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「ローヤルゼリー」の版間の差分

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'''ローヤルゼリー''' (royal jelly) あるいは'''ロイヤルゼリー'''とは、若い[[働き蜂]]である[[ミツバチ]]が花粉や蜂蜜を食べ、体内で分解・合成し、上顎と下顎の咽頭腺や大腮腺から分泌される物質である。[[女王蜂]]となる[[幼虫]]や、[[成虫]]となった女王蜂、さらには若齢幼虫の働き蜂に給餌される食物であり、ミツバチの社会“コロニー”を支えている。
'''ローヤルゼリー''' ({{lang-en-short|royal jelly}}) あるいは'''ロイヤルゼリー'''とは、若い[[働き蜂]]である[[ミツバチ]]が[[花粉]][[蜂蜜]]を食べ、体内で分解・合成し、上顎と下顎の咽頭腺や大腮腺から分泌る物質である。[[女王蜂]]となる[[幼虫]]や、[[成虫]]となった女王蜂、さらには若齢幼虫の働き蜂に給餌される食物であり、ミツバチの社会“コロニー”を支えている。


 ミツバチは、卵の段階では、働き蜂も女王蜂も同じメスである。ところが、孵化してから3日目まで、ローヤルゼリーより栄養価の低いワーカーゼリーを食べ、4日目以降、蜂蜜と花粉を食べるメス蜂は働き蜂となる。一方、女王蜂となるメス蜂は孵化してから生涯にわたりローヤルゼリーを食べ続ける。女王蜂生涯において唯一のエネルギー源でもある。
ミツバチは、卵の段階では、働き蜂も女王蜂も同じ[[メス]]である。ところが、孵化してから3日目まで、ローヤルゼリーより栄養価の低いワーカーゼリーを食べ、4日目以降、蜂蜜と花粉を食べるメス蜂は働き蜂となる。一方、女王蜂となるメス蜂は孵化してから生涯にわたりローヤルゼリーを食べ続ける。女王蜂生涯において唯一のエネルギー源でもある。


 成虫となった女王蜂を働き蜂と比較すると、体の大きさは2~3倍、寿命は30~40倍になる。卵を産むことができない働き蜂に対して、女王蜂は毎日約1,500個もの卵を産み続けることができるなど、特徴や能力が大きく異なる。
成虫となった女王蜂を働き蜂と比較すると、体の大きさは2~3倍、寿命は30~40倍になる。卵を産むことができない働き蜂に対して、女王蜂は毎日約1,500個もの卵を産み続けることができるなど、特徴や能力が大きく異なる。


 日本語では、'''王乳'''とも称される。 現在の日本においては、[[プロポリス]]と同様に[[健康食品]]や化粧品として販売されている。
日本語では、'''王乳'''とも称される。 現在の日本においては、[[プロポリス]]と同様に[[健康食品]]や化粧品として販売されている。

 [[蜂蜜]]と同じく蜂の巣から採れるが、蜂蜜とは異なり一般的には白いクリーム状で発酵食品のような特徴的な酸味を有する食品である。


[[蜂蜜]]と同じく蜂の巣から採れるが、蜂蜜とは異なり一般的には白いクリーム状で発酵食品のような特徴的な酸味を有する食品である。


== 概要 ==
== 概要 ==
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; 生ローヤルゼリー
; 生ローヤルゼリー
: みつばちが女王蜂を育成するため、その咽頭腺等を通じて王台中に分泌したものであって、移虫後72時間以内に採取したもの<ref>「ローヤルゼリーの表示に関する公正競争規約」(昭和54年9月25日公正取引委員会告示第27号)第2条(1)の定義</ref>
: みつばちが女王蜂を育成するため、その咽頭腺等を通じて王台中に分泌したものであって、移虫後72時間以内に採取したもの<ref>「ローヤルゼリーの表示に関する公正競争規約」(昭和54年9月25日公正取引委員会告示第27号)第2条(1)の定義</ref>

; 乾燥ローヤルゼリー
; 乾燥ローヤルゼリー
: 生ローヤルゼリーを凍結乾燥その他の方法により乾燥処理したもの<ref>「ローヤルゼリーの表示に関する公正競争規約」(昭和54年9月25日公正取引委員会告示第27号)第2条(2)の定義</ref>
: 生ローヤルゼリーを凍結乾燥その他の方法により乾燥処理したもの<ref>「ローヤルゼリーの表示に関する公正競争規約」(昭和54年9月25日公正取引委員会告示第27号)第2条(2)の定義</ref>

; 調製ローヤルゼリー
; 調製ローヤルゼリー
: 生ローヤルゼリー又は乾燥ローヤルゼリーに乳糖、はちみつ等の調整剤、添加物等を使用し、調製(錠剤、カプセルそのた剤型品の調製は、品質保全のため必要な場合に限る)したものであって、使用した生ローヤルゼリーの重量が全重量の6分の1以上のもの<ref>「ローヤルゼリーの表示に関する公正競争規約」(昭和54年9月25日公正取引委員会告示第27号)第2条(3)の定義</ref>
: 生ローヤルゼリー又は乾燥ローヤルゼリーに乳糖、はちみつ等の調整剤、添加物等を使用し、調製(錠剤、カプセルそのた剤型品の調製は、品質保全のため必要な場合に限る)したものであって、使用した生ローヤルゼリーの重量が全重量の6分の1以上のもの<ref>「ローヤルゼリーの表示に関する公正競争規約」(昭和54年9月25日公正取引委員会告示第27号)第2条(3)の定義</ref>



== 栄養価 ==
== 栄養価 ==
 ローヤルゼリーは[[蜂蜜]]とは比較にならないほど多くの[[ビタミン]]類、[[ミネラル]]、[[アミノ酸]]が含まれており、高[[タンパク]]で様々な[[栄養素]]を含んでいる。
ローヤルゼリーは[[蜂蜜]]とは比較にならないほど多くの[[ビタミン]]類、[[ミネラル]]、[[アミノ酸]]が含まれており、高[[タンパク]]で様々な[[栄養素]]を含んでいる。


