、植民地時代に北アメリカに導入された。このミツバチは小さくて暗い色をしている。
- トウヨウミツバチ(学名:Apis cerana) - アジア全域に分布。
- サバミツバチ(学名:Apis koschevnikovi) - インドネシアのボルネオ島に分布。
- キナバルヤマミツバチ(学名:Apis nuluensis) - インドネシアのカリマンタン(ボルネオ)島に分布。
- クロオビミツバチ(学名:Apis nigrocincta) - インドネシアのスラウェシ島に分布。
- オオミツバチ(学名:Apis dorsata) - 東南アジア・アジアに分布。
- ヒマラヤオオミツバチ(学名:Apis laboriosa) - ヒマラヤ地域に分布。
- コミツバチ(学名:Apis florea) - 東南アジアから西アジアに分布。
- クロコミツバチ(学名:Apis andreniformis) - 東南アジアに分布。
概要 [編集]
日本ではニホンミツバチ、セイヨウミツバチの2種が飼育(養蜂)され蜜の採取が行われている。また作物の受粉にも広く用いられるが、トマトやピーマンなどのナス科の果菜類は蜜を出さず特殊な振動採粉を行うためミツバチではなくマルハナバチ(ミツバチ科マルハナバチ属)が使われる。 セイヨウミツバチの養蜂においては規格化された巣箱を用いて大規模な採蜜が行われるが、ニホンミツバチの場合は野生集団を捕獲して飼育し採蜜の際は巣を破壊して搾り取ると言う伝統的な手法が主であり蜂蜜の流通量も少ない。
新たな女王蜂が誕生した巣では群の分割(分封)が起こり、女王バチは働きバチを引き連れ巣を出て新しい巣を探しに出る。この際、女王バチを護って働きバチが塊のようになる分封蜂球(ぶんぽうほうきゅう)を作る。
ミツバチの働きバチは受精卵から発生する2倍体(2n)であり全てメスである。通常メスの幼虫は主に花粉と蜂蜜を食べて育ち働きバチとなるが、働きバチの頭部から分泌されるローヤルゼリーのみで育てられたメスは交尾産卵能力を有する女王バチとなる。オスは未受精卵から発生する1倍体(1n)であるが、巣の中では働き蜂に餌をもらう以外特に何もしない。オスバチを指す英語「drone」は「なまけもの」の意味である。
オスは女王バチと交尾するため、晴天の日を選んで外に飛び立つ。オスバチは空中を集団で飛行し、その群れの中へ女王バチが飛び込んできて交尾を行う。オスバチは交尾の際に腹部が破壊されるため交尾後死亡するが、女王バチは巣に帰還し産卵を開始する。交尾できなかったオスも巣に戻るが、繁殖期が終わると働きバチに巣を追い出される等して死に絶える。
毒物への耐性は弱く、ショウジョウバエの半分程度という[2]。
セイヨウミツバチの成虫の寿命は、女王蜂が1-3年(最長8年)、働き蜂が最盛期で15-38日、中間期は30-60日、越冬期が140日、雄蜂は21-32日である[3]。
蜜の採集 [編集]
詳細は「ミツバチのダンス」を参照
ミツバチは蜜源を見つけると巣内の垂直な巣板の上でダンスを行い、仲間に蜜源の方向と距離を伝える。これは本能行動の例としてたびたび使われる。ミツバチのダンスは蜜源の場所という具体的な情報をダンスという抽象的な情報に変換して伝達が行われるため、記号的コミュニケーションであると考えられている。ミツバチのダンスコミュニケーションを発見したカール・フォン・フリッシュは高次なコミュニケーション能力が昆虫にもあるという発見が評価され、ニコ・ティンバーゲン、コンラート・ローレンツと共に1973年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
蜜源が近い場合には、体を振りながら左右に交互に円形を描く「円形ダンス」をおこなう。
蜜源が遠い場合(50m〜)は「尻を振りながら直進 - 右回りして元の位置へ - 尻を振りながら直進 - 左回りして元の位置へ」という、いわゆる「8の字ダンス(尻振りダンス)」を繰り返す。このとき尻を振りながら直進する角度が太陽と蜜源のなす角度を示しており、真上が太陽を示す。つまり巣板上で右手水平方向に向かって尻を振るような8の字を描いた場合、「太陽を左90°に見ながら飛べ」という合図になる。また、ダンスの時の尻を振る速度が蜜源までの距離を表す。すなわち尻振りの速度が大きいときは蜜源までの距離が近く、速度が低いときには距離が遠い。花粉や水の採集、分封時の新たな巣の場所決定に際しても、同様のダンスによるコミュニケーションが行われる。
