「類 (アクセント)」の版間の差分
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! 一類 !! 子・戸 |
! 一類 !! 子・戸 |
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| '''こお''' '''とお''' || こ'''を''' と'''を''' |
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! 二類 !! 葉・日 |
! 二類 !! 葉・日 |
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| '''は'''あ '''ひ'''い || は'''を''' ひ'''を''' |
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! 三類 !! 木・手 |
! 三類 !! 木・手 |
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| き''' |
| き'''い''' て'''え''' || '''き'''を '''て'''を |
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: 一類…蚊・子・血・戸など |
: 一類…蚊・子・血・戸など |
2010年2月11日 (木) 03:00時点における版
アクセント語類、または語類とは、日本語で、アクセントのパターンに応じて単語を分類したものをいう。単語のアクセントは地方によって異なるが、どの単語がどの単語と同じアクセントになるかにはほぼ規則的な対応がみられる。たとえば、二拍名詞三類の「池」「花」「髪」は、東京では「いけが」「はなが」「かみが」と発音するが(太字は高く発音する部分)、京都ではいずれも「いけが」「はなが」「かみが」と発音し、高く発音する位置が変わってもグループそのものは変化しない。東京式のアクセントは京阪式と大きく異なるが、どの語類にどの単語が属するかは京阪式と東京式に共通のものである。
現代の東京方言においては、二拍名詞のアクセントパターンは3種類しかないが、語類は一類から五類まである。これは、語類が院政時代の京都のアクセントを元に分類されたものだからである。院政時代の京都の二拍名詞のアクセントは、一類が高高、二類が高低、三類が低低、四類が低高、五類が低降であり、五種類のアクセントパターンがあったとされる。また、動詞と形容詞は拍数に関わらず二つの類に分かれていた。しかしその後、これらの語類はいくつかの類の区別がなくなっていき、複数の類のアクセントが同じになるという現象が起きた。例えば二拍名詞では、京阪式アクセントでは二類と三類がともに高低となったため4種類のアクセントパターンに統合し、東京式アクセントでは更に四類と五類の区別もなく、3種類のアクセントパターンとなった。また、三拍以上の動詞・形容詞では、現代京都を中心に一類・二類の区別が失われてきている。
具体例
語のアクセントは助詞(「が」「に」「を」など)が付いた形で考える必要がある。つまり、東京式アクセントでは「鼻」と「花」はどちらも「はな」と発音され、一見すると区別がないようにも見えるが、助詞を付けて考えると「(鼻)はなが」、「(花)はなが」と発音され区別がある。京阪式アクセントでは、助詞を付けると自立語部分のアクセントまで変わることがある。
以下、語類の分類と、例として現代の京都・東京のアクセントを示す。「降」は一拍内で高から低に下がることを表す。()内は助詞。
名詞
- 一拍名詞 (京都では長音化する)
京都 | 東京 | ||
---|---|---|---|
一類 | 子・戸 | こお とお | こを とを |
二類 | 葉・日 | はあ ひい | はを ひを |
三類 | 木・手 | きい てえ | きを てを |
- 一類…蚊・子・血・戸など
- 京都で高高(高) 東京で低(高)
- 二類…名・葉・日など
- 京都で高低(低) 東京で低(高) (内輪型では高(低))
- 三類…絵・木・酢・田・手・荷・根・火・目・湯・輪など
