シシリー・メアリー・バーカー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
シシリー・メアリー・バーカー
Cicely Mary Barker
CMBarkerc1920.jpg
誕生 1895年6月28日
死没 1973年2月16日
職業 挿絵画家児童文学者
国籍 イギリスの旗 イギリス
代表作 『春の花の妖精』(1923)
花の妖精』シリーズ
Portal.svg ウィキポータル 文学
テンプレートを表示

シシリー・メアリー・バーカー または シセリー・メアリ・バーカー (Cicely Mary Barker1895年6月28日1973年2月16日) は、イギリス挿絵画家児童文学者である。「花の妖精(フラワーフェアリー,flower fairies)」シリーズと呼ばれる、独自の妖精詩画集を発表した。彼女の花の妖精は、花びらで造られたような衣装をまとった少年や少女で、背中にとんぼの翅(はね)を付けているのが特徴である。


生涯[編集]

シシリー・メアリー・バーカーは、1895年6月28日、ロンドン南方、サリークロイドンで、ウォルター・バーカーとメアリ・エリノア・オスワルド(Mary Eleanor Oswald)のあいだの第二子として生まれた。

子供時代、シシリーはてんかんを患った。その症状は二十代になる頃にはなくなったが、シシリーは特別な配慮を家族内で受けた。両親は中産階級に属しており、病弱なシシリーに乳母を付けた。彼女は学校へは通わず、家庭教育で教養を身に付けた。屋外に出ることはなく、子供時代は読書と絵を描くことに関心があった。

才能の芽生え[編集]

シシリーの才能は早くから発揮され、自身、水彩画の心得があった父親ウォルターが彼女のよき師となり、指導者となった。1908年、わずか13歳のシシリーは、クロイドン芸術協会に作品を出展した。1911年には、四つの作品に買い手が付き、彼女の前途は洋々としたものとなった。

不幸なことに、父ウォルターは1912年に41歳で逝去し、シシリーはよき指導者をなくすと共に、バーカー一家は経済的な困窮に見舞われた。シシリーの姉ドロシーは、しかし実際的な性格で、教師の資格を持っており、ドロシーが一家の生計を引き受けた。シシリー自身も、詩作品や水彩画を雑誌社に売ることで、生計を補った。

花の妖精シリーズ[編集]

罌粟(ポピー)の花の妖精

1917年と1918年に、シシリーは後に彼女を有名にする計画に着手した。彼女が愛してやまなかった、自然と子供たちの姿を美しい形で一つにまとめあげる計画――「花の妖精」の絵を描くことを始めた。シシリーは植物学的な正確さを求めて花々を観察し、また生き生きした子供たちの姿を活写するため、近所の子供をモデルにスケッチを描いた。

こうして、シシリーは『春の花の妖精(Flower Fairies of the Spring)』を作り上げたが、彼女の本を引き受けてくれる出版社が見つかったのは、1923年のことだった。ブラッキー社(Blackie)が、彼女の詩と妖精の挿絵、各々24作を引き受け、シシリーに25ポンドを支払った。「花の妖精」シリーズの第一作だった。

シシリーは内気な性格であったので、外の大人の世界とは隔絶して、家族に守られる生活を続けた。彼女の詩には、純粋さと無垢の要素が維持されたが、このような彼女の生活から来たものとも言えた。

1924年に、姉のドロシーは自身の児童学校を開き、シシリーと母親を連れて、同じクロイドンのなかであったが、引っ越しを行った。学校の庭にシシリーはスタジオを建て、姉の学校の生徒である子供たちをモデルに、更に多数の絵を描いた。

「花の妖精」詩画集シリーズは、片面に妖精の絵、その対する面にシシリー作の詩を載せた形で、『春』『夏』『秋』『道ばた』『庭』『樹』『アルファベット』と七巻がブラッキー社によって出版された。しかし、1985年に、ブラッキー社は、過去の作品から絵と詩を集めて、独自に新しい本を編纂し、これを『冬の花の妖精(Flower Fairies of the Winter)』として出版し、花の妖精シリーズは、現在では八巻が揃っている。

画家としての活動[編集]

シシリーは、「花の妖精」シリーズ以外にも、様々な挿絵を描き、詩画集や、彼女自身が創作した物語を出版した。白鳥と少女の友情を描いた『いぐさ川の王(The Lord of the Rushie River)』や『妖精の贈り物』などが知られる。

敬虔なキリスト教徒であったシシリーは、キリスト教関係の聖歌や詩の本の挿絵を描き、また教会のパネル画や、祭壇の装飾画などを描いた。ポストカードグリーティング・カードの挿絵は、若い頃から最後まで描き続けた。作風は異なるが、同じ妖精画を描く画家の友人などもできた。

シシリーにとっては、しかし芸術家の友人たちよりも、家族の方が一層に親しみ深く、また重要であった。シシリーにとって悲しみであったのは、1954年に、姉のドロシーが心臓麻痺で世を去ったことだった。老いた母親と二人残されたシシリーは、家事を維持するのに精一杯で、創作活動は休止された。

