都市喜劇

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都市喜劇(としきげき、City comedy)または市民喜劇(しみんきげき、Citizen Comedy)とは、イギリス・ルネサンス演劇にありふれたジャンルであるが、研究者たちによってその定義は異なる。概ね、以下の二つのものを指す。

  1. ロンドンが舞台で、そこの日常生活を描いたエリザベス朝時代の喜劇。トマス・デッカー(Thomas Dekker)の『靴屋の祭日(The Shoemaker's Holiday)』(1600年出版)のような普通の市民の生活を賛美する作品が含まれる。
  2. ロンドンを罪の温床として風刺して描く喜劇。ベン・ジョンソンの『The Devil is an Ass』(1616年初演)や『癖者ぞろい(Every Man in His Humour)』 、トマス・ミドルトンの『ミクルマス開廷期(Michaelmas Term)』(1604年初演)や『チープサイドの貞淑な乙女(A Chaste Maid in Cheapside)』(1613年頃)、ジョン・マーストン(John Marston)の『Jack Drum's Entertainment』(1599年 - 1600年頃)など。

最初の都市喜劇は、1598年に海軍大臣一座(Admiral's Men)によって初演されたウィリアム・ホートン(William Haughton)の『Englishmen for My Money』と言われている。都市喜劇はたちまち大人気となった。その時まで劇場や宮廷・私邸で人気のあったウィリアム・シェイクスピアジョン・リリーの入り組んだ筋のロマンティック・コメディは、見てわかる当時のロンドンを舞台にした、ベン・ジョンソン曰く、「野郎が使うようなふるまいと言葉」(『癖者ぞろい』プロローグ)を扱ったこれらの劇に取って代わられた。

都市喜劇の作品では他に『Westward Ho』、『Eastward Hoe』、『Northward Ho』、『Greene's Tu Quoque』といったものがある。

都市喜劇は風習喜劇の前身と見なすことができる。

参考文献[編集]

日本語版テキスト[編集]

  • 古典劇集 靴屋の祭日・セビーリャの色事師 他(筑摩書房、筑摩世界文学大系89)
  • ベン・ジョンソン戯曲選集1 癖者ぞろい(訳:村上淑郎、国書刊行会
  • エリザベス朝喜劇10選 チープサイドの貞淑な乙女(訳:小野正和、早稲田大学出版部

外部リンク[編集]