- 京都で低高/低低(高) 東京で高(低)
- 二拍名詞
京都 | 東京 | ||
---|---|---|---|
一類 | 顔・風 | かおを かぜを | かおを かぜを |
二類 | 音・川 | おとを かわを | おとを かわを |
三類 | 色・山 | いろを やまを | いろを やまを |
四類 | 糸・稲 | いとを いねを | いとを いねを |
五類 | 雨・声 | あめを こえを | あめを こえを |
- 一類…姉・飴・蟻・牛・枝・顔・柿・風・金・壁・霧・口・国・腰・先・酒・皿・品・袖・棚・壺・爪・鳥・西・庭・布・箱・端・鼻・羽根・暇・紐・筆・笛・星・的・右・道・水・虫・森など
- 京都で高高(高) 東京で低高(高)
- 二類…石・岩・歌・音・型・川・紙・北・下・旅・次・梨・橋・旗・肘・昼・冬・町・胸・村・雪など
- 京都で高低(低) 東京で低高(低) (外輪型では低高(高))
- 三類…足・明日・池・犬・家・色・馬・裏・親・神・髪・岸・草・靴・熊・倉・事・米・坂・塩・島・谷・月・土・時・年・波・海苔・墓・恥・花・腹・晴れ・耳・物・山・指など
- 京都で高低(低) 東京で低高(低)
- 四類…跡・息・板・何時・糸・稲・海・肩・今日・今朝・汁・空・種・罪・杖・中・何・箸・肌・舟・味噌・麦など
- 京都で低高/低低(高) 東京で高低(低)
- 五類…秋・汗・雨・鮎・蜘蛛・琴・鯉・声・猿・常・露・鍋・春・窓・前など
- 京都で低降/低降(低)または低高(低) 東京で高低(低)
動詞
- 二拍動詞
- 一類…言う・行く・居る・産む・売る・置く・押す・追う・買う・貸す・聞く・着る・消す・知る・為る(する)・積む・飛ぶ・泣く・鳴く・似る・煮る・寝る・乗る・引く・踏む・焼くなど
- 京都で高高 東京で低高
- 二類…合う・有る・打つ・得る・書く・勝つ・来る・刺す・住む・立つ・付く・出る・取る・成る・飲む・吹く・降る・待つ・見る・読むなど
- 京都で低高 東京で高低
- 三拍動詞(五段活用)
- 一類…上がる・当たる・洗う・歌う・送る・飾る・変わる・嫌う・殺す・探す・沈む・進む・違う・使う・並ぶ・運ぶ・塞ぐ・曲がる・学ぶ・向う・笑うなど
- 京都で高高高 東京で低高高
- 二類…余る・急ぐ・祝う・動く・移る・起こす・落とす・思う・泳ぐ・狂う・騒ぐ・叩く・頼む・作る・届く・習う・走る・光る・防ぐ・守る・戻る・休む・許すなど
- 京都で高高高 東京で低高低
- 三拍動詞(一段活用)
- 一類…上げる・当てる・入れる・埋める・替える・消える・染める・告げる・抜ける・負ける・曲げる・燃える・止めるなど
- 京都で高高高 東京で低高高
- 二類…生きる・受ける・起きる・落ちる・下りる・覚める・過ぎる・建てる・耐える・遂げる・投げる・逃げる・晴れる・見える・分けるなど
- 京都で低低高 東京で低高低
- 四拍動詞
- 一類…与える・慌てる・生まれる・教える・聞こえる・伝える・並べる・働く・始める・忘れるなど
- 京都で高高高高 東京で低高高高
- 二類…集まる・覚える・数える・調べる・助ける・流れる・離れる・開ける・別れるなど
- 京都で高高高高 東京で低高高低
形容詞
- 二拍形容詞
- 一類…濃い
- 京都・東京ともに高低
- 二類…無い・良い
- 京都で低高 東京で高低
- 三拍形容詞
- 一類…赤い・浅い・厚い・甘い・荒い・薄い・遅い・重い・暗い・遠いなど
- 京都で高低低 東京で低高高
- 二類…熱い・痛い・多い・辛い・臭い・黒い・寒い・白い・高い・近い・強い・長い・早い・広い・深い・太い・古い・欲しい・細い・若い・悪いなど
- 京都で高低低 東京で低高低
- 四拍形容詞
- 一類…悲しい・優しい・宜しいなど
- 京都で高高低低 東京で低高高高
- 二類…厳しい・苦しい・詳しい・親しい・涼しい・正しい・楽しい・激しい・等しいなど
- 京都で高高低低 東京で低高高低
参考文献
秋永一枝(2001)『新明解日本語アクセント辞典』、三省堂
金田一春彦(2003-2006)『金田一春彦著作集』第5巻・第6巻・第7巻、玉川大学出版部
平山輝男ほか(1997)『京都府のことば』明治書院 、31頁-32頁
山口幸洋(2003)『日本語東京アクセントの成立』、港の人