晩年[編集]

1950年代は、シシリーにとって最悪のときとなり、親しい友人たちの逝去を見送らねばならず、更に1960年には、母メアリが世を去った。彼女は長年住み馴染んだクロイドンを出て、サセックス州へと移った。

シシリーは高齢で、視力も損ない体力も衰えてはいたが、1961年から1972年に渡り、クロイドン芸術協会の副会長を務めた。そして1973年2月16日、シシリーは77歳で逝去した。

シシリーの作風[編集]

シシリーの花の妖精は、植物の正確な描写と、生き生きした子供たちの像で画期的なものであった。彼女の絵は、幻想的というより、リアリズムでもあり、ラファエル前派の芸術の影響を受けたその作品は、何よりも「自然」な描写に充たされていた。

初期に描かれ、『春の花の妖精』に納められた美しい絵である「プリムローズの花の妖精」は、当時、バーカー家で家事の仕事をしていたグラディス・タイディという名の少女をモデルに描かれた。シシリーが造った妖精のコスチュームをまとったグラディスは、花を実際に手にして、ポーズを取った。

シシリーの描く花の妖精は、甘美な美しさと純粋な童心を喚起させるが、ときに奇妙にも見えるコスチュームをまとっていて、背中にとんぼの翅(はね)が付いていることを除くと、普通の子供や、少年や少女の絵であった。子供たちのポーズや表情は自然そのものであった。それは、花の植物学的な正確さと共に、実際の子供たちの姿に対する、シシリーのたゆみない観察とスケッチから来ていた。

作品[編集]

  • 『春の花の妖精』 The Flower Fairies of the Spring :Blackie 1923
  • 『夏の花の妖精』 The Flower Fairies of the Summer :Blackie 1925
  • 『秋の花の妖精』 The Flower Fairies of the Autumn :Blackie 1926
  • 『道ばたの花の妖精』 The Flower Fairies of the Wayside :Blackie 1948
  • 『庭の花の妖精』 The Flower Fairies of the Garden :Blackie 1944
  • 『樹の花の妖精』 The Flower Fairies of the Trees :Blackie 1940
  • 『花の妖精のアルファベット』 A Flower Fairy Alphabet :Blackie 1934
  • 『冬の花の妖精』 The Flower Fairies of the Winter :Blackie 1985
  • 『聖歌画集本』 A Little Picture Hymn Book :Blackie
  • 『古いうたの本』 A Little Book of Old Rhymes :Blackie
  • 『子供のうたの本』 The Children's Book of Rhymes :Blackie
  • 『いぐさ川の王』 The Lord of the Rushie River :Blackie 1938
  • 『白鳥サイモン』 Simon the Swan:A Sequel to the Lord of the Rushie River :Blackie

邦訳[編集]

偕成社 「フラワーフェアリー」シリーズ  新倉俊一 訳  1979年
  • シシリー・メアリー・バーカー 『はるのうた』  The Flower Fairies of the Spring
  • シシリー・メアリー・バーカー 『なつのうた』  The Flower Fairies of the Summer
  • シシリー・メアリー・バーカー 『あきのうた』  The Flower Fairies of the Autumn
  • シシリー・メアリー・バーカー 『アルファベットの妖精』  A Flower Fairy Alphabet
  • シシリー・メアリー・バーカー 『木の妖精』  The Flower Fairies of the Trees
  • シシリー・メアリー・バーカー 『にわの妖精』  The Flower Fairies of the Garden
  • シシリー・メアリー・バーカー 『みちばたの妖精』  The Flower Fairies of the Wayside
ほるぷ出版 「花の妖精」 シリーズ  白石かずこ 訳  1994年
  • シシリー・メアリー・バーカー 『花の妖精たち 春』  The Flower Fairies of the Spring
  • シシリー・メアリー・バーカー 『花の妖精たち 夏』  The Flower Fairies of the Summer
  • シシリー・メアリー・バーカー 『花の妖精たち 秋』  The Flower Fairies of the Autumn
  • シシリー・メアリー・バーカー 『花の妖精たち 冬』  The Flower Fairies of the Winter
  • シシリー・メアリー・バーカー 『花の妖精たち アルファベット』  A Flower Fairy Alphabet
  • シシリー・メアリー・バーカー 『花の妖精たち 木』  The Flower Fairies of the Trees
  • シシリー・メアリー・バーカー 『花の妖精たち 庭』  The Flower Fairies of the Garden
  • シシリー・メアリー・バーカー 『花の妖精たち 道ばた』  The Flower Fairies of the Wayside
その他:徳間書店
  • シシリー・メアリー・バーカー 『白鳥とくらした子』 八木田宜子 訳 2002年  The Lord of the Rushie River

エピソード[編集]

日本では、シシリー・バーカーの花の妖精は、チョコレートのおまけに付いていた、ミニチュア・カードの絵でよく知られている。

参考文献[編集]

  • Cicely Mary Barker 『 A Delux Book of Flower Fairies 』 Frederick Warne

外部リンク[編集]