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2008年6月29日 (日) 00:05時点における版

適応度(てきおうど、英語fitness)は生物学、とくに集団遺伝学など数理生物学分野で用いられる語である。

字義通りに理解すれば、その生物個体がどれほどその生活する環境に適応しているかを示す値である。しかし、これには出産数や出産間隔など直接的に繁殖に関わる特性だけでなく筋力や視力、体の大きさといった多くの特性も間接的に関わってくる。このことから、適応度はその個体が生物として繁栄していく能力を総体として捉えるための概念として用いられている。

より理論的な定義としては、一般的には自然選択説の考えに立ち、より多く子供を残すものが進化に勝ち残るのだから、「ある生物個体がその生涯で生んだ次世代の子のうち、繁殖年齢まで成長できた子の数」となる。通常はこの定義を一次近似として用いる。しかし繁殖戦略によっては、次世代の子供の数が同じでも孫の数に差が出ることもある。そのためより正確な(厳密ではないが)表現としては「十分遠い将来のある世代に残った子孫の数」と言うことができる。

数学的な定義では「ある形質をもたらす対立遺伝子(進化ゲーム理論のばあいは戦略)が集団中に広まる速度」と言うことができる。たとえば二組のカップルがおり、一方が遺伝子Xの影響で生涯に6匹の子をもうけたとする。もう一方は対立遺伝子Yの影響によって生涯に4匹の子をもうけたとする。この群れの平均産子数は(4+6)/2=5であり、Xの適応度は6/5=1.2となる。Yの適応度は4/5=0.8となる。適応度が1であればその遺伝子は広まりも減りもしないが、1より小さければ次第に数を減らし、1より大きければ次第に数を増す。値が大きければ大きいほど急速に広まる。この例ではXが増してゆくと考えられる。

適応度をある個体の子孫だけでなく、その親族にまで広げたものを包括適応度と言う。社会性行動の進化を扱うさいには包括適応度を用いなければならない。

適応度の概念を提唱し、数学的なモデルとして構築したのは集団遺伝学者ロナルド・フィッシャーJ・B・S・ホールデンシュワール・ライトらであった。


文献

  • Haldane, J.B.S. (1924) "A mathematical theory of natural and artificial selection" Part 1 Transactions of the Camrbidge philosophical society: 23: 19-41 link (pdf file)
  • Hamilton, W.D. (1964) "The evolution of social behavior" Journal of Theoretical Biology 1:...

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