ラーン川
ラーン川 (ラーンがわ、Lahn)は、ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州、ヘッセン州、ラインラント=プファルツ州を流れるライン川右岸(東側)の支流。全長242km。
行程
[編集]ノルトライン=ヴェストファーレン州南東部、ヘッセン州との州境付近のロタール山地南東部にあるロタールシュタイク(有名なトレッキングコース)沿いのネトフェンという町、そのラーンホフと呼ばれる地域にあるラーンコプフという標高612mの斜面にラーン川の水源地はある。川はまず東に向かい、グラーデンバッハ山地の北部をカルデルンまで至り(上部ラーン渓谷)、ヴェトシャフト盆地の南縁を形作る。
ケルベで、フォーゲルスベルク山地から流れ下ったオーム川と合流する。ここから流れは南に向きを変え、マールブルク=ギーセン・ラーン渓谷となる。ここで川は一時、ライン・シーファー山地を離れ、雑色砂岩質の台地(マールブルクの背景となるラーン山地)であるマールブルク(城、エリーザベト教会、旧市街)地域を切り開いて流れる。この後、シュタウフェンブルクの下流で、ギースナー盆地となる。ローラーで東から前フォーゲルスベルク山地に源を発したルムダ川が、ギースナーでは小川でありながら町の発展に重要な役割を果たしたヴィーゼック川が、それぞれ合流する。ヴェッツラー(大聖堂、旧市街、博物館)では、最も大きな支流であるディル川(全長約69km)と合流する。ヴェッツラー付近では、ラーン川とディル川とによってライン山地のヘッセン州部分は、タウヌス(南部)、ヴェスターヴァルト(北西部)、グラーデンバッハ山地(北東部)の三つの部分に分けられる。ラーン川はここから再びライン山地に入る。
ヴェッツラー以降、渓谷は徐々に狭くなり、ロインからヴァイルブルガー・ラーンタール山地に入る。この山地の上流部分である、レーンベルク山地区は、有名なゼルター鉱泉をはじめ、鉱泉が存在する。その下流で川は南に向きを変え、谷底状の緩やかな起伏の地形を流れてゆく。川はヴァイルブルクの町で大きく湾曲しており、ドイツでも類を見ない舟のためのトンネルが掘られている。その後、ホーホタウヌスから流れてきたヴァイル川がラーン川に合流する。アウメナウ付近で進路を再び西に向け、自らがえぐった深さ50mほどの肥沃なリムブルク盆地の底を流れる。ここで2つの支流タウヌスに端を発したエムスバッハ川とヴェスターヴァルトに源流を持つエルプバッハ川とがラーン川に合流する。この付近でデボン紀の石灰の岩盤(ラーンマーモル:ラーンの大理石)が現れ、リムブルク・アン・デア・ラーンの大聖堂は、この大理石によって飾られている。またこの辺りから谷は広さを増す。ディーツで南から流れてくるアール川を容れ、ファッヒンゲン付近の盆地やシーファー山地を200mもの深さに刻み込んだ下部ラーン渓谷を下る。
オバーンホフでゲルバッハ川がラーン川に合流する。ナッサウやファッヒンゲンの鉱泉で知られるバート・エムスを過ぎて、水源から242km、ラーンシュタイン近くの標高61mの地点で、ライン川に注ぐ。
歴史
[編集]- 石器時代にはすでに、ラーン川地域に人が住んでいた。たとえばディーツ近郊やヴェッツラーでこの時代の発掘品が見つかっている。
- ローマ時代には、おそらくエムス城に利用されていた。ヴェッツラーの町はずれヴァルトギルメスで見つかったローマ時代の町の設備はかなり充実している。
- 600年前から、Laugona、Logana、あるいはLogeneといった名称で呼ばれた。名前は時代によってたびたび変化した。この名前の意味は分かっていない。ゲルマン以前の言葉に由来するのかもしれない。
- 13世紀になると、現在マールブルク=聖ヤコブス病院のある場所に、巡礼者のための宿ができた。これは、おそらくラーン川を渡ってサンティアゴ・デ・コンポステーラに向かう巡礼者のためであると思われる。
- 1365年が、現在の名称が使われた事が確認できる最も古い年である。
- 1600年頃には、舟の航行が可能になり、牽引路が敷設された。年4-5ヶ月は航行が可能で、約500艘の舟が船団に所属した。
- その後、徐々に航路は拡大し、1808年からはディーツ近くのアール川との合流点まで航行できるようになった。貨物はここで陸路に積み替えられた。
- 1964年にラーン川の拡張が完成し、300tクラスの船舶が航行できることとなった。
- 1981年、ラーン川の貨物輸送は終了。今日では、ラーン川を航行するのは、専らレジャー目的の船舶のみである。
- 1984年、ラーン川沿いに歴史的な洪水が発生。多大な損害を被った。この後、中央洪水警告サービスやギーセン行政地域(Regierungsbezirk Gießen)による洪水防止策が講じられた。
産業と行楽
[編集]ラーン川の中下流域は、舟で航行することができ(リムブルク近郊のデールンまでは途切れることなく遡上できる)、いくつかの水門も用意されている。カヌーや手漕ぎボートあるいは小型モーターボートによるレジャー客の水路として有用である。モーターのない船舶専用の水路はマールブルク近くのロートから利用することができる。
ラーン川は、また、様々な手段で楽しめるように開発されている。観光街道のラーンの休日街道 (de: Lahn-Ferien-Straße) に沿って、ラーン渓谷自転車道 (de: Lahntal-Radweg) が整備されている。これらには、フロイディンクとマールブルクの間に上部ラーン渓谷鉄道 (de:Obere Lahntalbahn)、マールブルクとギーセンの間にはマイン=ヴェーザー鉄道 (de:Main-Weser-Bahn)、ギーセンとフリードリッヒスゼーゲンの間にはラーン渓谷鉄道 (de:Lahntalbahn)がそれぞれ併走している。ハイカーにはラーンヘーヘンヴェグ(de:Lahnhöhenweg)という295kmのトレッキングコースもある。
ラーン川には19の水力発電所が設けられている。
自然環境
[編集]1999年の河川水質等級(クラスIからVまで)で、ラーン川は、生物学的等級がクラスII、化学的等級がクラスIと分類された。いずれも自然に近い状態だと考えられる。
支流
[編集]ラーン川に合流する支流を以下に記す。並び順は上流から下流の順。( )内は、スペル、ラーン川から見た合流方向と比較的大きな支流については全長を示す。
水源からマールブルクまで
マールブルクからヴェッツラーまで |
ヴェッツラーからリムブルクまで
リムブルクからラーンシュタイン
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他の川
[編集]流域の街
[編集]- ネトフェン(Netphen)
- バート・ラースフェ(Bad Laasphe)
- ビーデンコプフ(Biedenkopf)
- マールブルク(Marburg (Lahn))
- ギーセン(Gießen)
- ヴェッツラー(Wetzlar)
- ヴァイルブルク(Weilburg)
- ルンケル(Runkel)
- リムブルク・アン・デア・ラーン(Limburg a.d. Lahn)
- ディーツ(Diez)
- ナッサウ(Nassau)
- バート・エムス(Bad Ems)
- ラーンシュタイン(Lahnstein)