小簾の戸

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小簾の戸(こすのと)は、地歌の曲目のひとつ。端歌物に属する。 「雪」で有名な峰崎勾当の作曲。詞は芸妓首のぶによるもの。 歌詞中に「蚊帳」が登場するなど夏の恋をうたったもの。地歌には珍しく 明るい結末の唄。「鉤簾の戸」と表記される事もある。 曲はうた沢にも取り入れられ、「浮草」との題がつく。 歌詞は古今集の 「わびぬれば 身をうき草の 根をたえて さそふ水あらば いなむとぞ思ふ」(小野小町) 「夏山に 鳴くほととぎす 心あらば 物思ふ我に 声な聞かせそ」(読み人しらず) 西行の 「けふもまた 松の風吹く 岡へゆかむ 昨日すずみし 友にあふやと」 「なげけとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな」(百人一首にとられる) といった和歌よりとられる。

本来純粋な楽曲であるが、後世振付が行われ、地唄舞の演目の一つともなっている。


歌詞[編集]

浮草は 思案のほかの 誘ふ水 恋が浮世か 浮世が恋か ちょっと聞きたい 松の風

問へど答へず 山ほととぎす 月やはものの やるせなき

癪(しゃく)にうれしき 男の力 じっと手に手を なんにも言はず 二人して 吊る 蚊帳の紐