穴子でからぬけ
穴子でからぬけ(あなごでからぬけ)は古典落語の演目のひとつ。別題は穴子のからぬけ(あなごのからぬけ)、あるいは省略してからぬけとも。主に東京落語で広く演じられる。
概要
[編集]与太郎が機知を見せる滑稽噺。原話は、1772年(明和9年)に出版された小咄本『楽牽頭』の一編「なぞ」。マクラを除くと口演時間が非常に短く、演者の持ち時間が少ない場合に演じられる「逃げ噺」のひとつとして知られる。
主な演者に、林家彦六、6代目三遊亭圓生、6代目三遊亭圓窓らが知られる。なお、この演目自体が別の演目のマクラに振られることも多く、4代目春風亭柳好にこの演目を『牛ほめ』のマクラとして演じた音源が残っている。
あらすじ
[編集]与太郎が源兵衛の家を訪ね、「俺がなぞなぞを出すから、源さんが答えられるかどうか賭けをして遊ぼう」と持ちかける。源兵衛はしぶしぶ応じ、ふたりで小銭を出し合う。
与太郎は「まっ黒で、大きくて、足が4本あって、角があって、『モー』と鳴くものは」と出題する。源兵衛はあまりに簡単な問題に拍子抜けし、すぐさま「牛」と答えて小銭を取る。次に、与太郎は「黒くて、くちばしがあって、空飛んで、『カアー』って鳴くものは」と出題する。源兵衛は「カラス」と答えて小銭を取る(※演者によっては、さらに数問のやり取りを演じる)。
納得がいかない様子の与太郎は、高額の紙幣を出し、「今度は難しいのを出すぞ」とすごむ。あきれた源兵衛は与太郎をいさめるが、結局は賭けに応じることにする。与太郎は「長いのも短いのもあって、太いのも細いのもあって、つかむとヌルヌルするものは」と問う。源兵衛は「俺が『ヘビ』と言ったらお前は『ウナギ』、『ウナギ』と言ったら『ヘビ』と言うんだろう」となじる。与太郎が「両方言ってもいいよ」と言うので、源兵衛は「ヘビとウナギだ」と答える。すると与太郎は、
「残念。『アナゴ』で、からぬけだ(=出し抜いてやった)」。
バリエーション
[編集]上記のストーリーからさらにつづける演じ方がある。
大金を取られて悔しがる源兵衛に、与太郎がまったく同じ問題を出す。源兵衛が「ヘビとウナギとアナゴ」と答えると、与太郎は「ズイキ(あるいは、長ネギ)の腐ったのだ」。
穴子でからぬけが初高座の落語家
[編集]出典・参考
[編集]- 武藤禎夫『定本 落語三百題』解説