オピネル

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様々なオピネル・ナイフ

オピネルOpinel )はフランスの刃物メーカーである。同社のフォールディングナイフは非常に有名であり、通常「オピネル」と言えば番号付きで呼ばれるこれらのナイフ製品のことを指す。木製ハンドル、単純な構造、大量生産による安価さ、炭素鋼の研ぎ易さ・切れ味などが特徴である。

概要[編集]

1890年、フランスのサヴォワ地方の野鍛冶、ジョセフ・オピネルが考案したフォールディングナイフが原形である。以来、現在に至るまで基本的なデザインを変えることなく生産されており、世界中の登山家やキャンパーに愛用されている。このデザインの優秀さは広く認められており、1985年に世界的な工芸品の博物館として知られるロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館が選出した「世界で最も美しい100の製品」の一つにも選ばれている他、ニューヨーク近代美術館の収蔵品にも加えられている[1]

なお同社ではこの特徴的なフォールディングナイフのほかにも、キッチンナイフ(包丁)やのこぎりなど数アイテムを製造している。いずれも実用性と堅実性を最重視したシンプルな製品群である。

日本での扱い[編集]

日本では「フランスの肥後守」という愛称でも知られている。肥後守は日本製の安価で大量生産されたポケットナイフ(ないし文房具)だが、いわゆる団塊の世代から団塊ジュニア前までの世代などでは肥後守を子供時代に標準的な道具として使い、鉛筆を削ったり玩具を作ったり(→工作少年)するなどしていたため、子供時代の郷愁を誘わせるアイテムともなっており、その延長的にオピネルナイフを愛好・愛用する向きも見られる。[2]

その一方で、単純な構造と安価さ、加えてブランドとしての知名度などから団塊ジュニア世代やそれ以降のアウトドア愛好者にも愛用者も見られる。

刃物店やアウトドア用品専門店、ホームセンターなどのアウトドア用品売り場では、定番の商品ともなっている。

日本での総輸入発売元はコーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド。Official Site → http://opinel.jp/

現在の商品構成[編集]

トラディショナル・ラインの8番。上は研ぎ減りした炭素鋼ブレード、下はステンレスブレード

トラディショナル・ライン[編集]

伝統的な形状のハンドルを持つもの。基本形である「カーボンスティール」、ステンレス鋼の刀身を持つ「ステンレススティール」、刀身の先端が丸くなっている子供用の「マイ・ファースト・オピネル」、10番サイズにコルク抜きを追加した「コークスクリュー」、樫やクルミ、オリーブなどの材をハンドルに使用した「クラシック・ウッズ」、紫檀ブビンガ、牛角をハンドルに使用し刀身を鏡面仕上げとした「レア・ウッズ」、赤や青、黄色、緑色にハンドルを塗装した「カラーズ」、8番のハンドルに彫刻を施した「マウンテン・レジェンズ」「アニマリア」などがある。「カーボンスティール」シリーズ以外はステンレス刀身である。また「マイ・ファースト・オピネル」以外はヤタガンと呼ばれるS字型の刀身を持つ。

スリム・ライン[編集]

刀身とハンドルをトラディショナル・ラインよりもスリムなデザインとしたもの。「クラシック・ウッズ」と「レア・ウッズ」の2つのシリーズがある。ただし「クラシック・ウッズ」にはトラディショナル・ラインと違い、ブナ材もラインナップされている。

ガーデン・ツール[編集]

剪定用

園芸や農作業用にデザインされた商品群である。ハンドル後部にブラシを備え、逆S字状の刀身を持つ「マッシュルーム・ナイフ」(キノコの調理用)、ヤタガンではなくストレートポイントの刀身を持つ「ガーデン・ナイフ」(サラダ用野菜の刈り取り用)、強い逆S字刀身を持つ「プルーニング」(草刈り用)、ノコギリ歯を持つ「ソーナイフ」などがある。ハンドル形状や刀身の形状は独特であるが、ブレードロック機構は共通している。

歴史[編集]

  • 1890年 - ジョセフ・オピネルが最初のオピネル・フォールディングナイフを完成させる。
  • 1896年 - ジョセフは3人の職人を雇い、日産12本のペースでオピネル・フォールディングナイフを製造。
  • 1909年 - 商標登録。
  • 1960年代 - ハンドル材が桜からブナに変更される[3]

