「適応度」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
VolkovBot (会話 | 投稿記録)
m ロボットによる 追加: ca:Aptitud (biologia)
DragonBot (会話 | 投稿記録)
m ロボットによる 追加: et:Kohasus
38行目: 38行目:
[[en:Fitness (biology)]]
[[en:Fitness (biology)]]
[[es:Aptitud (biología)]]
[[es:Aptitud (biología)]]
[[et:Kohasus]]
[[fi:Kelpoisuus]]
[[fi:Kelpoisuus]]
[[fr:Valeur sélective]]
[[fr:Valeur sélective]]

2008年10月18日 (土) 20:43時点における版

適応度(てきおうど、英語fitness)は生物学、とくに集団遺伝学など数理生物学分野で用いられる語である。

字義通りに理解すれば、その生物個体がどれほどその生活する環境に適応しているかを示す値である。しかし、これには出産数や出産間隔など直接的に繁殖に関わる特性だけでなく筋力や視力、体の大きさといった多くの特性も間接的に関わってくる。このことから、適応度はその個体が生物として繁栄していく能力を総体として捉えるための概念として用いられている。

より理論的な定義としては、一般的には自然選択説の考えに立ち、より多く子供を残すものが進化に勝ち残るのだから、「ある生物個体がその生涯で生んだ次世代の子のうち、繁殖年齢まで成長できた子の数」となる。通常はこの定義を一次近似として用いる。このように子の実数で表す適応度のことを絶対適応度と呼ぶ。個体数が安定した環境では、平均的な絶対適応度は1である。しかし繁殖戦略によっては、次世代の子供の数が同じでも孫の数に差が出ることもある(フィッシャーの原理も参照せよ)。そのためより正確な(厳密ではないが)表現としては「十分遠い将来のある世代に残った子孫の数」と言うことができる。

数学的な定義では「ある形質をもたらす対立遺伝子(進化ゲーム理論のばあいは戦略)が集団中に広まる速度」と言うことができる。たとえば二組のカップルがおり、一方が遺伝子Xの影響で生涯に6匹の子をもうけたとする。もう一方は対立遺伝子Yの影響によって生涯に4匹の子をもうけたとする。この群れの平均産子数は(4+6)/2=5であり、Xの適応度は6/5=1.2となる。Yの適応度は4/5=0.8となる。この値を相対適応度と呼び、集団遺伝学、生態学などで通常用いられるのは相対適応度である。集団全体の相対適応度は常に1である。そのため相対適応度が1であればその遺伝子は広まりも減りもしないが、1より小さければ集団内で次第に数を減らし、1より大きければ次第に数を増す。値が大きければ大きいほど急速に広まる。この例ではXが増してゆく。

適応度をある個体の子孫だけでなくその親族、あるいは同じ対立遺伝子を持つ可能性のある他個体にまで広げたものを包括適応度と言う。社会性行動の進化を扱うさいには包括適応度を用いなければならない。この場合は通常、子にも包括適応度における血縁度の計算が適用される(有性生殖では子の遺伝的価値は親の半分であり、親子の進化的対立の原因である)。

適応度の概念を提唱し、数学的なモデルとして構築したのは集団遺伝学者ロナルド・フィッシャーJ・B・S・ホールデンシュワール・ライトらであった。W.D.ハミルトンはこれを拡張して包括適応度を提唱した。さらに後年、G.プライスの共分散則を取り入れて、包括適応度を親族以外にも適用できる概念へと拡張した。


文献

  • Haldane, J.B.S. (1924) "A mathematical theory of natural and artificial selection" Part 1 Transactions of the Camrbidge philosophical society: 23: 19-41 link (pdf file)
  • Hamilton, W.D. (1964) "The evolution of social behavior" Journal of Theoretical Biology 1:...

関連記事

外部リンク