 3大栄養素であるタンパク質・炭水化物・脂質をはじめ、ビタミン類、ミネラル類などさまざまな栄養素を含み、生のローヤルゼリーは一般的に、水分が約60%、タンパク質が10~15%、炭水化物(糖質)が約10%、脂質が約2%、ミネラルが約1%、その他、ビタミンやアセチルコリン、10-ヒドロシキデセン酸という脂肪酸などが数%含まれている。
3大栄養素であるタンパク質・炭水化物・脂質をはじめ、ビタミン類、ミネラル類などさまざまな栄養素を含み、生のローヤルゼリーは一般的に、水分が約60%、タンパク質が10~15%、炭水化物(糖質)が約10%、脂質が約2%、ミネラルが約1%、その他、ビタミンやアセチルコリン、10-ヒドロシキデセン酸という脂肪酸などが数%含まれている。


 ローヤルゼリーのアミノ酸スコア(タンパク質の品質を示すスコアで、必須アミノ酸の含有バランスを示すもの)は100で、鶏卵と同スコアであり、良質なタンパク質を含有している。
ローヤルゼリーのアミノ酸スコア(タンパク質の品質を示すスコアで、必須アミノ酸の含有バランスを示すもの)は100で、鶏卵と同スコアであり、良質なタンパク質を含有している。


 このタンパク質の一部が原因となり、ごく稀に、喘息および食物アレルギーをもつ持つ人において、喘息や、重いアレルギー症状が引き起こされた例が報告されている<ref>Bullock et al., '''''MJA''''', 160(1), 44 (1994)</ref><ref>Thien et al., '''''Clin. Exp. Allergy''''', 26(2), 216 (1996)</ref>。 現在、ローヤルゼリーを含む健康食品に、喘息や食物アレルギーを持つ人へ飲用を控える表示が徹底されようになった。
このタンパク質の一部が原因となり、ごく稀に、喘息および食物アレルギーをもつ持つ人において、喘息や、重いアレルギー症状が引き起こされた例が報告されている<ref>{{cite journal|journal=Med. J. Aust.|year= 1994 |volume=160|issue=1|pages=44|title=Fatal royal jelly-induced asthma|author=Bullock RJ, Rohan A, Straatmans JA|pmid= 8271989}}</ref><ref>{{cite journal|journal=Clin. Exp. Allergy|year= 1996|volume=26|issue=2|pages=216-222|title=Asthma and anaphylaxis induced by royal jelly|journal=Thien FC, Leung R, Baldo BA, Weiner JA, Plomley R, Czarny D|pmid= 8835130}}</ref>。現在、ローヤルゼリーを含む健康食品に、喘息や食物アレルギーを持つ人へ飲用を控える表示が徹底されようになった。


 一方、ローヤルゼリーのタンパク質をペプチドやアミノ酸に分解することによって、アレルギー症状の発症リスクが低くなることが報告されている<ref>特許第3994120号</ref>, <ref>柳原ら, '''''日本農芸化学会大会講演要旨集''''', p.161 (2008)</ref>。
一方、ローヤルゼリーのタンパク質をペプチドやアミノ酸に分解することによって、アレルギー症状の発症リスクが低くなることが報告されている<ref>特許第3994120号</ref><ref>柳原ら, '''''日本農芸化学会大会講演要旨集''''', p.161 (2008)</ref>。


<!-- 信憑性に欠ける内容なのでコメントアウトしています。
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== ローヤルゼリーの歴史 ==
== ローヤルゼリーの歴史 ==
 ローヤルゼリーの研究は、ヨーロッパ各国で1900年代より本格的に行われるようになった。当時の[[ローマ教皇]]が老衰による危篤状態に陥った際、主席侍医のバオルチー氏やパウロ・ニーハンス博士、ガレヤ・ジリシー博士らがローヤルゼリーを投与したところ、回復。1955年ローマで開催された国際医学会にて発表後、1958年、イタリア(ローマ)で開かれた第12回国際養蜂会議で、教皇自らミツバチを称えるスピーチを行った。
ローヤルゼリーの研究は、ヨーロッパ各国で1900年代より本格的に行われるようになった。当時の[[ローマ教皇]]が老衰による危篤状態に陥った際、主席侍医のバオルチー氏やパウロ・ニーハンス博士、ガレヤ・ジリシー博士らがローヤルゼリーを投与したところ、回復。1955年ローマで開催された国際医学会にて発表後、1958年、イタリア(ローマ)で開かれた第12回国際養蜂会議で、教皇自らミツバチを称えるスピーチを行った。

 これをきっかけにローヤルゼリーが全世界に知れ渡ることとなるが、日本においては、1959年、週刊朝日に掲載された記事により、一般の人々の関心を集めることとなった<ref>鈴木 勲, “日本におけるローヤルゼリーの経緯について”,'''''ミツバチ科学''''',7(3) : 105-108 (1986)</ref>。また、同時期、「不老長寿の新薬」として輸入され始め、1960年、国内での計画生産が始まった<ref>小野保一,“ローヤル・ゼリーの生産について”,'''''ミツバチ科学''''',3(1) : 11-14 (1982)</ref>。


これをきっかけにローヤルゼリーが全世界に知れ渡ることとなるが、日本においては、1959年、週刊朝日に掲載された記事により、一般の人々の関心を集めることとなった<ref>鈴木 勲, “日本におけるローヤルゼリーの経緯について”,'''''ミツバチ科学''''',7(3) : 105-108 (1986)</ref>。また、同時期、「不老長寿の新薬」として輸入され始め、1960年、国内での計画生産が始まった<ref>小野保一,“ローヤル・ゼリーの生産について”,'''''ミツバチ科学''''',3(1) : 11-14 (1982)</ref>。