蜜を持ち帰った働きバチは、貯蔵係のハチに蜜を渡すが、そのとき貯蔵係は糖度の高い蜜を優先して受け取り、糖度の低い蜜を持ったハチは待たされる。このことによって、よりよい蜜源へ働きバチを集中的に動員できる。
日本の坂上昭一のグループによるミツバチの巣の社会性行動研究は世界的にも有名で、坂上の著作はE.O.ウィルソンの『社会生物学』にも非常に多く引用されている。
蜂の巣の構造 [編集]
自然の状態では、ミツバチの巣は巣板と呼ばれる鉛直方向に伸びる平面状の構造のみからなる。ミツバチが利用した空間の形状によっては巣板が傾いていることもある。巣板の数はミツバチの種によって異なる。養蜂に用いるニホンミツバチやセイヨウミツバチは複数枚の巣板を形成し、自然の状態でも10枚以上にのぼることがある。コミツバチなどは巣板を1枚しか作らないため、養蜂には向かない。
ミツバチは巣板を防御する構造物を自ら作り出すことはせず家屋の隙間や床下、木のウロなどもともと存在する外壁を利用する。都市部では巣板がむき出しになった巣も存在する。
巣板は中空の六角柱が平面状に数千個接続した構造である。このような構造をハニカム構造(honeycomb、蜂の巣の意)と呼ぶ。強度に優れ、材料が最少で済むという特徴がある。六角柱は厚さ約0.1mmの壁でできており、奥行きは10〜15mmある。底部は三角錐である。巣板の材料はミツバチの腹部にある蝋腺から分泌された蜜蝋である。幼虫を育てるために使用する穴の奥行きは10〜15mmであるが、蜜を貯蔵するために使用する穴の奥行きはバラツキが大きく20mm程度に成る場合もある。
ミツバチによる生産物 [編集]
人間は、主に下記の物をミツバチの生活環から得て利用をしている。
- 蜂蜜
- 花から得られる糖分と水分、ミツバチ体内の転化酵素が濃縮された物質。有史以前から甘味料として利用され現在では製菓原料、化粧品原料、栄養食品などにも利用される。
- 蜜蝋
- ミツバチが体内で合成し分泌する物質。ワックス成分で巣の主要な構成材料となっている。中世ヨーロッパではろうそくの主原料であった。蜜蝋自体は食品とはならないがワックス、油絵具などのメディウム(薄め液)、石鹸、クリーム、口紅、蝋燭などの原料として利用される。
- プロポリス
- 植物が芽などを保護する目的で分泌した滲出物をミツバチが集めた物質。ミツバチは営巣空間の内面を内張りしたりすき間を埋めるのに使う物質である。抗菌性や抗酸化性などが注目され、健康食品として利用されている。
- ローヤルゼリー
- 働きバチが体内で合成し咽頭腺から分泌する物質。ローヤルゼリーのみで育てられたメスの幼虫だけが女王バチとして成長する。ゲノム解析により女王バチと働きバチのゲノムに違いがないことが明らかになっており、どのメスの幼虫も女王バチになる可塑性を持っている。
- 花粉
- 働きバチは幼虫の餌やローヤルゼリーの原料とするため、花粉をだんご状にして後脚の脛節にある花粉かごにつけて運び、巣に蓄える。主に乾燥物が健康食品として利用されている。
性決定の仕組み [編集]
詳細は「半倍数性#ミツバチにおける性決定」を参照
受精卵からはメス(女王蜂または働き蜂)が生まれるが、卵が受精せずに発生した場合はオスとして生まれる。オスはメスの半分の染色体数を持ち、それはすべて母親(女王蜂)に由来する。このためオスは母親の持つ遺伝情報の半分(ゲノムに相当)を受け継ぎ、メスは母親の持つ遺伝情報の半分と半数体の父親の遺伝情報すべてを受け継ぐことになる。
生態 [編集]
| 蜂球 | ||
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| 左:巣口周辺を飛び回るキイロスズメバチと腹部を反り上げ翅を震わせるニホンミツバチ。中:ニホンミツバチによる蜂球。中では2匹のキイロスズメバチが蒸されている。右:「中」の約1時間後。蜂球は解体され、蒸し殺されたキイロスズメバチの死体が見える。(いずれも2005年7月 横浜市内) | ||
