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[[1985年]]に発表された[[Intel 80386]]によって、[[1986年]]以降、従来16ビット幅の汎用データバスを使用していた[[IBM]] [[PC/AT]]やNECの[[PC-9800シリーズ]]といったx86系プロセッサ搭載パーソナルコンピュータにおいては、汎用データバスおよびそれを用いる拡張スロットの32ビット化が喫緊の課題となりつつあった。
[[1985年]]に発表された[[Intel 80386]]によって、[[1986年]]以降、従来16ビット幅の汎用データバスを使用していた[[IBM]] [[PC/AT]]やNECの[[PC-9800シリーズ]]といったx86系プロセッサ搭載パーソナルコンピュータにおいては、汎用データバスおよびそれを用いる拡張スロットの32ビット化が喫緊の課題となりつつあった。


この問題は、一旦は[[コンパック]]などによる、32ビット化する範囲をメモリやチップセットといったメインボード上のローカルなバスに留め、外部拡張スロットには従来通りの16ビット幅のデータバスを利用する手法で問題の先送りが図られたが、将来のオペレーティングシステムやアプリケーションソフトの必要メモリ量の増加を考えた場合、未来のいずれかの時点で汎用データバス規格を変更し、32ビット化する必要があることは明らかであった。
この問題は、一旦は[[コンパック]]などによる、32ビット化する範囲をメモリやチップセットといったメインボード上のローカルなバスに留め、外部拡張スロットには従来通りの16ビット幅のデータバスを利用する手法で問題の先送りが図られたが、将来のオペレーティングシステムやアプリケーションソフトの必要メモリ量の増加、それに拡張バスに接続される各種デバイスの性能向上を考えた場合、未来のいずれかの時点で汎用データバス規格を変更し、より高速かつ高機能な32ビットバス化する必要があることは明らかであった。


この問題については、欧米で一般に使用されていたPC/ATの生みの親であり、当時PCの各種規格についての決定権を事実上独占していたIBMの動きが注目された。
この問題については、欧米で一般に使用されていたPC/ATの生みの親であり、当時PCの各種規格についての決定権を事実上独占していたIBMの動きが注目された。
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そもそもコンパックなどが自社製品へのIntel 80386採用に際し、高速化の恩恵の及ぶ範囲が狭いローカルバス方式を採用したのも、PC/ATのオリジネイターであるIBMが汎用32ビットバスを制定しておらず、また独自の32ビットバスを採用した場合には、後からIBMがそれとは互換性のない汎用32ビットバス規格を制定した場合、自社で制定した独自32ビットバスが孤立する危険性が極めて高いためであった。
そもそもコンパックなどが自社製品へのIntel 80386採用に際し、高速化の恩恵の及ぶ範囲が狭いローカルバス方式を採用したのも、PC/ATのオリジネイターであるIBMが汎用32ビットバスを制定しておらず、また独自の32ビットバスを採用した場合には、後からIBMがそれとは互換性のない汎用32ビットバス規格を制定した場合、自社で制定した独自32ビットバスが孤立する危険性が極めて高いためであった。


だが、そうして[[1987年]]にIBMがPC/ATの後継機種として満を持して発表した[[IBM PS/2|PS/2]]と、それに採用された[[Micro Channel Architecture|MCA]]と呼ばれる新しい汎用32ビットバス規格は、PC/AT互換機を製造していた多くのメーカーに拒絶反応を示させるものであった。
だが、[[1987年]]にIBMがPC/ATの後継機種として満を持して発表した[[IBM PS/2|PS/2]]と、それに採用された[[Micro Channel Architecture|MCA]]と呼ばれる新しい汎用32ビットバス規格は、PC/AT互換機を製造していた多くのメーカーに拒絶反応を示させるものであった。