クラウンド・ハンドの由来[編集]

「クラウンド・ハンド」と呼ばれる刀身上のロゴ
現在の標準的なハンドルのロゴ
簡略化されたロゴ
ロゴのヴァリエーション

オピネル・ブランドの商標であるクラウンド・ハンドは、オピネル家が住んでいたサン・ジャン・ド・マリアンヌの聖堂の参事会の紋章が原型となっている。サン・ジャン・ド・マリアンヌの聖堂は洗礼者ヨハネの聖遺物を収蔵しているが、オピネルの商標中の3本の指を立てた右手は、洗礼者ヨハネがキリストに洗礼を施した時の手の形をイメージしている。また王冠は、サヴォイア地方がかつて独立した公国であったことを象徴していると考えられている[4]

構造[編集]

ブレードを折りたたむところ
ブレードロックを外した状態
ブレードロックをした状態

ジョセフがオピネルの原型を完成させたのは1890年であるが、この時ジョセフは18歳であった。最も難しかったのは折りたたんだ刃を収納する部分の加工をどうするかという問題であったが、ジョセフは回転刃を持つ治具を独自に開発してこの難問を解決した。現在のオピネルもジョセフ考案になるこの加工法を用いている。 オピネルのナイフは時代と共にグリップや刃の材質、機構の詳細部分など改良を重ねてきているが、21世紀現在の最も基本的なオピネルは以下のような構造を持つ。すなわち「ブナ材にオレンジ色のニス仕上げのグリップ」「炭素鋼の両刃ブレード」「ロータリー式のブレードロック」である。この1950年代に考案されたブレードロック機構は「ヴィロブロックVirobloc」と呼ばれ、1995年に更に改良されたものはオープン時・フォールディング時のどちらでもブレードをロック出来る形式になってている。

ブレード材は現在ではステンレス鋼のものもあり刀身にINOX[5]と刻印されていることで区別できる。刃先の形状は一般的な反り返ったものの他にもストレート・ポイントのものやビルフック型(草刈り用)、先端を丸めたラウンドティップ、フィレナイフ(魚用)なども生産されている。サイズは2番(刀身長35ミリ)から12番(同120ミリ)までがレギュラー・ラインであるが、それ以上のものも存在している。

ハンドル材はブナ材の他にもトネリコ紫檀炭素繊維、牛骨、クルミオリーブなど多種多様なものが存在している。

またフィクスド(折りたたみではない構造)の台所用包丁などもオピネル・ブランドで販売されている。

番手とサイズ[編集]

  • No.1 - 1932年に廃版。当時は刀身長約20ミリだった。
  • No.2 - 刀身長35ミリ。現在最小。
  • No.3 - 刀身長42ミリ
  • No.4 - 刀身長50ミリ
  • No.5 - 刀身長60ミリ。現在でもこの大きさまではViroblocが省かれている。
  • No.6 - 刀身長72ミリ
  • No.7 - 刀身長80ミリ
  • No.8 - 刀身長85ミリ。最も一般的なサイズ。
  • No.9 - 刀身長90ミリ
  • No.10 - 刀身長100ミリ
  • No.11 - 1935年に廃版。
  • No.12 - 刀身長122ミリ
  • No.13 - 刀身長225ミリ。

手入れと補修[編集]

オピネル博物館公式ウェブサイトによると、湿気の多い場所に放置したり洗い桶の中に入れたりすることは望ましくないとされている。刃付けは20度の角度が推奨されている。またブレードロックが緩い場合はプライヤーでロックリングを外して調整することも可能である[6]

脚注[編集]

  1. ^ [1]
  2. ^ しかしオピネルはフランスの生活にもっと深く根ざしており、例えばレストランのナイフが切れなかったりすると彼らはすぐオピネルを取り出して切り分ける。よって肥後守に例えるのはオピネルの本質をうまく伝えきれていない。
  3. ^ [2]
  4. ^ [3]
  5. ^ フランス語でステンレス鋼の意。
  6. ^ [4]

外部リンク[編集]