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'''契約の自由'''(けいやくのじゆうとは当事者の[[自由]]な選択の結果であるかぎり[[裁判所]]などが[[契約]]に介入するべきではないという理念のこと<ref name=kusumoto>久須本かおり [http://hdl.handle.net/2237/5759 契約法理論の再構成を目指して(一)]名古屋大學法政論集. v.169, 1997, p.65-104</ref>。契約の自由は[[財産権]]などとともに[[経済的自由]]に分類される<ref>[[渡辺洋三]]『日本国憲法の精神』p69</ref><ref>[http://www.econlib.org/library/Enc/Competition.html Competition: The Concise Encyclopedia of Economics | Library of Economics and Liberty] by Wolfgang Kasper</ref>。
'''契約の自由'''(けいやくのじゆう、英: Freedom of contract)とは当事者の[[自由]]な選択の結果であるかぎり[[裁判所]]などが[[契約]]に介入するべきではないという理念のこと<ref name=kusumoto>久須本かおり [http://hdl.handle.net/2237/5759 契約法理論の再構成を目指して(一)]名古屋大學法政論集. v.169, 1997, p.65-104</ref>。契約の自由は[[財産権]]などとともに[[経済的自由]]に分類される<ref>[[渡辺洋三]]『日本国憲法の精神』p69</ref><ref>[http://www.econlib.org/library/Enc/Competition.html Competition: The Concise Encyclopedia of Economics | Library of Economics and Liberty] by Wolfgang Kasper</ref>。


契約の自由は18世紀から19世紀にかけての[[レッセフェール]]の考え方に基づいている<ref name=kusumoto/>。[[憲法]]上は、[[日本国憲法]]では個人の尊厳([[日本国憲法第13条|13条]])と財産権([[日本国憲法第29条|29条]])、[[ドイツ連邦共和国基本法]]では人間の尊厳(1条)、人格権(2条)、所有権(14条)が根拠となる{{sfn|小野秀誠|2008|pp=18}}。
契約の自由は18世紀から19世紀にかけての[[レッセフェール]]の考え方に基づいている<ref name=kusumoto/>。[[憲法]]上は、[[日本国憲法]]では個人の尊厳([[日本国憲法第13条|13条]])と財産権([[日本国憲法第29条|29条]])、[[ドイツ連邦共和国基本法]]では人間の尊厳(1条)、人格権(2条)、所有権(14条)が根拠となる{{sfn|小野秀誠|2008|pp=18}}。


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[[コモン・ロー]]では契約の自由が強く支持されており、法律が暗黙のうちに契約を縛ることが少ないのに対して、[[大陸法]]では法律が契約に制限を課すことが相対的に多い<ref name=keyfeatures>[http://ppp.worldbank.org/public-private-partnership/legislation-regulation/framework-assessment/legal-systems/common-vs-civil-law Key Features of Common Law or Civil Law Systems | Public Private Partnerships | World Bank] Last updated:April 19, 2015</ref>{{sfn|小野秀誠|2008|p=54}}。コモン・ローでも[[消費者]]保護のための制限などは法律によって契約に課されうる<ref name=keyfeatures/>。[[ヨーロッパ連合]]は各種[[指令 (EU)|指令]]を通じて弱者保護のための契約の無効化などを定めており、域内の各国では契約の自由を限定する[[パターナリズム]]的傾向が強まりつつある{{sfn|小野秀誠|2008|pp=45}}。

==構成要素==
== 構成要素 ==
日本の民法では
日本の民法では
# 契約を締結するかしないかの自由
# 契約を締結するかしないかの自由
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# 契約の方式の自由
# 契約の方式の自由
があると解されている<ref>「http://www.moj.go.jp/content/000098946.pdf 民法(債権関係)部会資料41 民法(債権関係)の改正に関する論点の検討(13)」[http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900136.html 法制審議会民法(債権関係)部会第48回会議(平成24年6月5日開催)]法制審議会 - 民法(債権関係)部会</ref>。
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==出典==
== 出典 ==
<references/>
<references/>
*{{cite|和書|author=[[小野秀誠]]|date=2008-03-10|title=契約の自由と当事者の地位 : 契約と基本権|journal=一橋法学|volume=7|issue=1|url=http://hdl.handle.net/10086/15656}}
*{{cite|和書|author=[[小野秀誠]]|date=2008-03-10|title=契約の自由と当事者の地位 : 契約と基本権|journal=一橋法学|volume=7|issue=1|url=http://hdl.handle.net/10086/15656}}

2019年11月4日 (月) 06:16時点における版

契約の自由(けいやくのじゆう、英: Freedom of contract)とは当事者の自由な選択の結果であるかぎり裁判所などが契約に介入するべきではないという理念のこと[1]。契約の自由は財産権などとともに経済的自由に分類される[2][3]

契約の自由は18世紀から19世紀にかけてのレッセフェールの考え方に基づいている[1]憲法上は、日本国憲法では個人の尊厳(13条)と財産権(29条)、ドイツ連邦共和国基本法では人間の尊厳(1条)、人格権(2条)、所有権(14条)が根拠となる[4]

コモン・ローでは契約の自由が強く支持されており、法律が暗黙のうちに契約を縛ることが少ないのに対して、大陸法では法律が契約に制限を課すことが相対的に多い[5][6]。コモン・ローでも消費者保護のための制限などは法律によって契約に課されうる[5]ヨーロッパ連合は各種指令を通じて弱者保護のための契約の無効化などを定めており、域内の各国では契約の自由を限定するパターナリズム的傾向が強まりつつある[7]

構成要素

日本の民法では

  1. 契約を締結するかしないかの自由
  2. 契約相手を選択する自由
  3. 契約の内容決定の自由
  4. 契約の方式の自由

があると解されている[8]

出典

  1. ^ a b 久須本かおり 契約法理論の再構成を目指して(一)名古屋大學法政論集. v.169, 1997, p.65-104
  2. ^ 渡辺洋三『日本国憲法の精神』p69
  3. ^ Competition: The Concise Encyclopedia of Economics | Library of Economics and Liberty by Wolfgang Kasper
  4. ^ 小野秀誠 2008, pp. 18.
  5. ^ a b Key Features of Common Law or Civil Law Systems | Public Private Partnerships | World Bank Last updated:April 19, 2015
  6. ^ 小野秀誠 2008, p. 54.
  7. ^ 小野秀誠 2008, pp. 45.
  8. ^ http://www.moj.go.jp/content/000098946.pdf 民法(債権関係)部会資料41 民法(債権関係)の改正に関する論点の検討(13)」法制審議会民法(債権関係)部会第48回会議(平成24年6月5日開催)法制審議会 - 民法(債権関係)部会