「持分法」の版間の差分

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===手続===
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====のれん====
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[[のれん代|のれん]](または負ののれん)は、(通常の連結と異なり、)仕訳上あるいは財務諸表上では表示しない、認識する(連結調整勘定や評価差額は廃止)。償却も行う(これは財務諸表では他の投資損益とともに表示される)。
[[のれん代|のれん]](または負ののれん)は、(通常の連結と異なり、)仕訳上あるいは財務諸表上では表示しない。しかし、認識する。償却も行う(これは仕訳も行い、連結損益計算書に、他の持分法による投資損益とともに一括して表示される)。

認識と償却は、通常の連結と全く同じ手順を取る(そのため純利益/純損失額は通常の連結と同じとなる)。

のれん・負ののれんは、かつて連結調整勘定という勘定科目だった。

====資産等時価評価について====
====資産等時価評価について====
*B社株式取得時に、B社の資産・負債をすべて時価再評価する(これは連結会計をとったときも持分法会計をとったときも同じ)。しかし、株式取得時には、持分法会計では時価評価を財務諸表に反映させない。のれんを算出するためだけに時価評価を行う。
*B社株式取得時に、B社の資産・負債をすべて時価再評価する(これは連結会計をとったときも持分法会計をとったときも同じ)。しかし、株式取得時には、持分法会計では時価評価を財務諸表に反映させない。のれんを算出するためだけに時価評価を行う。

2009年5月4日 (月) 22:54時点における版

持分法(もちぶんほう , 英 equity method)とは、会計学ないし会計実務の用語のひとつで、投資会社が被投資会社の資本及び損益のうち投資会社に帰属する部分の変動に応じて、その投資の額を連結決算日ごとに修正する方法である。具体的手法は企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」及び実務対応報告第24号「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」に全面的に準拠する。

金融商品取引法会計では、連結会計が本則である。これは、会社が、自己の企業集団の財政・経営成績を報告するものである。ここには当該会社が多数株主として支配する連結子会社が含まれる。しかしそれだけではとどまらない。当該会社の投資先であり、少数株主であっても自社が影響力を及ぼしている会社(「関連会社」)の経営成績は、やはり当該会社(親会社)の業績として連結会計において報告されるべきである。そのための手法が持分法である。

乱暴に一言で言うと、持分法とは「会社が、自己の関連会社利益・損失を、自社の連結財務諸表に載せるための手法」である。

会社(仮にA社とする)が、他の会社(仮にB社とする)の株式を取得して関連会社とし持分法を適用すると仮定する。A社の個別財務諸表(個別貸借対照表)にはB社株式が載る(勘定項目は「投資」または「B社株式」)。B社株式は関連会社株式なので時価会計は全く適用されないでずっと取得原価のままである(ただし強制評価減はある)。これは個別財務諸表の世界である。

A社の連結財務諸表でも、B社株式は、その取得時のみ個別財務諸表と同じ価額が付される。連結財務諸表では、時価会計に晒されない代わりに、B社の年度ごと個別損益を(A社の連結財務諸表に)反映させる。そのための手法が持分法である。具体的には、B社の損益(のうちA社持分割合相当額)が、「投資(B社株式)」の価額自体の増減となって現れる。また、その増減額は「持分法による投資利益/損失」として連結損益計算書上に載る。

連結会計と持分法会計は異なるものだが、A社の連結損益計算書の当期純利益/損失は、連結会計をとったときも持分法会計をとったときも必ず一致する(一致させるような会計手法をとる)。そのため、理論上は、通常の連結会計を「フル連結(全連結)」、持分法会計を「一行連結純額連結)」という異名がある。持分法会計では上記のように勘定科目は2つ(利益/損失を同一科目とした場合)のみで、連結財務諸表における毎期の仕訳は2つの勘定科目による一行のみで終わってしまうからである。一行連結といわれる所以である(その一行の額を導き出すために仕訳外で多くの作業がある)。なお、B社の稼得した損益は(連結会計と同様に)A社連結財務諸表に反映されるが、B社の資産・債務、売上高等はまったく反映されない(B社資産等はA社連結財務諸表には載らない)。純利益/損失のみを純額で反映させるだけである。純額連結といわれる所以である。

