鼻涙管閉塞

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鼻涙管閉塞
別称 Dacryocystitis
涙腺(a)から分泌され、涙点(b,e)と涙小管(c,f)を経由して涙嚢(d)に到達した涙は、鼻涙管(g)を通って鼻腔に排出される。
概要
診療科 眼科学
鑑別 Tears arising from lacrimal sac fistula.[1]
分類および外部参照情報

鼻涙管閉塞(びるいかんへいそく、Nasolacrimal duct obstruction)は、鼻涙管閉塞であり、先天性のものと後天性のものがある。鼻涙管閉塞によって、流涙症と呼ばれる涙の過剰な流出を引き起こす[2]

症状[編集]

過度の流涙は鼻涙管閉塞症の最も一般的な訴えであり、急性ないし慢性の感染症が続く[3]。鼻の横の痛みは涙嚢炎を示唆する。

後天性の鼻涙管閉塞は年齢が高くなるにつれて多くみられ、男性よりも女性に多い[3]

原因[編集]

先天性[編集]

先天性鼻涙管閉塞は、涙管が開かなかった場合に起こる[4]。およそ 6% の児に先天性鼻涙管閉塞がみられ、泣いていないときでも涙目が持続する。二次感染を起こすと、膿性の分泌物がみられることがある。およそ96%が1歳までに自然治癒する[5]

診断[編集]

色素消失試験でスクリーニングしてから涙管通水検査で評価することで、効率的に検査できる。

色素消失試験[編集]

色素消失試験は、特に片側性の鼻涙管閉塞症の診断に有用である。小児でも深い鎮静無しに実施できる。検査者はフルオレセインを両眼の結膜円蓋に注入し、涙液を観察する。5分間に渡って染料が残存した場合、残存した側の鼻涙管閉塞を示唆する。

涙管通水検査[編集]

Flushing the nasolacrimal duct in a cat.

涙管通水検査では、灌流カニューレを涙点に通し、涙小管を通って涙嚢まで進める。その後、透明な水または生理食塩水をカニューレを通して灌流する。液体が反対側の涙小管から逆流することなく鼻の中を通過すれば、鼻涙管は開通している。液体が通過せず、すべてどちらかの涙点から戻ってくる場合は、鼻涙管閉塞がある。

治療[編集]

保存的治療[編集]

先天性鼻涙管閉塞の場合、ほとんどの症例は保存的治療で自然治癒する。結膜炎を起こした場合のみ抗菌薬を投与する。涙嚢マッサージが治癒率を高めるという報告もある。マッサージの目的は、閉塞を解除するのに十分な静水圧を発生させることである。分泌物や痂皮がある場合は、生理食塩水で瞼を優しく洗浄する。

先天性鼻涙管閉塞開放術[編集]

先天性鼻涙管閉塞の場合、生後12か月時点でも症状がある場合や、症状が重篤な場合、感染を反復する場合には眼科医への紹介が必要である。先天性鼻涙管閉塞開放術(プロービング)は、生後4~8か月に対しては診察室で、年長の患者には全身麻酔下で手術室で、行われることが多い。先天性鼻涙管閉塞開放術の成功率は年少児の方が高い。涙道の開存性を維持するため、先天性鼻涙管閉塞開放術と同時にシリコンチューブやステントを使用することもある[6]。システマティックレビューによると、片側性鼻涙管閉塞の小児では、先天性鼻涙管閉塞開放術を即時に行った場合の方が、待機的に行った場合よりも治療の成功率が高かった[7]

関連項目[編集]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ Nerad, Jeffrey A.; Carter, Keith D.; Alford, Mark (2008). “Disorders of the Lacrimal System: Congenital Obstruction”. Oculoplastic and Reconstructive Surgery. Elsevier. pp. 131–137. doi:10.1016/b978-0-323-05386-0.50010-7. ISBN 978-0-323-05386-0. "This tearing is different (from Dacryocystitis), as it originates from the fistula located below the eyelid on the cheek (may be associated with nasolacrimal duct obstruction)." 
  2. ^ Yanoff, Myron; Duker, Jay S.; Augsburger, James J., eds (2009). Ophthalmology (Premium ed., 3. ed ed.). Edinburgh: Mosby, Elsevier. ISBN 978-0-323-04332-8 
  3. ^ a b “Endonasal versus external dacryocystorhinostomy for nasolacrimal duct obstruction”. Cochrane Database Syst Rev 2017 (2): CD007097. (2017). doi:10.1002/14651858.CD007097.pub3. PMC 6464401. PMID 28231605. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6464401/. 
  4. ^ Young, J. D.; MacEwen, C. J. (1997-08-02). “Managing congenital lacrimal obstruction in general practice”. BMJ (Clinical research ed.) 315 (7103): 293–296. doi:10.1136/bmj.315.7103.293. ISSN 0959-8138. PMC 2127215. PMID 9274552. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9274552. 
  5. ^ MacEwen, C. J.; Young, J. D. (1991). “Epiphora during the first year of life”. Eye (London, England) 5 ( Pt 5): 596–600. doi:10.1038/eye.1991.103. ISSN 0950-222X. PMID 1794426. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1794426. 
  6. ^ “Monocanalicular silastic intubation for the initial correction of congenital nasolacrimal duct obstruction”. J AAPOS 11 (2): 183–186. (2007). doi:10.1016/j.jaapos.2006.09.009. PMID 17307001. 
  7. ^ “Probing for congenital nasolacrimal duct obstruction”. Cochrane Database of Systematic Reviews 2017 (7): CD011109. (2017). doi:10.1002/14651858.CD011109.pub2. PMC 5580992. PMID 28700811. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5580992/. 

外部リンク[編集]