switch文
switch文(スイッチぶん、英: switch statement)とは、プログラミング言語において、ある式の値に応じて多分岐を行なう文である。最適化の仕方にも左右されるが、場合によってはテーブルジャンプなどに展開されることで、条件判断を繰り返すif文よりも効率的に実行されることがある。言語によっては、値を返す式として記述できるものもある。また、検査対象の式のランタイム型(実行時型情報)に応じて分岐するような、複雑なパターンマッチングの機能を持つ言語もある[1]。
言語ごとの構文
[編集]C言語
[編集]構文は以下の通り。
switch (制御式) {
case 値1:
文
文
………
break;
case 値2:
文
文
………
break;
default:
文
}
上記の「case」ラベルはいくつでも記述することができる。caseラベルの「値」はコンパイル時に決まる整定数式 (integer constant expression) である必要がある。
この文は次のような手順で実行される。
- 制御式を評価し、整数値を得る。
- その整数値がどれかのcaseで指定された値であるなら、そのcaseに引き続く文に飛ぶ。
- どのcaseでも指定されていなければ、defaultに引き続く文に飛ぶ。
- もしdefaultが記述されていなければ、何も実行せずにswitch文を抜ける。
フォールスルー
[編集]ここで注意しなければならないのが、caseはラベルに過ぎず、そのcaseより前からの実行から、そこでswitch文を抜けさせる働きはない点である(一般的には、次のcaseがあらわれる直前にbreak文を置く)。このルールはフォールスルー (fall through) と言い、制御の流れが合流する動作をさせたい場合に便利であるが、一方でbreak文の書き忘れによるバグ、ループを抜けるbreakと取り違える誤読によるバグなど、バグの温床として問題視されてきた。
そのためlintでは、意図的にフォールスルーしていることを示す/* FALLTHROUGH */
などのコメントが記述されていない限り警告を出す。また、Cに類似した構文を採用した言語でも、C#のように対策(後述)した言語仕様にされていることがある。
上記の例は、if文を羅列することで同様の動作を実現することができる。なおif文では比較対象の「値」が整定数式である必要がない点においてswitch文よりも柔軟である。
_tmp_ = 制御式;
if (_tmp_ == 値1) {
文
}
else if (_tmp_ == 値2) {
文
}
………
else {
文
}
defaultは最後に記述される場合が多いが、必ずしも最後である必要はない。
switchによる分岐は以下のようにdo-while文と組み合わせることも可能である。
switch (count)
{
default: do { printf("%d\n", count); count++;
case 0: printf("%d\n", count); count++;
case 1: printf("%d\n", count); count++;
case 2: printf("%d\n", count); count++;
} while (count);
}
例えばDuff's deviceではそのような使われ方をしている。
C#
[編集]C#でのswitch文はC言語と似たような見た目であるが、フォールスルーについての挙動は異なる。
switch (式)
{
case 0:
case 1:
// 式が0か1の時に実行
System.Console.WriteLine("Case 0 or 1.");
return 1;
case 2:
System.Console.WriteLine("Case 2.");
goto case 3: // case 3も実行
case 3:
System.Console.WriteLine("Case 3.");
break;
default:
System.Console.WriteLine("Default.");
break; // ここのbreakも省略不可
}
C#では、caseラベルは文に付属する扱いとなるが、1つの文に複数のcaseラベルを付けることができる。また、C言語のようなフォールスルーは禁止されており、次のcaseラベル付きの文、あるいはswitchブロックの末端に、通常の制御フローで到達してはならない。すなわち、breakでswitchを抜ける、returnで関数ごと抜ける、例外を投げる、無限ループしてそれ以上進まない[注釈 1]、goto caseするなどの書き方が必要となる[2]。goto caseにより、C言語ではフォールスルーを使って書くことができた、制御の合流を書くことができる。
CやC++では、switch文の制御式には整数型の式、またcaseラベルには整定数式しか使用できないのに対し、C#ではそれぞれ文字列型および文字列リテラルも使用できる。また、整数型あるいは整数型に準ずる値型のnull許容型System.Nullable
も使用することができる。