なぜならMCAはIBMが保有する多数の特許によって保護され、互換機メーカー各社がIBMからのライセンス取得なしに製造できないようになっていたためである。
なぜならMCAはIBMが保有する多数の特許によって保護され、互換機メーカー各社がIBMからのライセンス取得なしに製造できないようになっていたためである。
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*各拡張ボードおよび周辺デバイスにはインテリジェントコントローラが搭載され、高度なバス調停機能と、NESA-FOと呼ばれるリソース自動設定機能を備える。
*各拡張ボードおよび周辺デバイスにはインテリジェントコントローラが搭載され、高度なバス調停機能と、NESA-FOと呼ばれるリソース自動設定機能を備える。
*[[レベルトリガ]][[割り込み]]機能を持ち、各種デバイス間で割り込み信号線の共有が可能。
*[[レベルトリガ]][[割り込み]]機能を持ち、各種デバイス間で割り込み信号線の共有が可能。
*180本の接点で構成され、データ信号線3 - 4本おきに1つGNDと+5Vを配置、ノイズが発生しやすいクロック端子の脇はGND線で固めるなど、電気的に非常によく考えられた、ノイズに強い構造になっている。
*180本の接点で構成され、データ信号線3 - 4本おきに1つGNDと+5Vを配置、ノイズが発生しやすいクロック端子の脇はGND線を置いて他の信号線との干渉を避けるなど、電気的に非常によく考えられた、ノイズ性能の高い構造になっている。
*32ビットのアドレス空間、データバス幅を有する。
*32ビットのアドレス空間、データバス幅を有する。
*8MHzで駆動され、33Mbytes/secの理論最大転送帯域を有する。
*8MHzで駆動され、33Mbytes/secの理論最大転送帯域を有する。
*拡張ボード基板寸法は奥行き17cm、幅15cmの長方形で、部品実装面の厚さは最大2.5cmが許容されている。
*拡張ボード基板寸法は奥行き17cm、幅15cmの長方形で、部品実装面の厚さは最大2.5cmが許容されている。
*[[Cバス]]スロットの間に専用の32ビットバスコネクタを持ち、Cバスボードとの互換性は全くないものの、同一拡張スロットを使用することが可能な構造になっている。90個の接点を持つ矩形のコネクタ2つを並べ、後に開発された[[98ローカルバス]]において全く同じ形状のコネクタが使用されているが、それとの電気的な相互互換性は無い。
*上下の[[Cバス]]スロットの間の隙間に配置する形で専用の32ビットバスコネクタ(Eバスコネクタ)を持ち、Cバスボードとの互換性は全くないものの、同一拡張スロットを排他利用することが可能な構造になっている。90個の接点を持つ矩形のコネクタ2つを並べ、後に開発された[[98ローカルバス]]において全く同じ形状のコネクタが使用されているが、それとの電気的な相互互換性は無い。
*筐体を開けずに抜き差しできるようにブラケット部には引き抜き用のレバーが装着されている。
*筐体を開けずに抜き差しできるようにブラケット部には引き抜き用のレバーが装着されている。



2011年5月4日 (水) 13:19時点における版

New Extend Standard Architecture (NESA)は、E-BUSとも略され、1990年に発売された、日本電気 (NEC) のPC-H98シリーズに搭載された32ビット高速バスである。

SV-H98シリーズや、同社のN5200シリーズ等にも用いられたが、それ以外での採用例は無い。

開発経緯

1985年に発表されたIntel 80386によって、1986年以降、従来16ビット幅の汎用データバスを使用していたIBM PC/ATやNECのPC-9800シリーズといったx86系プロセッサ搭載パーソナルコンピュータにおいては、汎用データバスおよびそれを用いる拡張スロットの32ビット化が喫緊の課題となりつつあった。

この問題は、一旦はコンパックなどによる、32ビット化する範囲をメモリやチップセットといったメインボード上のローカルなバスに留め、外部拡張スロットには従来通りの16ビット幅のデータバスを利用する手法で問題の先送りが図られたが、将来のオペレーティングシステムやアプリケーションソフトの必要メモリ量の増加、それに拡張バスに接続される各種デバイスの性能向上を考えた場合、未来のいずれかの時点で汎用データバス規格を変更し、より高速かつ高機能な32ビットバス化する必要があることは明らかであった。

この問題については、欧米で一般に使用されていたPC/ATの生みの親であり、当時PCの各種規格についての決定権を事実上独占していたIBMの動きが注目された。

そもそもコンパックなどが自社製品へのIntel 80386採用に際し、高速化の恩恵の及ぶ範囲が狭いローカルバス方式を採用したのも、PC/ATのオリジネイターであるIBMが汎用32ビットバスを制定しておらず、また独自の32ビットバスを採用した場合には、後からIBMがそれとは互換性のない汎用32ビットバス規格を制定した場合、自社で制定した独自32ビットバスが孤立する危険性が極めて高いためであった。

