ロマンシュ語訳聖書

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スイスの言語分布
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ロマンシュ語訳聖書(ロマンシュごやくせいしょ)では、キリスト教聖書ロマンシュ語への翻訳を扱う。

ロマンシュ語はスイスの第四の国語として認められていて[1]、おもにスイス東部(代表都市はクールなど)で使われているが、話者は少なくなっていて、危機に瀕する言語である。インド・ヨーロッパ語族ロマンス語派のレト・ロマンス語群に属する言語で、おおまかにいって昔のラテン語の様相を多く残しているといわれる。また、スルシルヴァ、ストシルヴァなどの方言も顕著である[2]

概要[編集]

ロマンシュ語訳聖書は16世紀に初めて作られた[3]1560年、ロマンシュ語初期の文学者ヤヒアム・ビフルン (Jachiam Tütschett Bifrun) が新約聖書 «L'g Nuof Sainc Testamaint da nos Signer Jesu Christ» を翻訳した。

17世紀になって、スルシルヴァ方言 (Sursilvan) とストシルヴァ方言 (Sutsilvan) の著作が出てくる。1648年、ルシ・ガブリエル (Luci Gabriel) によるスルシルヴァ方言による新約聖書が翻訳された。その後、こうした方言による出版が盛んになったのは、スルシルヴァ方言がプロテスタント地域、ストシルヴァ方言地域がカトリック地域であった事情もある。

1717年から1719年にかけて、聖書全書 Bibla da Cuera が出版された[4]

その後、20世紀後半になって、現代ロマンシュ語訳聖書の作成がプロテスタント(スイス改革派教会など)とローマ・カトリック教会の共同訳として、1968年以来ヘブライ語ギリシャ語の原典から翻訳が行われている。全体で5分冊で Bibla ecumena romontscha シリーズとして出版の予定で、1988年に1冊目の新約聖書、2004年に2冊目の旧約聖書預言者書、2010年に詩篇が出版された。2014年現在、詩編と詩歌が併せて3冊目として出版されたばかりで、残るはモーセ五書歴史書である[5]

Translation ヨハネ 3:16
Romansch Lower Engadine dialect. Unknown source [6]. Perche cha Deis ha tant amâ il muond, ch’el ha dat seis unigenit figl, acio cha scodün chi craja in el non giaja a perder, ma haja la vita eterna.
Romansch Upper Engadine dialect. Unknown source. Perche Dieu ho taunt amo il muond, ch’el ho do sieu sulgenuieu Figl, acciò cha scodün, chi craja in el, nun giaja a perder, mo hegia la vita eterna.
Romansch Oberland dialect. Unknown source. Parchei Deus ha teniu il mund aschi car, ca el ha dau siu parsulnaschiu figl, par ca scadin, ca crei en el, vomi buc á perder, mo hagi la vita perpetna.

参照項目[編集]

脚注[編集]

外部リンク[編集]