== ローヤルゼリーの作用 ==
== ローヤルゼリーの作用 ==
{{medical|section=1}}
 ローマ教皇の回復をきっかけとして、ローヤルゼリーの効能効果は全世界で認知され、世界各国の科学者達が研究を開始。これまでに様々な報告がなされている。
ローマ教皇の回復をきっかけとして、ローヤルゼリーの効能効果は全世界で認知され、世界各国の科学者達が研究を開始。これまでに様々な報告がなされている。


=== 有効とする研究 ===
====冷え症====
24名の若年女性を対象とした無作為化プラセボ対照試験によって、ローヤルゼリーによる冷え症改善効果が示されている。実際の試験では、20℃の冷水に1分間手を浸し、体温の回復をサーモグラフィーにより解析した結果、ローヤルゼリーを2週間摂取(2.8 g/day)した冷え症者の方が、デキストリン(プラセボ)を摂取した冷え症者よりも体温の回復が早いことが示されている<ref>山田典子、吉村裕之,“若年女性の冷え症に対するローヤルゼリー摂取の改善効果”,'''''日本栄養・食糧学会誌''''', 63(6) p.271-278 (2010)</ref>。


====肩こり====
'''有効とする研究'''
40~59歳の肩こり症状を自覚している健康な女性33名を対象としたプラセボ対照二重盲検試験にて、酵素分解したローヤルゼリー摂取による肩こり症状の軽減効果が示されている。試験では、デキストリン(プラセボ)あるいは酵素分解ローヤルゼリー(1200 mg)を4週間継続摂取し、肩こりの自覚症状と肩表面の血流・筋肉の硬度の変化を調べた結果、ローヤルゼリーを摂取した人の首筋のはりをやわらげ、肩こりの改善に効果があることが示されている<ref>立藤智基、浅間孝志、土井志真、菅野智子、橋本健,“肩こり症状に対するローヤルゼリー含有食品の改善作用-プラセボ対照二重盲検試験による検討―”,'''''東方医学''''',26(1) p.55-64(2010)</ref> 。ただし、肩表面の血流には変化は見られなかった。


==== 耳鳴り====
'''1.''' 冷え症に対する作用について、愛媛大学 山田典子らによる研究報告が2010年、「日本栄養・食糧学会誌」に掲載されている。
24名の軽度の耳鳴り患者(30-75歳)を対象としたヒト臨床試験(非盲検試験)によって、ローヤルゼリー摂取による軽度の耳鳴り症状が軽減されることが明らかとなっている。試験では、耳鳴り自覚症状アンケートと聴力検査を組み合わせて解析したところ、高用量(2.8 g/day)のローヤルゼリーを8週間継続飲用した方が、低用量(0.7 g/day)摂取したときよりも耳鳴り症状が軽減することが示されている<ref>嶽 良博、奥野吉昭、沖原清司、橋本 健、榎本雅夫,“ローヤルゼリー含有食品による耳鳴症状の改善効果の検討試験”,'''''応用薬理''''',75(5/6) p.109-116 (2008)</ref> 。


==== 血圧改善作用====
 24名の若年女性を対象とした無作為化プラセボ対照試験によって、ローヤルゼリーによる冷え症改善効果が示されている。実際の試験では、20℃の冷水に1分間手を浸し、体温の回復をサーモグラフィーにより解析した結果、ローヤルゼリーを2週間摂取(2.8 g/day)した冷え症者の方が、デキストリン(プラセボ)を摂取した冷え症者よりも体温の回復が早いことが示されている<ref>山田典子、吉村裕之,“若年女性の冷え症に対するローヤルゼリー摂取の改善効果”,'''''日本栄養・食糧学会誌''''', 63(6) p.271-278 (2010)</ref>。
タンパク質分解酵素により分解したローヤルゼリーの血圧改善作用を調べるため、プラセボ対照二重盲検試験にて、血圧が高めもしくはやや高い30~40歳代の男女67名にタンパク質を分解したローヤルゼリーを毎日 500, 1000, 5000 mgまたはローヤルゼリーを含まないプラセボを 4週間食べてもらい、血圧、脈拍、体重、血液、尿の変化を調べた。結果、5000 mgのローヤルゼリーを食べたグループは、プラセボグループよりも血圧が低下し、改善したことが示された<ref>梶本修身, 中妻章, 土井志真, 西村明, 梶本佳孝, 平田洋, “ローヤルゼリータンパク質加水分解物の正常高値血圧者および軽症高血圧者に対する降圧作用の検討”, '''''健康・栄養食品研究''''', 8(2) p.37-55 (2005)</ref> 。


====骨密度への作用====
女性ホルモンの減少に起因する骨粗鬆症に対するローヤルゼリーの作用を調べるため、卵巣を取り出すことで女性ホルモンが分泌されないラットに、乾燥ローヤルゼリーあるいは酵素分解ローヤルゼリーを餌に2%混ぜて食べさせ、骨粗しょう症の予防効果を調べた。実験の結果、乾燥ローヤルゼリーあるいは酵素分解ローヤルゼリーを摂取させたラットでは、骨密度の減少が抑えられ、骨粗しょう症予防に効果があることが示された。さらに、酵素分解したローヤルゼリーの方がその作用は強いことも明らかとなった。また、乾燥ローヤルゼリーや酵素分解ローヤルゼリーは小腸でのカルシウム吸収を盛んにすることで、骨粗しょう症を予防する可能性も示されている<ref>{{cite journal|author=Hidaka S, Okamoto Y, Uchiyama S, Nakatsuma A, Hashimoto K, Ohnishi ST, Yamaguchi M|title=Royal jelly prevents osteoporosis in rats: beneficial effects in ovariectomy model and in bone tissue culture model|journal=Evid. Based Complement. Alternat. Med.|volume=3 |issue=3|pages= 339-348 |year=2006|pmid= 16951718|pmc=1513150}}</ref>。


