「形声」の版間の差分

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形声字の表など
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'''形声'''(けいせい)とは、[[漢字]]の造字法を表す[[六書]](りくしょ)の一つ。'''象声'''、'''諧声'''ともいう。
'''形声'''(けいせい)とは、[[漢字]]の造字法を表す[[六書]](りくしょ)の一つである。'''象声'''、'''諧声'''ともいう。


== 構成 ==
== 構成 ==
事物の類型を表す記号(意符)と発音を表す記号(音符)を組み合わせて新しい字を作る。形声によって作られた漢字を[[形声文字]](けいせいもじ)という。漢字の90%以上が形声文字とも言われている。
事物の類型を表す記号(意符)と発音を表す記号(音符)を組み合わせて新しい字を作る。形声によって作られた漢字を[[形声文字]](けいせいもじ)という。漢字の 90% 以上が形声文字である。


例えば江(コウ)、河(カ)のように、左半分の「氵」(さんずい)によって、水に関することであること類推、右側の「工」や「可」でそのが表す語の音を推測る。
例えば(コウ)、(カ)、左の「[[水部|]]」(さんずい)が意符、水を表し、右側の「工」や「可」が音符、各字の音を表す。字典[[部首]]とされていものが、意符となることが多い


音符は音を表すが、まったくの[[表音文字]]とは異なり、ある程度、意味に関連があることがある。このため、[[宋代]]以降、音符のほうに意味を区別する語源があるのだとする[[右文説]]が唱えられた。例えば「晴」、「清」は「青」を音符とし、それぞれ「[[日部|日]]」、「氵」を意符とするが、どちらも「青」の意味と関連がある
漢字字典で部首とされているものが、意符となることが多い。


== 類型 ==
音符は音を表すのであるが、まったくの表音文字とは異なり、ある程度、意味に共通点がある場合がある。このため、[[宋代]]以降、音符のほうに意味を区別する語源があるのだとする[[右文説]](うぶんせつ)が唱えられた。
=== 左が意符、右が音符 ===
極めて多い。
{| class="wikitable" border="1" style="text-align:center"
! colspan="2" rowspan="2" |  
! colspan="3" | 音符
|-
! 右 !! 可 !! 申
|-
! rowspan="3" | 意符
! 亻
| 佑 || 何 || 伸
|-
! 口
| || 呵 || 呻
|-
! 礻
| 祐 || || 神
|}


=== 右が意符、が音符 ===
== 形声文字の類型 ==
多い。
#左が意符、右が音符
{| class="wikitable" border="1" style="text-align:center"
#右が意符、左が音符<br>切、期、故、戦、群、領…
! colspan="2" rowspan="2" | &nbsp;
#上が意符、が音符
! colspan="3" | 音符
#下が意符、上が音符 <br>梨、斧、想…
|-
#外が意符、内が音符<br>園、閥、衷、匡
! 工 !! 交 !! 吉
#内が意符、外が音符<br>聞、問、辯、辨
|-
#角が意符<br>穎(禾が意符、頃が音符)、雜(衣が意符、集が音符)、修(彡が意符、攸が音符)
! rowspan="3" | 意符
#角が音符<br>施(也が音符、その他の部分が意符)、敷(甫が音符)
! 力
| 功 || 効 || 劼
|-
! 攵
| 攻 || 效 ||
|-
! 頁
| 項 || || 頡
|}


=== 上が意符、下が音符 ===
== 造字の歴史的変遷 ==
多い。草 (艹 + 早)、雲 (雨 + 云)、宇 (宀 + 于) など。
歴史的に見ると、音符が先にあって、後に意符がつけられていった例が少なくない。
例えば、「然」はもともと「もえる」の意味であったが、「しかり」の意味が本義になってくると、もとの本義であった「もえる」の意味を表すために「火」つけて「燃」とした。「要」も「こし」から「かなめ」の意味が中心になってくると、元の「こし」は「腰」とするようになったなど


