ダルマヒサゴホラダマシ
ダルマヒサゴホラダマシ | |||||||||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Sinetectula farinosa (A.A.Gould, 1850) | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
ダルマヒサゴホラダマシ |
ダルマヒサゴホラダマシ(達磨瓢法螺騙し)、学名 Sinetectula farinosa は、ベッコウバイ科に分類される海産の巻貝の一種。殻長10-18mm内外で肉食性。インド太平洋の熱帯域の珊瑚礁などに生息する[1]。
属名の Sinetectula はラテン語の「sine(~無しの)」+「tēctum(屋根)」+「-ulus(指小辞)」で、「宿無しっ子」の意。この属に分類される種の多くが、記載以来の百数十年間、様々な属に”取り敢えず”分類されてきた歴史があり、その状態を宿無しに例えたもの[1]。2021年に”宿無しっ子属”Sinetectula Fraussen & Vermeij, 2021 ヒサゴホラダマシ属が創設されたことで、逆説的に宿無し状態を脱することになった。種小名はラテン語の「farīnōsus(粉を吹いた、粗粉の~)」だが、記載者の A. A. グールド はその由来を説明していない。
和名はヒサゴホラダマシに似て丸く膨らむ殻型をだるまに例えたもの。
分布[編集]
形態[編集]
- 大きさと形
成貝は殻高(殻長)10-18mm前後。寸詰まりの紡錘形。殻口面から見て大層は殻高の約2/3を占める。ごく短い水管溝がある。
- 原殻
原殻は2層-2.5層で最終部には縫合直上に1本の小さいキールがある[1]。
- 彫刻
殻は厚質で粗い螺肋と縦肋とがあり、これらの交点は顆粒状の突起となる。上層部の縦肋はある程度規則的だが体層では不規則になる。
- 殻口
成貝の殻口外側は手前で一旦縦張肋状に強く膨らんだ後、再び殻口に向かって窄まる。殻口内は白色で顆粒や歯状襞が多い。外唇縁は狭い幅で反転して薄いリップ状となり、辺縁に褐色小点が並ぶ。外唇内側には6個ほどの歯状襞がある。内唇上部にも1個の歯状小瘤があり、外唇側の歯状襞の最上の1個と向かい合って両者の間に弱い肛溝を作る。内唇滑層には粗い皺状の顆粒があり、軸唇下部には約3個の歯状襞がある。殻口下端(前端)は狭まりながらごく短い水管溝に移行する。
- 殻色
地色は淡黄褐色で、縫合下、周縁下、水管溝周りの3域は帯状にやや色が濃くなり、そのあたりを中心に不規則な褐色斑が所々に出る。褐色斑の濃さや出方には変異がある。
- 軟体
乳白色の地色に淡い褐色の不規則細斑があり、小さな白色斑もまばらにある。触角にも同様の細斑があり、触角の基部3/1付近の外側に黒い眼がある(クェゼリン環礁の個体)[1]。
- 蓋
蓋は角質で比較的薄く、半透明の灰黄色、楕円形。殻口に比べやや小さい[1]。
生態[編集]
サンゴ礁の潮間帯から潮下帯(水深3m-35m)に生息する[3][1]。
分類[編集]
原記載[編集]
- 記載文の寸法記号 poll.は pollex でインチ(25.4mm)に等しいとされるが、1850年の原記載では3/8 poll. (9.1875mm)、1852年の再記載では5/8 inch(15.875mm)となっていて不一致があるように見える。
- ホロタイプ:米国国立自然史博物館所蔵(登録番号:USNM 5719)
- パラタイプ:7個体 比較動物学博物館 所蔵(登録番号:MCZ169141)
- タイプ産地:「Sandwich Islands, Kauai」(サンドウィッチ諸島(=ハワイ諸島)、カウアイ)
- 再記載:Gould (1852)[5] U.S. Expl. Exped., vol.12, p.255-256
- 図示:Gould (1856)[6] U.S. Expl. Exped., vol.12, pl. 19, fig. 323, 323a.
- Buccinum (Pollia) farinosum Gould, 1850 -- 原記載時の学名
- Cantharus farinosus (Gould, 1850)
- Engina farinosa (Gould, 1850)
- Hindsia angicostata Pease, 1860
- Triton elegans W. Thompson, 1845 -- Triton (Pusio) elegans Gray in Griffith & Pidgeon, 1833の新参同名のため無効
※日本の代表的な貝類図鑑『日本近海産貝類図鑑 第二版』[2]にも本種が掲載されているが、図版(pl.218, fig.1)の学名は「N. nivea」 、解説( p.929)での学名は「Nassaria pusilla (Röding, 1798) 」となっていて一致しない。更にこれらの学名はいずれもオリイレヨフバイ科のシロナサバイ Nassaria pusillaを指すとされるものであるが(nivea は pusilla の異名)[8]、実際にダルマヒサゴホラダマシの学名として用いらているという点では、「奥谷(2017)が言うところの」という条件付きで N. nivea や Nassarius pusilla も本種の異名と言える。
類似種[編集]
- ヒサゴホラダマシ Sinetectula egregia (Reeve, 1844)
- ヒサゴホラダマシ属 Sinetectula のタイプ種。ダルマヒサゴホラダマシに色彩や彫刻が似るが、色はより濃いことが多く、螺塔が高くてより細長い。原殻は1層のみでダルマヒサゴホラダマシの2層-2.5層より少なく、キールも無い。軟体には淡褐色と白色の細斑のほかに黒色細斑も加わる。日本(紀伊半島以南)、フレンチポリネシア、オーストラリア、東アフリカまでのインド西太平洋の広い範囲に分布する[1]。
出典[編集]
- ^ a b c d e f g h Fraussen, Koen; Vermeij, Geerat J. (2021). “Sinetectula gen. nov., a new genus of Pisaniidae (Gastropoda: Buccinoidea) from the tropical Indian and Pacific Oceans”. European Journal of Taxonomy (748): 155–176 (p.166-168). doi:10.5852/ejt.2021.748.1351.
- ^ a b 奥谷喬司(T. Okutani) (30 Jan 2017). エゾバイ科 (p.250-272 [pls.206-228], 917-939) in 奥谷喬司(編著)『日本近海産貝類図鑑 第二版』. 東海大学出版部. pp. 1375 (p.262 [pl.218, fig.1], p.929). ISBN 978-4486019848
- ^ Cernohorsky, Walter O. (1978). Tropical Pacific Marine Shells. Pacific Publication. pp. 352 (p.75-76, pl. 22, fig. 10.). ISBN 0858070383
- ^ Gould, A.A. (1850). “Descriptions of the shells brought home by the U.S. Exploring Expedition (continued)”. Proceedings of the Boston Society of Natural History 3: 151–156.
- ^ Gould, A.A. United States Exploring Expedition. During the year 1838, 1839, 1840, 1841, 1842. vol. 12, Mollusca & Shells. 12. pp. xv + 510
- ^ Gould, A.A. United States Exploring Expedition. During the year 1838, 1839, 1840, 1841, 1842. vol. 12, Atlas, Mollusca & Shells. 12. pp. 16, pls. 1-52
- ^ MolluscaBase eds. (2021). MolluscaBase. Sinetectula farinosa (Gould, 1850). Accessed through: World Register of Marine Species at: http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=1509952 on 2021-12-31
- ^ MolluscaBase eds. (2021). MolluscaBase. Nassaria pusilla (Röding, 1798). Accessed through: World Register of Marine Species at: http://marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=491143 on 2021-12-31