C# 7.0以降では型switchを使用できる。
// C# 7.0以降
switch (obj)
{
case int num when num < 0:
Console.WriteLine($"objは負の32bit整数{num}です。");
break;
case string str when str.StartsWith("H"):
Console.WriteLine($"objはHから始まる文字列{str}です。");
break;
case string str:
Console.WriteLine($"objは文字列{str}です。");
break;
default:
Console.WriteLine("objは想定外の型あるいは値です。");
break;
}
Go
[編集]Goでは、caseに複数の値を指定できる。次のcaseの直前にfallthrough文を置くとフォールスルーになる。
PHP
[編集]PHPでは、C#と同様、文字列にも、switch文が適用できる。
switch (str) {
case "ABC":
文A;
break;
case "XYZ":
文B;
break;
case "123":
文C;
break;
default:
文D;
break;
}
PHPのswitch文においては、比較が===
演算子ではなく==
演算子で行われる。そのため、曖昧一致に起因し、開発者が予期しない動作となる場合がある。
BASIC
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
構造化されたBASICでは、Select Caseステートメントが存在することが多い。このステートメントでは、文字列または整数を対象にできる。
Select Case str
Case "ABC"
文A
Case "XYZ"
文B
Case "123"
文C
Case Else
文D
End Select
Select Case age
Case Is < 20
文A
Case 20 To 29
文B
Case 30,50,70 'Caseに複数の値を指定することができる
文C
Case Else
文D
End Select
Cなどと違い、各Caseはラベルではなく、Selectステートメントはフォールスルーでない。
Perl
[編集]Perlでは、perl-5.8以降からuse Switchとした上でswitch case文が使えるようになった。それ以前のバージョンのperlに関しては、Perl付属文章perlsynドキュメントのBasic BLOCKs and Switch Statementsの節に書式の例が書かれている。
Ruby
[編集]Rubyでは、case式により同様の多分岐ができる。フォールスルーはない。ラベルとして置いたものと条件値は===
演算子で比較される[3][注釈 2]ため、これをオーバーロードすることでクラスに応じた一致判定を行うことができる。Ruby自体のクラスライブラリ内でも、正規表現の一致判定[4]、範囲オブジェクトでの範囲内かどうかの判定、オブジェクトがあるクラスに属するかの判定など、各種の定義がなされている。
Mediawiki
[編集]Mediawiki系のTemplateにおいては、ParserFunctionsを用いて多分岐をおこなうことができる。一対一の分岐処理の他、複数の値に対して同一の処理を定義する一種のフォールスルーも実現できる。しかし、CやC#といった言語でのreturn文やbreak文が無い。そのため処理の途中でSwitch文を抜けるにはif等の条件文で処理を囲み、実行させないよう制御する必要がある。
詳細については、Help:条件文#switchの項を参照の事。
表計算ソフトウェア
[編集]多くの表計算ソフトウェアでは、CHOOSE
関数の拡張としてSWITCH
関数が利用できる。
例えばMicrosoft Excel 2019以降(Office 365含む)[5]、LibreOffice Calc 5.2以降[6]、Google スプレッドシート[7]でサポートされている。指定可能なケースと結果値のペアの上限は環境によって異なるが、概ね以下のような構文である。
SWITCH(式, ケース1, 結果値1[, ケース2, 結果値2, ...][, 既定の結果値])
式 | 検査される任意の有効な値。 |
---|---|
ケース | 式に対して比較されるケース。 |
結果値 | ケースが式と一致したときに返される値。 |
既定の結果値 | 最後のパラメータとして指定される省略可能な値で、いずれのケースも式と一致しなかった場合に返される。 |
もし式がどのケースとも一致せず、さらに既定の結果値が与えられていない場合、#N/A
のエラーが返却される。
条件式ベースで使う
[編集]Ruby[3]やSQL[注釈 3]では、switchに相当する文の後の式が必須ではなく、省略した場合はwhenとして書かれた式のうち、最初に真となるところを実行するようになる。PHPやJavaScriptなど、caseの式が定数である必要性がない言語の場合、switch(true)
と書くことで同様の動作を実現できる。