ミツバチの天敵としてアジアだけに生息するオオスズメバチがいるが、アジアで進化したトウヨウミツバチはオオスズメバチへの対抗手段を獲得した。巣の中に侵入したスズメバチを大勢のミツバチが取り囲み蜂球(ほうきゅう)とよばれる塊をつくり、蜂球の中で約20分間の間に48℃前後の熱を発生させる。取り囲まれたスズメバチは上限致死温度が44~46℃であるために耐えられずに死んでしまうが、ミツバチは上限致死温度が48~50℃であるため死ぬことはない(前述のように巣から女王が移動する場合も「分封蜂球」という蜂球を作る)。
セイヨウミツバチは上限致死温度がトウヨウミツバチよりも低く、蜂球を作ることができないが、やはり大群でモンスズメバチの腹の周りを圧迫し、呼吸を不可能にして約1時間かけて窒息死させるという対抗手段を持っていることがわかった。これをasphyxia-balling(窒息スクラム)と呼ぶ[4][5]。
古くから使われていたニホンミツバチに比べより多くの蜜を採集するセイヨウミツバチが1877年に導入された。セイヨウミツバチは繁殖力も旺盛なことから野生化しニホンミツバチを駆逐してしまうのではないかと懸念された。実際に北米では養蜂のために導入した後、野生化している。しかし、日本では現在まで一部の地域を除いて野生化は確認されていない。これは天敵オオスズメバチの存在によると考えられている。セイヨウミツバチの窒息スクラムはモンスズメバチ以下の敵しか想定しておらず、オオスズメバチの襲撃を受けると容易に巣を全滅させられるためと説明される。
一方、近年になって都市部で野生のニホンミツバチの観測が増える傾向にある。住宅街はもちろん、自動車の排気ガスや鉄道の騒音に晒されるような都心部に巣作りしていることも多々ある。都心部では天敵のスズメバチが人間によって駆除される為、山間部より比較的安全であるからと推測されている。
直接ミツバチを襲うわけではないが、養蜂家からスムシ(巣虫)と呼ばれ嫌われるハチノスツヅリガ等の蛾の幼虫は、蝋を原料とした巣を食べて成長する。多くのスムシに寄生された巣は全滅することもある[6]。
蜂群崩壊症候群 [編集]
詳細は「蜂群崩壊症候群」を参照
現在、セイヨウミツバチの蜂群がアメリカ合衆国をはじめ世界的に激減しつつあり、蜂群崩壊症候群と呼ばれる。原因としては特定のダニ、病原体、電磁波、ネオニコチノイド系農薬、長距離移送によるストレス(アメリカ合衆国)、冬期に餌として与えられる異性化糖、はては地球温暖化が疑われているがはっきりとはしていない。
ミツバチに関する作品 [編集]
- 小説『みつばちマーヤの冒険』(蜜蜂マアヤ。ボンゼルス著。アニメ化もされた)は擬人化した話ではあるが、スズメバチがミツバチを襲うなど実際の観察に基づいた設定がなされている。
- シャーロック・ホームズシリーズではホームズは探偵引退後の仕事として養蜂家となり、著作も残したことになっている。これは、この50年ほど前に近代養蜂に関する体系的な著書がアメリカ人の養蜂家ロレンゾ・ロレイン・ラングストロス(Lorenzo Lorraine Langstroth)により発表されたことが反映されている。
- 『青い鳥』で知られるノーベル賞作家モーリス・メーテルリンクは観察眼の鋭い養蜂家でもあり『蜜蜂の生活』[7]という名著を残している。
- 昆虫物語 みなしごハッチ - 日本のテレビアニメ。物語中のハチを始めとする動物たちは、擬人化されている。
その他 [編集]
- 日本で現在使用されている20円切手のデザインのモデルにもなっている。
- シンビジウム(蘭)の一種である中国南部原産のキンリョウヘン(金稜辺)の花はニホンミツバチを引き寄せる匂いを出す。ニホンミツバチの分封を捕獲する時に利用される事もある。なおセイヨウミツバチには金稜辺の花の匂いに集まる習性は無い。
脚注 [編集]
参考文献 [編集]
- “こわぁ〜!ミツバチの必殺「サウナ攻撃」”. 読売新聞. (2010年9月19日 12時45分) 2010年9月27日閲覧。 -- ニホンミツバチの天敵スズメバチ撃退方法(蜂球内の温度、二酸化炭素、湿度)
関連項目 [編集]
外部リンク [編集]
- セイヨウミツバチゲノムの解読完了 2006/10/26(独立行政法人 理化学研究所)
- ミツバチの病気(家畜疾病総合情報システム 社団法人 日本獣医師会)
- 玉川大学ミツバチ科学研究施設(玉川大学)