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オオイカリナマコ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オオイカリナマコ
オオイカリナマコ(グアム島
分類
: 動物界 Animalia
: 棘皮動物門 Echinodermata
: ナマコ綱 Holothuroidea
: 無足目 Apodida
: イカリナマコ科 Synaptidae
: オオイカリナマコ属 Synapta
: オオイカリナマコ S. maculata
学名
Synapta maculata (Chamisso et Eysenthardt)
先端部・触手の様子

オオイカリナマコ(大錨海鼠、Synapta maculata)は、ナマコの1種である。身体を伸ばした際は3 mにも達し、特に大きなナマコの種の1つとされる。珊瑚礁の浅い海底などで、長く伸びて這っている姿が見られる。

特徴

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体は円筒形で非常に細長い[1]。生きている時は、身体を伸ばした際には3 mにも達する。一方で、体幅は5 cm程度と、細長い。体側面には管足が無く、前端に触手を有する。触手は15本で、それぞれに羽状の20-30本の側枝が見られる。体壁は薄くて柔らかく、半透明で粘稠状である。生きている時は、収縮すると体表に様々な大きさの疣状の突起を生じるが、標本では全て消える。体色は褐色、帯緑褐色、暗緑色、暗青灰色など様々な変異が見られ、一般的にはそれらのうちの2-3色が交互に5本、縦列を成していて、これに濃淡様々な暗色の斑紋と黒い斑紋が交互に交わっている。

骨片

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皮膚に存在する骨片は大きく分けて2種類が見られる。1つは、Tの字の横棒の両端が下向きに尖った錨状で、反対の先端も小さくT字状をしており、細かな棘が存在し、種名はこれに由来する。もう1つは、錨状板と呼ばれ、丸みを帯びた縦長の長方形をしており、中央付近には6-8の大きな穴が、両端付近には小さな穴が多数見られる。なお、ナマコの骨片は顕微鏡サイズなのが通例だが、本種の場合は長さが1 mm程度に達するため、視力が良ければ肉眼でも見られる[2]。また、手で触れると引っかかり、粘り着くように感じる[3]。場合によっては、手に刺さる[4]

生態

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珊瑚礁の底質が砂の場所、例えば、珊瑚礁内側の礁湖や礁原などに棲息する。動きは緩慢で、胴体部はあまり動かない。触手だけは絶えず動かしている[5]。触手を伸ばし、砂を集めて口に運んで、砂に含まれている有機物を、砂と一緒に食べる[6]

分布

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日本では与論島以南の南西諸島に見られる[7]。また、徳之島にも生息が確認されている。

世界的にはインド洋太平洋熱帯区域に広く分布する[2]

体長について

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このナマコはナマコ類では長さにおいて最大の種とされる。普通の個体で長さ3 m程度であるが、最大では4.5 mの記録が存在する。ただし、これは水を吸って膨らんだ時の長さである。指で触れるなどの刺激を受けると、すぐに水を吐き出して縮んでしまい、30 cm程度にまで縮んでしまう。なお、別属であるがクレナイオオイカリナマコ Opheodesoma sp. にも4.5 mの記録が存在し、やはりナマコで最大とされる[8]

なお、その大きさも相まって、かなり不気味な生き物である。岡田・瀧他(1950)には『性鈍重で蛇のような醜怪感を与える』とある[9]

出典

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  1. ^ 以下、記載は主として岡田他(1965),p.97
  2. ^ a b 岡田他(1965),p.97
  3. ^ 岡田・瀧他著(1960),p.3
  4. ^ 一橋和義(2023)p.139
  5. ^ 安座間編著(1976)p.286
  6. ^ 沖縄生物教育会編著(2004)P.227
  7. ^ 西村編著(1995),p.569
  8. ^ 中村(2010)
  9. ^ 岡田・瀧他(1950),p.3

参考文献

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  • 岡田要,『新日本動物図鑑 〔下〕』(1965)、図鑑の北隆館
  • 中村康夫、『中村康夫 記録的海洋生物 No.1列伝』、(2010)、誠文堂新光社
  • 西村三郎 編著、『原色検索日本海岸動物図鑑〔II〕』、1992年、保育社
  • 岡田要・瀧庸 他、『原色動物大圖鑑 〔第III巻〕』、(1950)、北隆館
  • 安座間喜勝 編著、『生態写真集 沖縄の生物』、(1976)、新星図書
  • 沖縄生物教育会 編著、『フィールドガイド 沖縄の生きものたち』、(2004)、新星出版
  • 一橋和義、『ナマコは平気! 目・耳・脳がなくてもね! 5憶年の生命力』、(2023)、さくら舎 ISBN 978-4-86581-395-1