====インスリン抵抗性に対する作用====
'''2.'''  肩こりに対する作用について、立藤智基らによる研究報告が2010年、「東方医学」に掲載されている。
糖尿病の初期症状の一つであるインスリン抵抗性(血糖値を下げるインスリンが働きにくくなる状態)を示すモデル動物(FDR:糖負荷による糖尿病モデルラット、OLETF:遺伝的に糖尿病を発症するモデルラット)を用いた試験によって、ローヤルゼリーによるインスリン抵抗性の改善効果が明らかとなっている<ref>{{cite journal|author=Nomura M, Maruo N, Zamami Y, Takatori S, Doi S, Kawasaki H|title=Effect of long-term treatment with royal jelly on insulin resistance in Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty (OLETF) rats|journal=Yakugaku Zasshi|volume=127|issue=11|pages=1877-1882 |year=2007|pmid= 17978564|doi=10.1248/yakushi.127.1877}}</ref><ref>{{cite journal|author-Zamami Y, Takatori S, Goda M, Koyama T, Iwatani Y, Jin X, Takai-Doi S, Kawasaki H|title=Royal jelly ameliorates insulin resistance in fructose-drinking rats|jouanal=Biol. Pharm. Bull.|volume=31|issue=11|pages= 2103-2107 |year=2008|pmid=18981581|doi=10.1248/bpb.31.2103}}</ref>。


====マウスの筋力に対する作用====
 40~59歳の肩こり症状を自覚している健康な女性33名を対象としたプラセボ対照二重盲検試験にて、酵素分解したローヤルゼリー摂取による肩こり症状の軽減効果が示されている。試験では、デキストリン(プラセボ)あるいは酵素分解ローヤルゼリー(1200 mg)を4週間継続摂取し、肩こりの自覚症状と肩表面の血流・筋肉の硬度の変化を調べた結果、ローヤルゼリーを摂取した人の首筋のはりをやわらげ、肩こりの改善に効果があることが示されている<ref>立藤智基、浅間孝志、土井志真、菅野智子、橋本健,“肩こり症状に対するローヤルゼリー含有食品の改善作用-プラセボ対照二重盲検試験による検討―”,'''''東方医学''''',26(1) p.55-64(2010)</ref> 。ただし、肩表面の血流には変化は見られなかった。
19-20月齢の高齢マウスにローヤルゼリーを与えると、筋肉量の増加が見られ、その作用は、ローヤルゼリー投与量に依存して増加し、未酵素分解よりも酵素分解したローヤルゼリーで増加したとの報告がある。また、筋肉を損傷させた高齢マウスにおいても、ローヤルゼリーは筋肉細胞の増殖を促し、加齢による筋肉の衰えを軽減する可能性が示されている<ref>牛凱軍、郭輝、崔宇飛、小林順敏、永富良一. “ローヤルゼリーの高齢マウスの筋衛星細胞の機能と増殖能への影響”, '''''第65回 日本体力医学会大会抄録''''' (2010)</ref> 。


====不定愁訴====
内科治療中の外来及び入院患者27名にローヤルゼリーを追加投与して臨床効果を判定した結果、頭重、倦怠感、食欲不振、無気力などの不定期愁訴の改善にきわめて有効と報告されている<ref>高須靖夫, 太田喜昭, “内科領域におけるローヤルゼリー散の臨床効果”, '''''診断と新薬''''', 12 (8) 47-54 (1975)</ref> 。


====コレステロールとの関連====
'''3.'''  耳鳴りに対する作用について、嶽クリニックの嶽 良博およびみつばち健康科学研究所の研究グループによる研究報告が2008年、「応用薬理」に掲載されている。
複数の臨床試験の結果、ローヤルゼリーの摂取により血清中のコレステロールのレベルが減少し、心臓や血管の病気のリスクが低減したと報告されている<ref>{{cite journal|author=Vittek J.|title=Effect of royal jelly on serum lipids in experimental animals and humans with atherosclerosis|journal=Experientia|volume= 51|issue=9-10|pages=927-935|year=1995|pmid=7556573}}</ref><ref>{{cite journal|author=Guo H, Saiga A, Sato M, Miyazawa I, Shibata M, Takahata Y, Morimatsu F|title=Royal jelly supplementation improves lipoprotein metabolism in humans|journal=J. Nutr. Sci. Vitaminol. (Tokyo)|volume= 53|issue=4|pages=345-348 |year=2007|pmid=17934240}}</ref>。


====抑うつとの関連====
 24名の軽度の耳鳴り患者(30-75歳)を対象としたヒト臨床試験(非盲検試験)によって、ローヤルゼリー摂取による軽度の耳鳴り症状が軽減されることが明らかとなっている。試験では、耳鳴り自覚症状アンケートと聴力検査を組み合わせて解析したところ、高用量(2.8 g/day)のローヤルゼリーを8週間継続飲用した方が、低用量(0.7 g/day)摂取したときよりも耳鳴り症状が軽減することが示されている<ref>嶽 良博、奥野吉昭、沖原清司、橋本 健、榎本雅夫,“ローヤルゼリー含有食品による耳鳴症状の改善効果の検討試験”,'''''応用薬理''''',75(5/6) p.109-116 (2008)</ref> 。
高温多湿によりストレスを与えたラットを用い、水中で動かなかった時間(無気力状態の時間)を測定したところ、ローヤルゼリーを与えていないラットでは215秒であったが、ローヤルゼリーを与えると188秒に短縮され、ストレスによる精神的疲労(無気力)の改善に有効との報告がある<ref>池田勇五、鷲塚昌隆、古市浩康、福田陽一、桑原優, “ストレスとローヤルゼリー”, '''''ミツバチ科学''''', 17(3): 103-110 (1996)</ref>。


