ボーエン比

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ボーエン比(ボーエンひ、英語: Bowen ratio)とは、乾湿を表す指標である[1]。天文学者アイラ・ボーエンに由来する。

顕熱フラックスsensible heat flux)を潜熱フラックスlatent heat flux)をは水の蒸発時に必要な潜熱は水の蒸発量)とすると、ボーエン比は以下のように表される[1]

一般にボーエン比は乾燥地域で大きくなり、湿潤地域や水域で小さくなる[1]。乾燥地域では水分の蒸発量が小さく[2]、潜熱フラックスの値が小さくなるため顕熱フラックスが大きくなる傾向にある[1]。一方、湿潤地域では潜熱フラックスの値が大きくなる[1]

求め方[編集]

ボーエン比は異なる2つの高度における平均気温・平均比湿の観測から求められる[3]。大気が中立[注釈 1]であれば、

と表せる(ただし定圧比熱[3]

熱収支ボーエン比法[編集]

熱収支ボーエン比法energy balance Bowen ratio method)により、潜熱フラックスや顕熱フラックスの値を求めることができる[3]。この方法はボーエン比法Bowen ratio method)ともよばれる[3]。この方法は熱収支の観測でも用いられる[3]。また蒸発散量の主要な観測方法の1つでもある[5]

熱収支式は簡略化して、

と表せる(ただし、は正味の放射量、は地中熱流量)が、この式をボーエン比の式と組み合わせると、

が成立する[3]。すなわち、異なる2高度における平均気温・平均比湿、および正味の放射量・地中熱流量(soil heat fluxの観測から、潜熱フラックスや顕熱フラックスの値が求まる[3]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 温位とするとき、が成り立つ場合[4]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e 杉田 2009, p. 34.
  2. ^ 柏木 2008, p. 31.
  3. ^ a b c d e f g 浅沼 2009, p. 93.
  4. ^ 田中 2017, p. 114.
  5. ^ 浅沼 2009, p. 89.

参考文献[編集]

  • 柏木良明 著「顕熱と潜熱」、高橋日出男・小泉武栄(編) 編『自然地理学概論』朝倉書店〈地理学基礎シリーズ〉、2008年、30-31頁。ISBN 978-4-254-16817-4 
  • 杉田倫明 著「エネルギーと水循環」、杉田倫明・田中正(編著) 編『水文科学』共立出版、2009年、21-50頁。ISBN 978-4-320-04704-4 
  • 浅沼順 著「蒸発散」、杉田倫明・田中正(編著) 編『水文科学』古今書院、2009年、75-102頁。ISBN 978-4-320-04704-4 
  • 田中博『地球大気の科学』共立出版〈現代地球科学シリーズ〉、2017年。ISBN 978-4-320-04711-2