「長子音」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
重子音
細かい修正
1行目: 1行目:
'''長子音'''(ちょうしいん)は[[子音]]の持続時間が長いもののことである。[[国際音声記号]]では子音の後に {{IPA|ː}} を付けて表す。長子音でない一般の子音は'''短子音'''と呼ぶ。'''重子音'''({{lang-en-short|gemination}})とも呼ばれる。
'''長子音'''(ちょうしいん)は[[子音]]の持続時間が長いもののことである。[[国際音声記号]]では子音の後に {{IPA|ː}} を付けて表す。長子音でない一般の子音は'''短子音'''と呼ぶ。'''重子音'''({{lang-en-short|gemination}})とも呼ばれる。


明確に区別する言語としては[[日本語]]、[[アラビア語]]、[[イタリア語]]、[[エストニア語]]、[[カタルーニャ語|カタロニア語]]、[[デンマーク語]]、[[ハンガリー語]]、[[フィンランド語]]、[[ラテン語]]、[[ロシア語]]などが存在する。長さは言語によって異なり、日本語のように1[[モーラ]]分長くなる場合もある。また、[[エストニア語]]においては短・長・超長の三段階で意味を区別する。
短子音と長子音を音韻的に区別する言語としては[[日本語]]、[[アラビア語]]、[[イタリア語]]、[[エストニア語]]、[[カタルーニャ語|カタロニア語]]、[[デンマーク語]]、[[ハンガリー語]]、[[フィンランド語]]、[[ラテン語]]、[[ロシア語]]などが存在する。長さは言語によって異なり、日本語のように1[[モーラ]]分長くなる場合もある。また、[[エストニア語]]においては短・長・超長の三段階で意味を区別する。


[[破裂音]]・[[破擦音]]の場合は、子音の持続時間が延長するのではなく、前に気流の停止が挿入され、これを合わせた時間が短子音より長くなる。
[[破裂音]]・[[破擦音]]の場合は、子音の持続時間が延長するのではなく、前に気流の停止が挿入され、これを合わせた時間が短子音より長くなる。


==表記==
==表記==
日本語では子音の前に「[[促音|っ]]」を用いて表す場合が多いが、[[鼻音]]については子音の前に「[[ん]]」を用いて表す。イタリア語やフィンランド語では子音を二つ重ねて ''pp'' や ''tt'' のように書き表す。
日本語では子音の前に「[[促音|っ]]」を用いて表す場合が多いが、[[鼻音]]については子音の前に「[[ん]]」を用いて表す。イタリア語やフィンランド語では子音を二つ重ねて ''pp'' や ''tt'' のように書き表す。アラビア文字では[[シャッダ]]を使用する


ただし[[英語]]や[[ドイツ語]]などでは子音字の重複は、長子音ではなく、その前の母音が短母音であることを表す。また[[朝鮮語]]で破裂音・破擦音・[[摩擦音]]の字母の重複は、長子音ではなく[[濃音]]を表す。
ただし[[英語]]や[[ドイツ語]]などでは子音字の重複は、長子音ではなく、その前の母音が短母音であることを表す。[[ロシア語]]では、子音字の重複が長子音を表す場合と表さない場合がある。[[朝鮮語]]で破裂音・破擦音・[[摩擦音]]の字母の重複は、長子音ではなく[[濃音]]を表す。


== 長子音を用いない言語の長子音 ==
== 長子音を用いない言語の長子音 ==
例えば、英語に長子音は存在しないとされるが、二つの単語の間にある子音が同じである場合、音上は以下のに長子音化する事がある。
音韻的には英語に長子音は存在しないが、二つの単語の間にある子音が同じである場合、音上は以下のように長子音化する事がある。
* this saddle [ðɪˈsːædəl]
* this saddle {{IPA|ðɪˈsːædəl}}
* black coat [blæˈkːoʊt]
* black coat {{IPA|blæˈkːoʊt}}
* back kick [ˈbækːɪk]
* back kick {{IPA|ˈbækːɪk}}
* crack cocaine [ˌkrækːoˈkeɪn]
* crack cocaine {{IPA|ˌkrækːoˈkeɪn}}


しかし、重なる子音が[[破擦音]]である場合は起こらない。また、いくつかの方言においては副詞を作る接尾辞 ''-ly'' が ''l'' や ''ll'' などの後ろに来た場合なども長子音化する。
しかし、重なる子音が[[破擦音]]である場合は起こらない。また、いくつかの方言においては副詞を作る接尾辞 ''-ly'' が {{ipa|l}} の後ろに来た場合なども長子音化する。
* orange juice [ˈɒrɪndʒ dʒuːs]
* orange juice {{IPA|ˈɒrɪndʒ dʒuːs}}
* solely [soʊlːi]
* solely {{IPA|soʊlːi}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2015年7月2日 (木) 18:27時点における版

長子音(ちょうしいん)は子音の持続時間が長いもののことである。国際音声記号では子音の後に [ː] を付けて表す。長子音でない一般の子音は短子音と呼ぶ。重子音: gemination)とも呼ばれる。

短子音と長子音を音韻的に区別する言語としては日本語アラビア語イタリア語エストニア語カタロニア語デンマーク語ハンガリー語フィンランド語ラテン語ロシア語などが存在する。長さは言語によって異なり、日本語のように1モーラ分長くなる場合もある。また、エストニア語においては短・長・超長の三段階で意味を区別する。

破裂音破擦音の場合は、子音の持続時間が延長するのではなく、前に気流の停止が挿入され、これを合わせた時間が短子音より長くなる。

表記

日本語では子音の前に「」を用いて表す場合が多いが、鼻音については子音の前に「」を用いて表す。イタリア語やフィンランド語では子音を二つ重ねて pptt のように書き表す。アラビア文字ではシャッダを使用する。

ただし英語ドイツ語などでは子音字の重複は、長子音ではなく、その前の母音が短母音であることを表す。ロシア語では、子音字の重複が長子音を表す場合と表さない場合がある。朝鮮語で破裂音・破擦音・摩擦音の字母の重複は、長子音ではなく濃音を表す。

長子音を用いない言語の長子音

音韻的には英語に長子音は存在しないが、二つの単語の間にある子音が同じである場合、音声上は以下のように長子音化する事がある。

  • this saddle [ðɪˈsːædəl]
  • black coat [blæˈkːoʊt]
  • back kick [ˈbækːɪk]
  • crack cocaine [ˌkrækːoˈkeɪn]

しかし、重なる子音が破擦音である場合は起こらない。また、いくつかの方言においては副詞を作る接尾辞 -ly/l/ の後ろに来た場合なども長子音化する。

  • orange juice [ˈɒrɪndʒ dʒuːs]
  • solely [soʊlːi]

関連項目