switch文
switch文(スイッチぶん、英: switch statement)とは、プログラミング言語において、ある式の値に応じて多分岐を行なう文である。最適化の仕方によって多少変わることはあるが、場合によってはテーブルジャンプなどにより、条件判断を繰り返すif文より効率的に実行される。
文法[編集]
C言語[編集]
構文は以下の通り。
switch (制御式) {
case 値1:
文
文
………
break;
case 値2:
文
文
………
break;
default:
文
}
上記の「case」ラベルはいくつでも記述することができる。caseラベルの「値」はコンパイル時に決まる整定数式 (integer constant expression) である必要がある。
この文は次のような手順で実行される。
- 制御式を評価し、整数値を得る。
- その整数値がどれかのcaseで指定された値であるなら、そのcaseに引き続く文に飛ぶ。
- どのcaseでも指定されていなければ、defaultに引き続く文に飛ぶ。
- もしdefaultが記述されていなければ、何も実行せずにswitch文を抜ける。
フォールスルー[編集]
ここで注意しなければならないのが、caseはラベルに過ぎず、そのcaseより前からの実行から、そこでswitch文を抜けさせる働きはない点である(一般的には、次のcaseがあらわれる直前にbreak文を置く)。このルールはフォールスルー (fall through) と言い、制御の流れが合流する動作をさせたい場合に便利であるが、一方でbreak文の書き忘れによるバグ、ループを抜けるbreakと取り違える誤読によるバグなど、バグの温床として問題視されてきた。
そのためlintでは、意図的にフォールスルーしていることを示す/* FALLTHROUGH */
などのコメントが記述されていない限り警告を出す。また、Cに類似した構文を採用した言語でも、C#のように対策(後述)した言語仕様にされていることがある。
上記の例は、if文を羅列することで同様の動作を実現することができる。なおif文では比較対象の「値」が整定数式である必要がない点においてswitch文よりも柔軟である。
_tmp_ = 制御式;
if (_tmp_ == 値1) {
文
}
else if (_tmp_ == 値2) {
文
}
………
else {
文
}
defaultは最後に記述される場合が多いが、必ずしも最後である必要はない。
switchによる分岐は以下のようにdo-while文と組み合わせることも可能である。
switch (count)
{
default: do { printf("%d\n", count); count++;
case 0: printf("%d\n", count); count++;
case 1: printf("%d\n", count); count++;
case 2: printf("%d\n", count); count++;
} while (count);
}
例えばDuff's deviceではそのような使われ方をしている。
C#[編集]
C#でのswitch文はC言語と似たような見た目であるが、フォールスルーについての挙動は異なる。
switch (式)
{
case 0:
case 1:
// 式が0か1の時に実行
System.Console.WriteLine("Case 0 or 1.");
return 1;
case 2:
System.Console.WriteLine("Case 2.");
goto case 3: // case 3も実行
case 3:
System.Console.WriteLine("Case 3.");
break;
default:
System.Console.WriteLine("Default.");
break; // ここのbreakも省略不可
}
C#では、caseラベルは文に付属する扱いとなるが、1つの文に複数のcaseラベルを付けることができる。また、C言語のようなフォールスルーは禁止されており、次のcaseラベル付きの文、あるいはswitchブロックの末端に、通常の制御フローで到達してはならない。すなわち、breakでswitchを抜ける、returnで関数ごと抜ける、例外を投げる、無限ループしてそれ以上進まない[* 1]、goto caseするなどの書き方が必要となる[1]。goto caseにより、C言語ではフォールスルーを使って書くことができた、制御の合流を書くことができる。
CやC++では、switch文の制御式には整数型の式、またcaseラベルには整定数式しか使用できないのに対し、C#ではそれぞれ文字列型および文字列リテラルも使用できる。また、整数型あるいは整数型に準ずる値型のnull許容型System.Nullable
も使用することができる。
C# 7.0以降では型switchを使用できる。
// C# 7.0以降
switch (obj)
{
case int num when num < 0:
Console.WriteLine($"objは負の32bit整数{num}です。");
break;
case string str when str.StartsWith("H"):
Console.WriteLine($"objはHから始まる文字列{str}です。");
break;
case string str:
Console.WriteLine($"objは文字列{str}です。");
break;
default:
Console.WriteLine("objは想定外の型あるいは値です。");
break;
}
Go[編集]
Goでは、caseに複数の値を指定できる。次のcaseの直前にfallthrough文を置くとフォールスルーになる。
PHP[編集]
PHPでは、C#と同様、文字列にも、switch文が適用できる。
switch (str) {
case "ABC":
文A;
break;
case "XYZ":
文B;
break;
case "123":
文C;
break;
default:
文D;
break;
}
PHPのswitch文においては、比較が===
演算子ではなく==
演算子で行われる。そのため、曖昧一致に起因し、開発者が予期しない動作となる場合がある。
BASIC[編集]
![]() | この節の加筆が望まれています。 |
構造化されたBASICでは、Select Caseステートメントが存在することが多い。このステートメントでは、文字列または整数を対象にできる。
Select Case str
Case "ABC"
文A
Case "XYZ"
文B
Case "123"
文C
Case Else
文D
End Select
Select Case age
Case Is < 20
文A
Case 20 To 29
文B
Case 30,50,70 'Caseに複数の値を指定することができる
文C
Case Else
文D
End Select
Cなどと違い、各Caseはラベルではなく、Selectステートメントはフォールスルーでない。
Perl[編集]
Perlでは、perl-5.8以降からuse Switchとした上でswitch case文が使えるようになった。それ以前のバージョンのperlに関しては、Perl付属文章perlsynドキュメントのBasic BLOCKs and Switch Statementsの節に書式の例が書かれている。
Ruby[編集]
Rubyでは、case式により同様の多分岐ができる。フォールスルーはない。ラベルとして置いたものと条件値は===
演算子で比較される[2][* 2]ため、これをオーバーロードすることでクラスに応じた一致判定を行うことができる。Ruby自体のクラスライブラリ内でも、正規表現の一致判定[3]、範囲オブジェクトでの範囲内かどうかの判定、オブジェクトがあるクラスに属するかの判定など、各種の定義がなされている。
Mediawiki[編集]
Mediawiki系のTemplateにおいては、ParserFunctionsを用いて多分岐をおこなうことができる。一対一の分岐処理の他、複数の値に対して同一の処理を定義する一種のフォールスルーも実現できる。しかし、CやC#といった言語でのreturn文やbreak文が無い。そのため処理の途中でSwitch文を抜けるにはif等の条件文で処理を囲み、実行させないよう制御する必要がある。
詳細については、Help:条件文#switchの項を参照の事。
Excel(Office 365),Libre Office Calcの場合[編集]
CHOOSE関数の拡張としてSWITCH関数が利用できる。
SWITCH(検索値, 値1, 結果1, 値2, 結果2, ..., 値126, 結果126, 既定の結果)
検索値 | 検索する値を指定します。数値または文字列が指定できる。 |
---|---|
値 | 検索される値を指定する。数値または文字列が指定できる。 |
結果 | [検索値]が[値]に一致したときに返したい値を指定する。[値]と[結果]の組み合わせは126個まで指定できる。 |
既定の結果 | [検索値]が[値]のどれにも一致しなかったときに返したい値を指定する。この引数は省略することもできる。 |
条件式ベースで使う[編集]
Ruby[2]やSQL[* 3]では、switchに相当する文の後の式が必須ではなく、省略した場合はwhenとして書かれた式のうち、最初に真となるところを実行するようになる。PHPやJavaScriptなど、caseの式が定数である必要性がない言語の場合、switch(true)
と書くことで同様の動作を実現できる。
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ switch(C#リファレンス)、MSDN(2014年5月30日閲覧)。
- ^ a b Ruby 1.9.3マニュアル - 制御構造、2014年3月3日閲覧。
- ^ Ruby 1.9.3マニュアル - class Regexp、2014年3月3日閲覧。