=== 下が意符、上が音符 ===
逆に後世では、新しい言葉がうまれる、つまり音の組み合わせが生まれると、形声によって新しい文字を作っていった。ここでの音符は意味の近さなどはあまり考慮されず、[[表音文字]]的に使われている。
多い。梨 (木 + 利)、斧 (斤 + 父)、想 (心 + 相) など。

=== 外が意符、内が音符 ===
[[構]]が意符の字は多い。園 (囗 + 袁)、閥 (門 + 伐)、衷 (衣 + 中)、術 (行 + 朮) など。

=== 内が意符、外が音符 ===
少ない。聞 (耳 + 門)、齋 (示 + 齊)、辯 (言 + 辡)、疆 (土 + 彊) など。

=== 一隅が意符、三隅が音符 ===
非常に少ない。修(彡 + 攸)、磨(石 + 麻)、雇(隹 + 戸)など。

=== 三隅が意符、一隅が音符 ===
[[繞]]や[[垂]]が意符の字は多い。遠 (辶 + 袁)、病 (疒 + 丙)、趣 (走 + 取) など。

== 造字の変遷 ==
歴史的に見ると、元の字に後から意符が付けられた例が少なくない。例えば、「然」はもともと「もえる」の意味であったが、「しかり」の意味がになると、本義を表すために「[[部|火]]」を加えて「燃」とした。同様に「要」も「こし」から「かなめ」の意味がになると、元の「こし」は「腰」とするようになった。

逆に後世では、新しい言葉がうまれると、形声によって新しい文字を作った。ここでの音符は意味はあまり考慮されず、[[表音文字]]的に使われている。





2008年1月10日 (木) 17:25時点における版

形声(けいせい)とは、漢字の造字法を表す六書(りくしょ)の一つである。象声諧声ともいう。

構成

事物の類型を表す記号(意符)と発音を表す記号(音符)を組み合わせて新しい字を作る。形声によって作られた漢字を形声文字(けいせいもじ)という。漢字の 90% 以上が形声文字である。

例えば「江」(コウ)、「河」(カ)は、左側の「」(さんずい)が意符で、水を表し、右側の「工」や「可」が音符で、各字の音を表す。字典で部首とされているものが、意符となることが多い。

音符は音を表すものだが、まったくの表音文字とは異なり、ある程度、意味に関連があることがある。このため、宋代以降、音符のほうに意味を区別する語源があるのだとする右文説が唱えられた。例えば「晴」、「清」は「青」を音符とし、それぞれ「」、「氵」を意符とするが、どちらも「青」の意味と関連がある。

類型

左が意符、右が音符

極めて多い。

  音符
意符

右が意符、左が音符

多い。

  音符
意符

上が意符、下が音符

多い。草 (艹 + 早)、雲 (雨 + 云)、宇 (宀 + 于) など。

下が意符、上が音符

多い。梨 (木 + 利)、斧 (斤 + 父)、想 (心 + 相) など。

外が意符、内が音符

が意符の字は多い。園 (囗 + 袁)、閥 (門 + 伐)、衷 (衣 + 中)、術 (行 + 朮) など。

内が意符、外が音符

少ない。聞 (耳 + 門)、齋 (示 + 齊)、辯 (言 + 辡)、疆 (土 + 彊) など。

一隅が意符、三隅が音符

非常に少ない。修(彡 + 攸)、磨(石 + 麻)、雇(隹 + 戸)など。

三隅が意符、一隅が音符

が意符の字は多い。遠 (辶 + 袁)、病 (疒 + 丙)、趣 (走 + 取) など。

造字法の変遷

歴史的に見ると、元の字に後から意符が付けられた例が少なくない。例えば、「然」はもともと「もえる」の意味であったが、「しかり」の意味が主になると、本義を表すために「」を加えて「燃」とした。同様に「要」も「こし」から「かなめ」の意味が主になると、元の「こし」は「腰」とするようになった。

逆に後世では、新しい言葉がうまれると、形声によって新しい文字を作った。ここでの音符は意味はあまり考慮されず、表音文字的に使われている。