'''4.'''  血圧改善作用について、梶本修身らによる研究報告が2005年、「健康・栄養食品研究」に掲載されている。

 タンパク質分解酵素により分解したローヤルゼリーの血圧改善作用を調べるため、プラセボ対照二重盲検試験にて、血圧が高めもしくはやや高い30~40歳代の男女67名にタンパク質を分解したローヤルゼリーを毎日 500, 1000, 5000 mgまたはローヤルゼリーを含まないプラセボを 4週間食べてもらい、血圧、脈拍、体重、血液、尿の変化を調べた。結果、5000 mgのローヤルゼリーを食べたグループは、プラセボグループよりも血圧が低下し、改善したことが示された<ref>梶本修身, 中妻章, 土井志真, 西村明, 梶本佳孝, 平田洋, “ローヤルゼリータンパク質加水分解物の正常高値血圧者および軽症高血圧者に対する降圧作用の検討”, '''''健康・栄養食品研究''''', 8(2) p.37-55 (2005)</ref> 。


'''5.'''  骨密度への作用について、福岡医療短期大学 日高三郎らによる研究報告が2006年、「eCAM」に掲載されている。

 女性ホルモンの減少に起因する骨粗鬆症に対するローヤルゼリーの作用を調べるため、卵巣を取り出すことで女性ホルモンが分泌されないラットに、乾燥ローヤルゼリーあるいは酵素分解ローヤルゼリーを餌に2%混ぜて食べさせ、骨粗しょう症の予防効果を調べた。実験の結果、乾燥ローヤルゼリーあるいは酵素分解ローヤルゼリーを摂取させたラットでは、骨密度の減少が抑えられ、骨粗しょう症予防に効果があることが示された。さらに、酵素分解したローヤルゼリーの方がその作用は強いことも明らかとなった。また、乾燥ローヤルゼリーや酵素分解ローヤルゼリーは小腸でのカルシウム吸収を盛んにすることで、骨粗しょう症を予防する可能性も示されている<ref>Hidaka S, Okamoto Y, Uchiyama S, Nakatsuma A, Hashimoto K, Ohnishi ST, Yamaguchi M. “Royal jelly prevents osteoporosis in rats: beneficial effects in ovariectomy model and in bone tissue culture model.”, '''''Evid Based Complement Alternat Med'''''.,3 (3) : 339-48 (2006) PMID : 16951718 [PubMed] PMCID : PMC1513150</ref> 。


'''6.'''  インスリン抵抗性に対する作用について、岡山大学大学院 座間味、野村、川﨑らの研究グループによる研究報告が「薬学雑誌(2007年)」と「BPB(2008年)」に掲載されている。

 糖尿病の初期症状の一つであるインスリン抵抗性(血糖値を下げるインスリンが働きにくくなる状態)を示すモデル動物(FDR:糖負荷による糖尿病モデルラット、OLETF:遺伝的に糖尿病を発症するモデルラット)を用いた試験によって、ローヤルゼリーによるインスリン抵抗性の改善効果が明らかとなっている<ref>Nomura M, Maruo N, Zamami Y, Takatori S, Doi S, Kawasaki H., “Effect of long-term treatment with royal jelly on insulin resistance in Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty (OLETF) rats.”, '''''Yakugaku Zasshi''''', 127(11) : 1877-82 (2007) PMID : 17978564</ref>,<ref>Zamami Y, Takatori S, Goda M, Koyama T, Iwatani Y, Jin X, Takai-Doi S, Kawasaki H., “Royal jelly ameliorates insulin resistance in fructose-drinking rats.”, '''''Biol Pharm Bull.''''', 31(11): 2103-7 (2008) PMID:18981581</ref>。


'''7.''' マウスの筋力に対する作用について、東北大学 牛凱軍らによる研究報告が2010年、「第65 回日本体力医学会大会抄録」に掲載されている。

 19-20月齢の高齢マウスにローヤルゼリーを与えると、筋肉量の増加が見られ、その作用は、ローヤルゼリー投与量に依存して増加し、未酵素分解よりも酵素分解したローヤルゼリーで増加したとの報告がある。また、筋肉を損傷させた高齢マウスにおいても、ローヤルゼリーは筋肉細胞の増殖を促し、加齢による筋肉の衰えを軽減する可能性が示されている<ref>牛凱軍、郭輝、崔宇飛、小林順敏、永富良一. “ローヤルゼリーの高齢マウスの筋衛星細胞の機能と増殖能への影響”, '''''第65回 日本体力医学会大会抄録''''' (2010)</ref> 。


'''8.''' 不定愁訴に対する作用について、高須靖夫らによる研究報告が1975年、「診断と新薬」 に掲載されている。

 内科治療中の外来及び入院患者27名にローヤルゼリーを追加投与して臨床効果を判定した結果、頭重、倦怠感、食欲不振、無気力などの不定期愁訴の改善にきわめて有効と報告されている<ref>高須靖夫, 太田喜昭, “内科領域におけるローヤルゼリー散の臨床効果”, '''''診断と新薬''''', 12 (8) 47-54 (1975)</ref> 。


'''9.'''  コレステロールとの関連について、Vittek J.らによる研究報告が1995年、「BLS」に、Guo H.らによる研究報告が2007年、「JNSV」に掲載されている。

 複数の臨床試験の結果、ローヤルゼリーの摂取により血清中のコレステロールのレベルが減少し、心臓や血管の病気のリスクが低減したと報告されている<ref>Vittek J., “Effect of royal jelly on serum lipids in experimental animals and humans with atherosclerosis.”, '''''Experientia''''', 51(9-10):927-35 (1995) PMID:7556573</ref>,<ref>Guo H, Saiga A, Sato M, Miyazawa I, Shibata M, Takahata Y, Morimatsu F., “Royal jelly supplementation improves lipoprotein metabolism in humans.”, '''''J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo)''''', 53(4):345-8 (2007) PMID:17934240</ref>。


