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非常大権

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

2021年6月8日 (火) 08:05; 暴れん坊二等兵 (会話 | 投稿記録) による版 (訂正前の記事は、「大日本帝国憲法は、天皇主権であった」旨が掲載されていたが、大日本帝国憲法に天皇主権とは明文化されておらず、天皇は「統治権の総覧者」とされた。 1913年に「主権は国家にある」とされた天皇機関説が採用され、以後1935年に国体明徴声明が発表されるまで、大日本帝国憲法は、天皇機関説によって運用されていた経歴について説明が不足している。 したがって、該当部分を削除して訂正した。)(日時は個人設定で未設定ならUTC

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非常大権(ひじょうたいけん)とは、大日本帝国憲法第31条によって天皇に認められた非常時における天皇大権の1つ。


ただし、その規定が曖昧であるうえ、すでに第8条緊急勅令第14条戒厳大権が規定されており、この両条との峻別も不明確であった。伊藤博文の『憲法義解』では、「危難の時機に際し、国家及国民を救済して、その存立を保全するため」の場合に限定される非常権であり、平常時の発動は許されないと解説されているが、その具体的な内容には触れられなかった。このため、憲法学者の間でも憲法で規定された戒厳令などが宣言された場合とする見解と戒厳令では収拾し切れない国家緊急事態を指すとの見解に分かれていた。

上記の理由から他の天皇大権に運用性が劣後したため、大日本帝国憲法下で実際に非常大権が発動された例はなかった。また、非常大権の憲法解釈について法学上の通説は定まらなかったが、憲法改正に伴い非常大権が廃止されたため、実務的な解釈論争はその役割を終えた。

なお、大日本帝国憲法の改正により成立した日本国憲法においては同様の規定は存在しない。