犬も歩けば棒に当たる

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犬も歩けば棒に当たる(いぬもあるけばぼうにあたる)は、日本のことわざである。上方かるたの冒頭の句である「一寸先は闇」に対して、江戸の「いろはかるた」の最初の札を構成することわざである[1][2]。尚、ことわざ・いろはカルタ研究家の時田昌瑞によれば、「犬も歩けば棒に当たる」に相当することわざは、オランダでは「駆け回る犬は、いずれ食い物を見つける」、スペインメキシコでは「船に乗らない者は船酔いしない」、トルコでは「座っているライオンよりも歩き回るキツネの方が良い」であるとしている[3]

幸運説と災難説[編集]

ことわざ「犬も歩けば棒に当たる」には2つの意味があり[4][5][6]、度々、その元となった意味が議論されてきた。

一つは、「何か物事をしようとする者は、それだけに何かと災難に会うことも多いものだ」という意味である[4][7]。この場合は、「棒に当たる」は「棒に打たれる」という意味となる[7]。JapanKnowledgeによれば、最も古い「不運」を意味する方の「犬も歩けば棒に当たる」の使用例は1758年の浄瑠璃・蛭小島武勇問答の一節であるとされている[8]。その元となった意味として、書籍『人間通になるためのことわざ学入門』では、「犬でさえふらふら歩き回ると棒で殴られるような酷い目に遭う」という方を紹介し、「棒に当たる」は「棒で殴られる」「偶然に出会う」の2つの意味を内包していると解釈し、こちらを元の意味だとしている[9]

もう一つは、「出歩けば思わぬ幸運に当たる」という意味である[4][7]。JapanKnowledgeによれば、最も古い「幸運」を意味する方の「犬も歩けば棒に当たる」の使用例は1705年の雑俳・三番続の一節とされている[8]。江戸時代には、「棒に当たる」は「何かに偶然遭遇する」という意味で解釈されていたことがその由来だとされている。

脚注[編集]

  1. ^ ことわざを知る辞典,デジタル大辞泉,世界大百科事典内言及. “犬も歩けば棒に当たるとは”. コトバンク. 2021年8月13日閲覧。
  2. ^ 犬も歩けば棒に当たる おうちで学ぶことわざ | 全国のニュース”. 福井新聞D刊. 2021年8月13日閲覧。
  3. ^ 「犬も歩けば棒に当たる」はスペインでは何て言う? ことわざの世界旅行に誘う「世界ことわざ比較辞典」|好書好日”. 好書好日. 2021年8月13日閲覧。
  4. ^ a b c 犬も歩けば棒に当たる(いぬもあるけばぼうにあたる)の意味 - goo国語辞書”. goo辞書. 2021年8月13日閲覧。
  5. ^ 国語 小学校3~6年生 ひょうたんからコトバ|NHK for Scool”. www.nhk.or.jp. 2021年8月13日閲覧。
  6. ^ 犬も歩けば…|有明抄|佐賀新聞LiVE”. 佐賀新聞LiVE. 2021年8月13日閲覧。
  7. ^ a b c INC, SANKEI DIGITAL (2021年6月20日). “【日本語メモ】「犬も歩けば棒に当たる」はよい意味?”. 産経ニュース. 2021年8月13日閲覧。
  8. ^ a b Inc, NetAdvance. “犬が歩くと当たる“棒”は幸運か、災難か? : 日本語、どうでしょう?”. JapanKnowledge. 2021年8月13日閲覧。
  9. ^ 加藤尚武『人間通になるためのことわざ学入門』PHP研究所、1988年10月26日。 

意味

犬がフラフラ出歩くと、棒で殴られたような災難にあったりする。

じっとしていれば良いのに、余計な行動を起こすべきでないとの戒め。 (俗用)行動を起こすと、幸運なことでも、災難なことでも、何らかの経験をすることができる。