B社株式を増減させるすべての収益・費用損失は、どんなものであっても持分法による投資利益/損失という科目となる(ただし、ダウンストリームのみA社売上の修正となるほか税効果会計で使用する科目も使われる)。

また持分法会計は連結キャッシュフロー計算書にはまったく影響を及ぼさない。

通常の連結との異同

通常の連結との異同は次の通り。

手続

のれん

のれん(または負ののれん)は、(通常の連結と異なり、)仕訳上あるいは財務諸表上では表示しない。しかし、認識する。償却も行う(これは仕訳も行い、連結損益計算書に、他の持分法による投資損益とともに一括して表示される)。

認識と償却は、通常の連結と全く同じ手順を取る(そのため純利益/純損失額は通常の連結と同じとなる)。

のれん・負ののれんは、かつて連結調整勘定という勘定科目だった。

資産等時価評価について

  • B社株式取得時に、B社の資産・負債をすべて時価再評価する(これは連結会計をとったときも持分法会計をとったときも同じ)。しかし、株式取得時には、持分法会計では時価評価を財務諸表に反映させない。のれんを算出するためだけに時価評価を行う。
  • その場合、関連会社の持分法会計では理論上必ず部分時価評価法を適用する。通常の連結とまったく異なる点である。

その他

  • 必要な会計手続は、純利益/損失に影響のある部分だけである。すなわち
必要な修正手続
  • B社からA社への剰余金配当 - 通常の連結と同じく消去
  • A社・B社間の商品売買取引は、どちらも税効果会計を適用して
    • ダウンストリームではA社売上を
    • アップストリームではA社商品を それぞれ修正する。

(アップストリームでは税効果会計を適用するが税効果会計の科目は使わない)

  • 在外関連会社への外為会計(通貨換算) - 通常の連結と同じ。すなわち資産・負債はCR、資本金・利益剰余金はHR、P/Lと当期純利益は親会社との取引を除き原則AR(容認CR)。
行わない修正手続

いずれも貸借対照表にかかわるもので

  • 内部取引高相殺
  • 両社間債権債務相殺
  • 貸倒引当金修正
  • 手形関係の修正仕訳

等が不要となる。

共同支配企業の特則

共同支配企業に対しては、以下の特則がある。共同支配企業の形成にあたり、共同支配企業に対する共同支配投資企業の持分の増加額と、移転した事業に係る共同支配投資企業の持分の減少額との間に生ずる差額を処理しない。

項目

持分法による投資利益/損失は、それがいかなる起因であっても(経常性がなくても)、必ず、営業外収益/費用となる。

対象

財務諸表

持分法会計にあっては、B社の直近の財務諸表を無条件で使用する。通常の連結会計にあっては別のルールがあるのと対照的である(決算日のずれが3ヶ月を越えない限りは~)。ただし決算日差異の期間内に重要な取引又は事象が発生しているときには、必要な修正又は注記を行うので、実質的にはあまり変わらない。

A・B両社が採用する会計処理の原則及び手続は、原則として統一する。

対象となる会社

  • 子会社のうち(例外的に)連結対象にならなかったもの(「非連結子会社」)
  • 関連会社

の2つである(よって子会社は、連結対象になるか持分法対象になるかいずれかとなる)。

どれが関連会社・子会社になるかは、ともに実質基準(関連会社は影響力基準、子会社は支配力基準)で判定されることは言うまでもない。

附論

国際会計基準では、ジョイントベンチャー合弁会社)については比例連結(proportionate consolidation)の適用が認められているが、日本では認めていない。その理由は、混然一体となっている合弁会社の資産、負債等を一律に持分比率で按分して連結財務諸表に計上することは不適切であるからである。

関連項目