'''10.'''  抑うつとの関連について、ゼリア新薬工業、池田勇五らによる研究報告が1996年、「ミツバチ科学」に掲載されている。

 高温多湿によりストレスを与えたラットを用い、水中で動かなかった時間(無気力状態の時間)を測定したところ、ローヤルゼリーを与えていないラットでは215秒であったが、ローヤルゼリーを与えると188秒に短縮され、ストレスによる精神的疲労(無気力)の改善に有効との報告がある<ref>池田勇五、鷲塚昌隆、古市浩康、福田陽一、桑原優, “ストレスとローヤルゼリー”, '''''ミツバチ科学''''', 17(3): 103-110 (1996)</ref>。


'''11.'''  抗菌活性とその成分について、八並一寿らによる研究報告が1984年、「ミツバチ科学」に掲載されている。

 ローヤルゼリーを-40℃、5℃、室温、37℃にて保存し、抗菌活性を測定したところ、保存温度が低いほど、また、新鮮であるほど抗菌活性が高いことが示された。また、室温や37℃であっても、10%以下の抗菌活性になることはなかった。抗菌活性成分を探索したところ、10-ヒドロキシ-2-デセン酸と10-ヒドロキシデカン酸であることが判明した<ref>八並一寿、越後多嘉志, “蜂蜜およびローヤル・ゼリーの抗菌作用”, '''''ミツバチ科学''''', 5(3) : 125-130(1984)</ref> 。


====抗菌活性====
ローヤルゼリーを-40℃、5℃、室温、37℃にて保存し、抗菌活性を測定したところ、保存温度が低いほど、また、新鮮であるほど抗菌活性が高いことが示された。また、室温や37℃であっても、10%以下の抗菌活性になることはなかった。抗菌活性成分を探索したところ、10-ヒドロキシ-2-デセン酸と10-ヒドロキシデカン酸であることが判明した<ref>八並一寿、越後多嘉志, “蜂蜜およびローヤル・ゼリーの抗菌作用”, '''''ミツバチ科学''''', 5(3) : 125-130(1984)</ref> 。


== 脚注 ==
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== 関連項目 ==
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*[http://hfnet.nih.go.jp/contents/indiv_agreement.html?52 ローヤルゼリー - 「健康食品」の安全性・有効性情報] ([[国立健康・栄養研究所]])
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* [http://www.rjkoutori.or.jp/ 全国ローヤルゼリー公正取引協議会]

* [http://www.tamagawa.ac.jp/hsrc/contents/hsrc_top.htm ミツバチ科学研究センター]

* [http://bee-lab.jp/ みつばち健康科学研究所]
* 全国ローヤルゼリー公正取引協議会
 
 http://www.rjkoutori.or.jp/

* ミツバチ科学研究センター
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* みつばち健康科学研究所
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2012年2月20日 (月) 07:16時点における版

ローヤルゼリー (: royal jelly) あるいはロイヤルゼリーとは、若い働き蜂であるミツバチ花粉蜂蜜を食べ、体内で分解・合成し、上顎と下顎の咽頭腺や大腮腺から分泌する物質である。女王蜂となる幼虫や、成虫となった女王蜂、さらには若齢幼虫の働き蜂に給餌される食物であり、ミツバチの社会“コロニー”を支えている。

ミツバチは、卵の段階では、働き蜂も女王蜂も同じメスである。ところが、孵化してから3日目まで、ローヤルゼリーより栄養価の低いワーカーゼリーを食べ、4日目以降、蜂蜜と花粉を食べるメス蜂は働き蜂となる。一方、女王蜂となるメス蜂は孵化してから生涯にわたりローヤルゼリーを食べ続ける。女王蜂生涯において唯一のエネルギー源でもある。

成虫となった女王蜂を働き蜂と比較すると、体の大きさは2~3倍、寿命は30~40倍になる。卵を産むことができない働き蜂に対して、女王蜂は毎日約1,500個もの卵を産み続けることができるなど、特徴や能力が大きく異なる。

日本語では、王乳とも称される。 現在の日本においては、プロポリスと同様に健康食品や化粧品として販売されている。

蜂蜜と同じく蜂の巣から採れるが、蜂蜜とは異なり一般的には白いクリーム状で発酵食品のような特徴的な酸味を有する食品である。

概要

日本では「ローヤルゼリーの表示に関する公正競争規約」(昭和54年9月25日公正取引委員会告示第27号)によって、生ローヤルゼリー乾燥ローヤルゼリー調製ローヤルゼリーに分類されており、それぞれの表示について種類ごとに性状や組成などに応じた厳しい基準が設けられている。

生ローヤルゼリー
みつばちが女王蜂を育成するため、その咽頭腺等を通じて王台中に分泌したものであって、移虫後72時間以内に採取したもの[1]
乾燥ローヤルゼリー
生ローヤルゼリーを凍結乾燥その他の方法により乾燥処理したもの[2]
調製ローヤルゼリー
生ローヤルゼリー又は乾燥ローヤルゼリーに乳糖、はちみつ等の調整剤、添加物等を使用し、調製(錠剤、カプセルそのた剤型品の調製は、品質保全のため必要な場合に限る)したものであって、使用した生ローヤルゼリーの重量が全重量の6分の1以上のもの[3]

栄養価

ローヤルゼリーは蜂蜜とは比較にならないほど多くのビタミン類、ミネラルアミノ酸が含まれており、高タンパクで様々な栄養素を含んでいる。

3大栄養素であるタンパク質・炭水化物・脂質をはじめ、ビタミン類、ミネラル類などさまざまな栄養素を含み、生のローヤルゼリーは一般的に、水分が約60%、タンパク質が10~15%、炭水化物(糖質)が約10%、脂質が約2%、ミネラルが約1%、その他、ビタミンやアセチルコリン、10-ヒドロシキデセン酸という脂肪酸などが数%含まれている。

