ニャティ・ツェンポ

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ニャティ・ツェンポ

在位期間
紀元前127年 - ?
次代 ムティ・ツェンポ

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ニャーティ・ツェンポチベット語: གཉའ་ཁྲི་བཙན་པོ།、ワイリー方式: gnya' khri btsan po)は、伝説上の古代チベットの王である。漢文資料では聶赤賛普と表記される。彼の治世は紀元前127年に始まったと言われ、伝統的なチベットの歴史では、ヤルルン王家の最初の王とされている。敦煌の年代記では、彼が天からヤルラシャンポ山に降りたと書かれている。チベットの神話では、チベットにおいて最初に建造されたとされるユンブラカン宮殿は、彼のために建立されたとされる。

神話[編集]

ニャーティ・ツェンポ及びヤルルン王家の起源について、チベット神話では次のように記されている[1]

インドの王家に異形の子が生まれた。王はその子をガンジス川に捨て、その子は漁師に拾われて育てられた。その子は成長し親に捨てられた出自を知り、悲しくなってガンジス川を遡って雪山(ヒマラヤ)に向かった。そして、ラリロルポの頂に降って、おもむろにご覧になると、「山はヤルラシャンポがよい、地はヤルルンがよい」と知り、ツェタンのヤルラシャンポ山に降った。それを見た土地の首領たちが「どこから来たのか」と尋ねると、その子は天を指さしたので、「この子は天から降りてきた神の子だ、われわれの王に頂こう」と、みなで御神輿に担いだので、最初のチベット王は「ニャーティ・ツェンポ」(頸座王)といわれた。それから名前の一部にティという文字を持つ七人の王が続いたが、彼等はいずれも子息が馬に乗れる年齢に達すると、頭頂から天に向かって伸びている綱(ム)の中に肉体を虹のように溶け込ませて消えていった。したがって、「天の七ティ」の陵は天に建てられたが、次に現れたディグム・ツェンポ王の時、天とつながるムが切れて、それ以後王は地上に体を残すようになった。

脚注[編集]

  1. ^ チベットを知るための50章. 明石書店. (2005-11-30). ISBN 9784750318950