だが、1987年にIBMがPC/ATの後継機種として満を持して発表したPS/2と、それに採用されたMCAと呼ばれる新しい汎用32ビットバス規格は、PC/AT互換機を製造していた多くのメーカーに拒絶反応を示させるものであった。

なぜならMCAはIBMが保有する多数の特許によって保護され、互換機メーカー各社がIBMからのライセンス取得なしに製造できないようになっていたためである。

しかもこのMCAは従来のISAスロットに対する下方互換性を一切切り捨てることで高性能化を実現しており、更にそのライセンス供与に当たってIBMは互換機メーカー各社に対し、各社が販売したPC互換機全てについて過去に遡って高額のライセンス料支払いに応じることを許諾条件の一つとして提示した。

これはIBM製品に対する価格面での優位性によって市場での競争力を得ていた互換機メーカー各社にとって到底許容できる条件ではなく、またMCAの採用は、既存のISA用拡張カードを購入した顧客の利便性を損なうことを意味していた。

このため、ごく一部のメーカーはMCAのライセンスを取得し、実際にもMCAを搭載するマシンを製造販売したものの、1987年当時アメリカ市場において有力であった大手PC/AT互換機メーカー9社、具体的にはAST Research、セイコーエプソンヒューレットパッカード、NEC、オリベッティタンディ・ラジオシャック、Wyse、Zenith Data Systemsの各社は、この条件提示に応じることを拒否し、各社で協議の上、MCAに対抗可能でなおかつ従来のISAに対する上位互換性を備えた新しい汎用32ビットバス規格の開発に乗り出し、IBMとは異なる道を進むことを決断した。

こうしてMCAに対抗するEISAが誕生し、アメリカのPC市場では一時MCAとEISAの激しい競争が起きた。

これに対し、日本国内のPC市場においてIBM PC/ATと同様の地位を占め、やはり同様に汎用データバスの32ビット化問題を抱えていたNECのPC-9800シリーズの場合は、やや事情が異なっていた。規格のオリジネイターであるNECが、アメリカ市場では互換機メーカーとしてEISAの開発に携わるという一種のねじれが生じていたためである。

NECはPC-9800シリーズ用の汎用32ビットバスを開発するに当たって、EISAに似たバス調停機能とリソース設定機能を備えつつし、EISAの欠点であったISA上位互換を実現するための非合理的な信号線配置については、Cバスとは全く異なる新型コネクタを採用することで克服するという、巧妙かつ中庸を得たデザインを採用した。それはEISAとMCAの双方について知悉し、またインテリジェント・コントローラを自社で開発する技術力のあるNECだからこそ実現可能なアーキテクチャであった。

こうして、EISAから遅れること約1年、1990年1月に発表された高価なハイレゾグラフィック機能に対応するPC-H98 model 70に搭載される形で、NESAは市場デビューを果たした。

規格

  • 各拡張ボードおよび周辺デバイスにはインテリジェントコントローラが搭載され、高度なバス調停機能と、NESA-FOと呼ばれるリソース自動設定機能を備える。
  • レベルトリガ割り込み機能を持ち、各種デバイス間で割り込み信号線の共有が可能。
  • 180本の接点で構成され、データ信号線3 - 4本おきに1つGNDと+5Vを配置、ノイズが発生しやすいクロック端子の脇にはGND線を置いて他の信号線との干渉を避けるなど、電気的に非常によく考えられた、耐ノイズ性能の高い構造になっている。
  • 32ビットのアドレス空間、データバス幅を有する。
  • 8MHzで駆動され、33Mbytes/secの理論最大転送帯域を有する。
  • 拡張ボード基板寸法は奥行き17cm、幅15cmの長方形で、部品実装面の厚さは最大2.5cmが許容されている。
  • 上下のCバススロットの間の隙間に配置する形で専用の32ビットバスコネクタ(Eバスコネクタ)を持ち、Cバスボードとの互換性は全くないものの、同一拡張スロットを排他利用することが可能な構造になっている。90個の接点を持つ矩形のコネクタ2つを並べ、後に開発された98ローカルバスにおいて全く同じ形状のコネクタが使用されているが、それとの電気的な相互互換性は無い。
  • 筐体を開けずに抜き差しできるようにブラケット部には引き抜き用のレバーが装着されている。

関連項目