ローヤルゼリーのアミノ酸スコア(タンパク質の品質を示すスコアで、必須アミノ酸の含有バランスを示すもの)は100で、鶏卵と同スコアであり、良質なタンパク質を含有している。

このタンパク質の一部が原因となり、ごく稀に、喘息および食物アレルギーをもつ持つ人において、喘息や、重いアレルギー症状が引き起こされた例が報告されている[4][5]。現在、ローヤルゼリーを含む健康食品に、喘息や食物アレルギーを持つ人へ飲用を控える表示が徹底されようになった。

一方、ローヤルゼリーのタンパク質をペプチドやアミノ酸に分解することによって、アレルギー症状の発症リスクが低くなることが報告されている[6][7]


ローヤルゼリーの歴史

ローヤルゼリーの研究は、ヨーロッパ各国で1900年代より本格的に行われるようになった。当時のローマ教皇が老衰による危篤状態に陥った際、主席侍医のバオルチー氏やパウロ・ニーハンス博士、ガレヤ・ジリシー博士らがローヤルゼリーを投与したところ、回復。1955年ローマで開催された国際医学会にて発表後、1958年、イタリア(ローマ)で開かれた第12回国際養蜂会議で、教皇自らミツバチを称えるスピーチを行った。

これをきっかけにローヤルゼリーが全世界に知れ渡ることとなるが、日本においては、1959年、週刊朝日に掲載された記事により、一般の人々の関心を集めることとなった[8]。また、同時期、「不老長寿の新薬」として輸入され始め、1960年、国内での計画生産が始まった[9]

ローヤルゼリーの作用

ローマ教皇の回復をきっかけとして、ローヤルゼリーの効能効果は全世界で認知され、世界各国の科学者達が研究を開始。これまでに様々な報告がなされている。

有効とする研究

冷え症

24名の若年女性を対象とした無作為化プラセボ対照試験によって、ローヤルゼリーによる冷え症改善効果が示されている。実際の試験では、20℃の冷水に1分間手を浸し、体温の回復をサーモグラフィーにより解析した結果、ローヤルゼリーを2週間摂取(2.8 g/day)した冷え症者の方が、デキストリン(プラセボ)を摂取した冷え症者よりも体温の回復が早いことが示されている[10]

肩こり

40~59歳の肩こり症状を自覚している健康な女性33名を対象としたプラセボ対照二重盲検試験にて、酵素分解したローヤルゼリー摂取による肩こり症状の軽減効果が示されている。試験では、デキストリン(プラセボ)あるいは酵素分解ローヤルゼリー(1200 mg)を4週間継続摂取し、肩こりの自覚症状と肩表面の血流・筋肉の硬度の変化を調べた結果、ローヤルゼリーを摂取した人の首筋のはりをやわらげ、肩こりの改善に効果があることが示されている[11] 。ただし、肩表面の血流には変化は見られなかった。

耳鳴り

24名の軽度の耳鳴り患者(30-75歳)を対象としたヒト臨床試験(非盲検試験)によって、ローヤルゼリー摂取による軽度の耳鳴り症状が軽減されることが明らかとなっている。試験では、耳鳴り自覚症状アンケートと聴力検査を組み合わせて解析したところ、高用量(2.8 g/day)のローヤルゼリーを8週間継続飲用した方が、低用量(0.7 g/day)摂取したときよりも耳鳴り症状が軽減することが示されている[12]

血圧改善作用

タンパク質分解酵素により分解したローヤルゼリーの血圧改善作用を調べるため、プラセボ対照二重盲検試験にて、血圧が高めもしくはやや高い30~40歳代の男女67名にタンパク質を分解したローヤルゼリーを毎日 500, 1000, 5000 mgまたはローヤルゼリーを含まないプラセボを 4週間食べてもらい、血圧、脈拍、体重、血液、尿の変化を調べた。結果、5000 mgのローヤルゼリーを食べたグループは、プラセボグループよりも血圧が低下し、改善したことが示された[13]

骨密度への作用

女性ホルモンの減少に起因する骨粗鬆症に対するローヤルゼリーの作用を調べるため、卵巣を取り出すことで女性ホルモンが分泌されないラットに、乾燥ローヤルゼリーあるいは酵素分解ローヤルゼリーを餌に2%混ぜて食べさせ、骨粗しょう症の予防効果を調べた。実験の結果、乾燥ローヤルゼリーあるいは酵素分解ローヤルゼリーを摂取させたラットでは、骨密度の減少が抑えられ、骨粗しょう症予防に効果があることが示された。さらに、酵素分解したローヤルゼリーの方がその作用は強いことも明らかとなった。また、乾燥ローヤルゼリーや酵素分解ローヤルゼリーは小腸でのカルシウム吸収を盛んにすることで、骨粗しょう症を予防する可能性も示されている[14]

インスリン抵抗性に対する作用

糖尿病の初期症状の一つであるインスリン抵抗性(血糖値を下げるインスリンが働きにくくなる状態)を示すモデル動物(FDR:糖負荷による糖尿病モデルラット、OLETF:遺伝的に糖尿病を発症するモデルラット)を用いた試験によって、ローヤルゼリーによるインスリン抵抗性の改善効果が明らかとなっている[15][16]

マウスの筋力に対する作用

19-20月齢の高齢マウスにローヤルゼリーを与えると、筋肉量の増加が見られ、その作用は、ローヤルゼリー投与量に依存して増加し、未酵素分解よりも酵素分解したローヤルゼリーで増加したとの報告がある。また、筋肉を損傷させた高齢マウスにおいても、ローヤルゼリーは筋肉細胞の増殖を促し、加齢による筋肉の衰えを軽減する可能性が示されている[17]

