アラベスク 運命の風

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アラベスク 運命の風』(アラベスク うんめいのかぜ)はF.E.A.R.が製作したアラビアン・ファンタジーRPGテーブルトークRPG)。 1994年ホビー・データからボックス版で発売された。 デザイナーは山本剛吉森真吾。ボックスアートは井上純弌が担当している。 ノベライズ展開もされており、伏見健二により小説化がなされている。

『運命の風』は『Fortuna Ventus』(ふぉるとぅーな うぇんとぅす)と表記されることもある。

有限会社ホビー・データの運営するプレイバイメールである『アラベスク』を原作としている。 アラビア風の世界を扱うTRPGはめずらしく、2003年ゲヘナが登場するまで、日本では唯一の作品となっていた。

なお、本作の発売時期はPBM『アラベスク』シリーズ第1弾「皇子サファールの帰還」の開始時期と前後していたため、世界設定は「皇子サファールの帰還」の開始時点のものとなっている。また、本作のパッケージには「基本セット」と記述されているが、サプリメント等は発売されなかった。

世界設定[編集]

歴史[編集]

世界はフォルトゥーナ・ウェントゥスと呼ばれている。 フォルトゥーナ・ウェントゥスの神話によれば、かつて太陽の神と、月の神と、12の宝石をはめた王冠があった。 太陽の神と月の神は王冠を巡って争い、王冠と宝石は砕け散った。 王冠と宝石の破片は、火の雨となって地上に降り注ぎ、地上は砂漠になってしまった。 今ではフォルトゥーナ・ウェントゥスには広大な砂漠が広がり、オアシスを基盤として十三大都市が成立している。

魔法技術[編集]

フォルトゥーナ・ウェントゥスには、魔導・機導・魂走・砂航という4種類の魔法技術が成立している。 いずれの魔法技術も、その行使のための源としてファトゥム・ストーンと呼ばれる宝石を必要としている。

魔導
ファトゥム・ストーンを配列にそって配置することで、効果を生み出す魔法。
機導
ファトゥム・ストーンを機械に埋め込むことで、機械を動かす技術。強力ではあるが、過去に技術が失われ、それを復活させるべく研究が進んでいる。人体に直接ファトゥム・ストーンを埋め込むことで、サイボーグ化する技術も存在している。
魂走
術者の魂を遠くへ飛ばしたり、目標の魂を感じ取って、思考や感情を読み取ることができる。
砂航
「砂の海を航行する船」を動かす技術。ただし、船は非常に高価である。

システム[編集]

行為判定[編集]

行為判定では、サイコロとして6面ダイス2個(2D6)を使用する。 すべての行為判定は、2D6による上方判定となる。 命中と回避、攻撃と防御、そのすべてに2D6による行為判定を行なうのは、(クリティカルファンブルによる振り足しがない点を除けば) セブン=フォートレスと同様のルールである。

個人戦と精神戦[編集]

『運命の風』では、戦闘として個人戦と精神戦を行なうことができる。 個人戦は、武器による攻撃で相手を死亡させようとする行為である。 精神戦は、心理的な圧迫で相手を気絶させようとする行為である。 個人戦と精神戦の値は、武器・防具を装備することで上昇させることができる。

団体戦と撹乱戦[編集]

『運命の風』では、戦争として団体戦と撹乱戦を行なうことができる。 団体戦は、自分の部隊を率いて相手部隊を消耗させ、相手を行動不能に追い込もうとする行為である。 撹乱戦は、自分の部隊の作戦によって相手部隊を内部分裂させ、統率の取れない状況に追い込もうとする行為である。 団体戦と撹乱戦の値は、兵隊・参謀を装備することで上昇させることができる。

個人戦パワー[編集]

他のゲームでは物理攻撃値・物理防御値が分けられる所を、『運命の風』ではまとめて1つの個人戦パワーとしている。 武器を装備しても個人戦パワーが上昇し、防具を装備しても個人戦パワーが上昇することになる。

これは「精神戦の精神戦パワー」「団体戦の団体戦パワー」「撹乱戦の撹乱戦パワー」についても同様のルールである。

例えば、人間と砂虫(砂漠に潜る長虫)が戦闘になったとする。 人間の個人戦パワーが砂虫の個人戦パワーよりも10点高いのであれば、人間は毎アクション個人戦を行なうことで、砂虫にほぼ10点ずつの損傷を与えることができる。 その一方、砂虫が毎アクション個人戦を行なっても、人間にはまったく損傷を与えることができない。

それでは、砂虫はどうすればよいのか。この場合、数値的に不利な個人戦を行なうのを避け、精神戦を行なうのが正解となる。 砂虫の精神戦パワーが人間の精神戦パワーよりも高ければ理想的だが、もし精神戦パワーで少し負けていたとしても、 個人戦を行なうよりは、精神戦を選ぶほうが、人間を倒せる可能性はあることになる。

基本的には、『運命の風』の戦闘・戦争では、争う二者が「両方とも同じ行動を選ぶ」ということはない。

戦闘については、武器・防具による個人戦パワーの上昇は大きく、資金を得ることがキャラクターを一気に強化する道である。 戦争については、兵隊・参謀による団体戦パワーの上昇は大きく、両者の資金力の差によって結果を予想することができる。

キャラクター[編集]

ロールオアチョイス[編集]

『運命の風』のキャラクター作成では、キャラクターの各要素について、ダイスを振り表を参照して決定する。 この時、ダイスを振らずに、任意の項目を選択することを選んでもよい。つまり、キャラクター作成はロールオアチョイスを繰り返すことで行なわれる (ただし、本文中では説明としてロールオアチョイスの単語は登場していない)。

『運命の風』のキャラクターが活躍するためには、血統・出身・技能の組み合わせが重要であり、 ダイスを振ってランダムに組み上げられたキャラクターが活躍するのは、必ずしも容易ではない。

血統[編集]

キャラクターは人間・機械人・魔獣人・天使・悪魔など12種類の血統から1つを選択することができる。 血統によって、筋力などの自然能力値6種類が決定される。 自然能力値は、主に個人戦と精神戦の基準値となる。

出身[編集]

キャラクターは自由都市ハルトアルバード・魔術都市ドゥーラザム・闇の宗教都市メディムなど13種類の出身から1つを選択することができる。 出身によって、教養などの社会能力値6種類が決定される。 社会能力値は、主に団体戦と撹乱戦の基準値となる。

出典および書籍一覧[編集]

  • 『アラベスク 運命の風』 F.E.A.R.、ホビー・データ、1994年、ボックス版にて発売。宿命の書51頁。物語の書53頁。世界の書54頁。
  • 『アラベスク・ファンタジー 運命の風(フォルトゥーナ・ウェントゥス)』 伏見健二、アスペクト(ログアウト冒険文庫)、1994年、238頁。ISBN 4-89366-173-6

関連項目[編集]