穴どろ
穴どろ(あなどろ)は古典落語の演目。別名に穴庫の泥棒(あなぐらのどろぼう)、晦日の三両(みそかのさんりょう)[1]。大晦日に、さる大店の穴庫(穴倉、あなぐら)に忍び込んで見つかった泥棒を捕まえようとする滑稽噺。
原話は嘉永頃に出版された笑話本「今年はなし」の中の「どろ棒」[1]。かつては別題にもある『穴庫の泥棒』の題であったが、これが詰まって現在の題となった[1]。
主な演者には、8代目桂文楽や林家彦六、5代目古今亭志ん生などがいる。3代目春風亭柳好は最期に演じた。
あらすじ
[編集]大晦日、ある男は3両の金が工面できず、女房に家を追い出され金策に奔走していた。しかし、アテがあるわけでもなく、途方に暮れている。
男がとある商家の前にやってきた時、ちょうど店の若い衆が遊びに出て木戸を開けっ放しにしているところに出くわす。魔が差した男はそこからそっと邸内に入り、3両を盗もうと物色を始めた。宴会があったのか、酒や食べ物が散らかっており、これはいいとつまみ食いをしていると、子供が現れる。もともと子供好きであった男は子供をあやすが、そのうち、うっかりして土間の地面に掘られた穴倉に落ちた。
男が落ちた時の音を聞いて店の者がかけつけ、すぐに穴倉に泥棒が落ちたらしいことがわかる。晦日ゆえに早く対処したいが、泥棒を捕まえようにも穴倉は真っ暗でどんな奴かはわからない。店の旦那に呼ばれて腕に自信のある威勢のいい男が連れてこられるが、泥棒が「降りてくれば股を噛み付いてやる(または裂いてやる)」などと大きな声を挙げて威嚇してくるため尻込みしてしまう。旦那は泥棒を捕まえれば1両出すと発破をかけるが、男は首を縦に振らず、2両出すといっても態度は変わらない。仕方なく、旦那は「盗人に追い銭だ。3両出してやろう」と提案し、男は「3両なら降りてやる」と決心する。それを穴倉で聞いていた泥棒が言う。
「なに3両くれるのか? なら俺の方から上がってやる」
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c 東大落語会 1969, pp. 47–48, 『穴どろ』.
参考文献
[編集]- 東大落語会 (1969), 落語事典 増補 (改訂版(1994) ed.), 青蛙房, ISBN 4-7905-0576-6