「実用新案権」の版間の差分

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==平成六年改正後の実用新案の問題点==
==平成六年改正後の実用新案の問題点==
現行[[実用新案法]]は平成5年に改正され、平成6年1月から施行されたものである。ドイツ実用新案法にならって改正前に実施された実体審査を省略して、ライフサイクルの短い商品の実用新案権保護を図ることが主目的であったが、実際は目的どおりの権利保護としては殆ど機能せず、かえって以下の問題を生じ、[[中小企業]]の[[知的財産権]]保護に悪影響を及ぼしている。
現行[[実用新案法]]は平成5年に改正され、平成6年1月から施行された条文が基本となっている。ドイツ実用新案法にならって改正前に実施された実体審査を省略して、ライフサイクルの短い商品の実用新案権保護を図ることが主目的であったが、実際は目的どおりの権利保護としては殆ど機能せず、かえって以下の問題を生じ、[[中小企業]]の[[知的財産権]]保護に悪影響を及ぼしている。
*平成5年は[[実用新案法]]の改正と共に、[[特許法]]も補正時の新規事項追加の禁止といった改正が行われ、完全な先行調査を行う資力のない[[中小企業]]が先出願主義に基づいて明細書を作成、出願し、その後に発見された先行技術に基づいて要旨変更を伴わない補正を行うことが困難になったため、かえって負担になった。
*平成5年は[[実用新案法]]の改正と共に、[[特許法]]も補正時の新規事項追加の禁止といった改正が行われ、完全な先行調査を行う資力のない[[中小企業]]が先出願主義に基づいて明細書を作成、出願し、その後に発見された先行技術に基づいて要旨変更を伴わない補正を行うことが困難になったため、かえって負担になった。
*[[特許]]も審査請求期間の短縮や早期審査制度の実施で公開前に登録されるケースも出たため、ライフサイクルの短い商品でも特許での権利保護が容易になって、存在価値が無くなる傾向にあること。
*[[特許]]も審査請求期間の短縮や早期審査制度の実施で公開前に登録されるケースも出たため、ライフサイクルの短い商品でも特許での権利保護が容易になって、存在価値が無くなる傾向にあること。
*実体審査が行われなくなったことで、実用新案登録が容易になり、実用新案法改正に無知な中小企業が民暴による恐喝の被害にあっていること。
*実体審査が行われなくなったことで、実用新案登録が容易になり、実用新案法改正に無知な中小企業が民暴による恐喝の被害にあっていること。
このため、ドイツ実用新案制度にならった実体審査省略は日本の産業国情になじまず、平成5年改正前のように実体審査を復活して、むしろ、[[職務発明]]の条文の有無、海外優先権行使の有無、補正条件の難易(平成5年改正前のように要旨変更を伴わなければ補正を制限しない)、海外への漏洩防止を目的とした登録までの非公開、といった条項で[[特許法]]との格差をつけるべきという意見がある。
このため、ドイツ実用新案制度にならった実体審査省略は日本の産業国情にはかえってなじまず、平成5年改正前のように実体審査を復活して、むしろ、[[職務発明]]の条文の有無、海外優先権行使の有無、補正条件の難易(平成5年改正前のように要旨変更を伴わなければ補正を制限しない)、海外への漏洩防止を目的とした登録もしくは未審査確定までの非公開、かつて条文にあった出願の放棄を認めるといった条項で[[特許法]]との格差をつけ、改良技術の考案を主力とし、日本国内向けのみに販売する[[中小企業]]の[[知的財産権]]保護に役立てるべきという意見がある。


[[Category:知的財産権|しつようしんあんけん]]
[[Category:知的財産権|しつようしんあんけん]]

2006年1月7日 (土) 19:52時点における版

実用新案権(じつようしんあんけん)とは、物品の形状等に関する考案に対して保護される知的財産権であり、実用新案法によって規定される産業財産権でもある。
以下、日本での実用新案権に関して記述する。

実用新案権の成立要件

  • 自然法則による技術の創作であること。特許と違い、「高度」さは求められない。
  • 物品の形状に関する考案であること。

実用新案権の行使

特許法と同じく、実用新案の登録により、実用新案登録者は実施権を有し、差止請求権や損害賠償請求権を有する。
但し、権利行使には、特許庁作成の「実用新案評価書」の添付が必要である。
また、登録された実用新案が公知技術の場合は、権利行使者が損害賠償の義務を負う。この損害賠償は免責されないので、権利行使には慎重な調査を要する。

平成六年改正後の実用新案の問題点

現行実用新案法は平成5年に改正され、平成6年1月から施行された条文が基本となっている。ドイツ実用新案法にならって改正前に実施された実体審査を省略して、ライフサイクルの短い商品の実用新案権保護を図ることが主目的であったが、実際は目的どおりの権利保護としては殆ど機能せず、かえって以下の問題を生じ、中小企業知的財産権保護に悪影響を及ぼしている。

  • 平成5年は実用新案法の改正と共に、特許法も補正時の新規事項追加の禁止といった改正が行われ、完全な先行調査を行う資力のない中小企業が先出願主義に基づいて明細書を作成、出願し、その後に発見された先行技術に基づいて要旨変更を伴わない補正を行うことが困難になったため、かえって負担になった。
  • 特許も審査請求期間の短縮や早期審査制度の実施で公開前に登録されるケースも出たため、ライフサイクルの短い商品でも特許での権利保護が容易になって、存在価値が無くなる傾向にあること。
  • 実体審査が行われなくなったことで、実用新案登録が容易になり、実用新案法改正に無知な中小企業が民暴による恐喝の被害にあっていること。

このため、ドイツ実用新案制度にならった実体審査省略は日本の産業国情にはかえってなじまず、平成5年改正前のように実体審査を復活して、むしろ、職務発明の条文の有無、海外優先権行使の有無、補正条件の難易(平成5年改正前のように要旨変更を伴わなければ補正を制限しない)、海外への漏洩防止を目的とした登録もしくは未審査確定までの非公開、かつて条文にあった出願の放棄を認めるといった条項で特許法との格差をつけ、改良技術の考案を主力とし、日本国内向けのみに販売する中小企業知的財産権保護に役立てるべきという意見がある。