デンドロビウム・キンギアナム

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デンドロビウム・キンギアナム
デンドロビウム・キンギアナム
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 単子葉植物綱 Liliopsida
: ラン目 Orchidales
: ラン科 Orchidaceae
亜科 : セッコク亜科 Epidendroideae
: セッコク属 Dendrobium
: デンドロビウム・キンギアナム Dendrobium kingianum
図版

デンドロビウム・キンギアナム Dendrobium kingianum は、セッコク属ラン科植物。洋ランの一つとして栽培される。低温への耐性が高く、栽培の簡単な種としても知られる。

概要[編集]

デンドロビウム・キンギアナムは、単にキンギアナムとも呼ばれ、日本では広く普及しているランである。ジャンルとしては洋ランではあるが、それ以上に普通に扱われている面もある。耐暑性、耐寒性共に優れており、本州南部以南では年間を通じて屋外で育てられる。花は小さいが美しく、また香りがよい。

本種自体も栽培の簡単な洋ランとして広く栽培される。が、交配親としても用いられる。この種に関わる品種をまとめてキンギアナム系という。また、本種と近縁なデンドロビウム・スペシオサムとの雑種はデンドロビウム・スペシオキンギアナムの名で呼ばれる。

特徴[編集]

常緑の多年生草本。ほぼ直立する偽球茎を束生し、高さ8-30cmくらいになる[1]。偽球茎は細くて硬く、先端に向けてやや細まる。葉は偽球茎の先端に集まって出て、長楕円状披針形、革質で硬く、深緑で鈍いつやがある。

花は茎頂から立ち上がる花茎の上に3-10個ほどつく。個々の花には花の長さほどの花柄がある。花径は2cmほどで、セッコクのようにあまり花弁が開ききらない形。色は赤紫だが、白から濃紫色まで変異が多い。唇弁は丸く、濃い紫の斑点が出る。よい香りを放つ。冬前後に開花する。

分布と生育環境[編集]

オーストラリアのニュー・サウス・ウエールズとクイーンズランドに分布する。日当たりのよい岩の上に着生している[2]

分類[編集]

本種には変異が多く、以下のような変種も知られる[3]

  • var. silcockii:花は白くて唇弁のみが淡紫色
  • var. pulchrrimum:花は小さくて藤色、花柄が小花柄より長い。

他に種内変異としては白花品(f. album)がある。

利害[編集]

観賞用に栽培される。洋ランの範疇ではあるが、それ以上に育てやすい鉢花として受け入れられている。耐寒性が強く、日本本土でも暖地であれば加温なしで越冬するので、鉢植えで庭先に半ば放置された状態でもよく育つ。逆に低温を経験させないと花付きが悪くなる。屋内に取り込む場合も暖房を入れないところで十分である。

強光を好み、真夏以外は直射日光の元で育てられる。葉焼けも起こしにくい。光が足りないと高芽が出やすくなる[4]

鑑賞の上では花は小さいが、多数が咲いて色が美しく、また香りがよいのが美点である。

キンギアナム系[編集]

本種と近縁種との交配による園芸品種も多数ある。それらはまとめてキンギアナム系という。いずれも小柄なものだが耐寒性があり、栽培は容易く、鉢物として普及している。花色としては赤紫から白が多いが、黄色などの品種も作出されている。

また、近縁のタイミンセッコク(デンドロビウム・スペシオサム D. speciosum )も園芸的に古くから知られた種で、本種より遙かに大きくなる。この種と本種との交雑種はスペシオキンギアナム(D. Specio-kingianum)と呼ばれ、さらに略してスペキンとも呼ばれる[5]。キンギアナムに形は似て遙かに大きくなり、花数も多くなり、鑑賞価値は高い。スペシオサムに関わる交配品はスペシオサム系と呼ばれるが、これもキンギアナム系に含めることもある。

それらの多くは秋から冬に開花する。やはり秋に低温を経験させないと花つきがよくない。

出典[編集]

  1. ^ 以下、主として土橋(1993)p.211
  2. ^ 岡田(2011)p.96
  3. ^ 唐澤p.198
  4. ^ 岡田(2011)P.96
  5. ^ 石田(2001)p.26

参考文献[編集]

  • 土橋豊、『洋ラン図鑑』、(1993)、光村推古書院
  • 岡田弘、『咲かせ方がよくわかる はじめての洋ランの育て方』、(2011),主婦の友社
  • 向坂好生、『洋ランの育て方完全ガイド NHK趣味の園芸別冊』、(2008)、NHK出版 p.78-79
  • 石田源次郎、『デンドロビューム NHK趣味の園芸 よくわかる栽培12か月』、(2001)、NHK出版