不定愁訴

内科治療中の外来及び入院患者27名にローヤルゼリーを追加投与して臨床効果を判定した結果、頭重、倦怠感、食欲不振、無気力などの不定期愁訴の改善にきわめて有効と報告されている[18]

コレステロールとの関連

複数の臨床試験の結果、ローヤルゼリーの摂取により血清中のコレステロールのレベルが減少し、心臓や血管の病気のリスクが低減したと報告されている[19][20]

抑うつとの関連

高温多湿によりストレスを与えたラットを用い、水中で動かなかった時間(無気力状態の時間)を測定したところ、ローヤルゼリーを与えていないラットでは215秒であったが、ローヤルゼリーを与えると188秒に短縮され、ストレスによる精神的疲労(無気力)の改善に有効との報告がある[21]

抗菌活性

ローヤルゼリーを-40℃、5℃、室温、37℃にて保存し、抗菌活性を測定したところ、保存温度が低いほど、また、新鮮であるほど抗菌活性が高いことが示された。また、室温や37℃であっても、10%以下の抗菌活性になることはなかった。抗菌活性成分を探索したところ、10-ヒドロキシ-2-デセン酸と10-ヒドロキシデカン酸であることが判明した[22]

脚注

  1. ^ 「ローヤルゼリーの表示に関する公正競争規約」(昭和54年9月25日公正取引委員会告示第27号)第2条(1)の定義
  2. ^ 「ローヤルゼリーの表示に関する公正競争規約」(昭和54年9月25日公正取引委員会告示第27号)第2条(2)の定義
  3. ^ 「ローヤルゼリーの表示に関する公正競争規約」(昭和54年9月25日公正取引委員会告示第27号)第2条(3)の定義
  4. ^ Bullock RJ, Rohan A, Straatmans JA (1994). “Fatal royal jelly-induced asthma”. Med. J. Aust. 160 (1): 44. PMID 8271989. 
  5. ^ “Asthma and anaphylaxis induced by royal jelly”. Thien FC, Leung R, Baldo BA, Weiner JA, Plomley R, Czarny D 26 (2): 216-222. (1996). PMID 8835130. 
  6. ^ 特許第3994120号
  7. ^ 柳原ら, 日本農芸化学会大会講演要旨集, p.161 (2008)
  8. ^ 鈴木 勲, “日本におけるローヤルゼリーの経緯について”,ミツバチ科学,7(3) : 105-108 (1986)
  9. ^ 小野保一,“ローヤル・ゼリーの生産について”,ミツバチ科学,3(1) : 11-14 (1982)
  10. ^ 山田典子、吉村裕之,“若年女性の冷え症に対するローヤルゼリー摂取の改善効果”,日本栄養・食糧学会誌, 63(6) p.271-278 (2010)
  11. ^ 立藤智基、浅間孝志、土井志真、菅野智子、橋本健,“肩こり症状に対するローヤルゼリー含有食品の改善作用-プラセボ対照二重盲検試験による検討―”,東方医学,26(1) p.55-64(2010)
  12. ^ 嶽 良博、奥野吉昭、沖原清司、橋本 健、榎本雅夫,“ローヤルゼリー含有食品による耳鳴症状の改善効果の検討試験”,応用薬理,75(5/6) p.109-116 (2008)
  13. ^ 梶本修身, 中妻章, 土井志真, 西村明, 梶本佳孝, 平田洋, “ローヤルゼリータンパク質加水分解物の正常高値血圧者および軽症高血圧者に対する降圧作用の検討”, 健康・栄養食品研究, 8(2) p.37-55 (2005)
  14. ^ Hidaka S, Okamoto Y, Uchiyama S, Nakatsuma A, Hashimoto K, Ohnishi ST, Yamaguchi M (2006). “Royal jelly prevents osteoporosis in rats: beneficial effects in ovariectomy model and in bone tissue culture model”. Evid. Based Complement. Alternat. Med. 3 (3): 339-348. PMC 1513150. PMID 16951718. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1513150/. 
  15. ^ Nomura M, Maruo N, Zamami Y, Takatori S, Doi S, Kawasaki H (2007). “Effect of long-term treatment with royal jelly on insulin resistance in Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty (OLETF) rats”. Yakugaku Zasshi 127 (11): 1877-1882. doi:10.1248/yakushi.127.1877. PMID 17978564. 
  16. ^ Royal jelly ameliorates insulin resistance in fructose-drinking rats. 31. (2008). pp. 2103-2107. doi:10.1248/bpb.31.2103. PMID 18981581. 
  17. ^ 牛凱軍、郭輝、崔宇飛、小林順敏、永富良一. “ローヤルゼリーの高齢マウスの筋衛星細胞の機能と増殖能への影響”, 第65回 日本体力医学会大会抄録 (2010)
  18. ^ 高須靖夫, 太田喜昭, “内科領域におけるローヤルゼリー散の臨床効果”, 診断と新薬, 12 (8) 47-54 (1975)
  19. ^ Vittek J. (1995). “Effect of royal jelly on serum lipids in experimental animals and humans with atherosclerosis”. Experientia 51 (9-10): 927-935. PMID 7556573. 
  20. ^ Guo H, Saiga A, Sato M, Miyazawa I, Shibata M, Takahata Y, Morimatsu F (2007). “Royal jelly supplementation improves lipoprotein metabolism in humans”. J. Nutr. Sci. Vitaminol. (Tokyo) 53 (4): 345-348. PMID 17934240. 
  21. ^ 池田勇五、鷲塚昌隆、古市浩康、福田陽一、桑原優, “ストレスとローヤルゼリー”, ミツバチ科学, 17(3): 103-110 (1996)
  22. ^ 八並一寿、越後多嘉志, “蜂蜜およびローヤル・ゼリーの抗菌作用”, ミツバチ科学, 5(3) : 125-130(1984)

関連項目

外部リンク