テクノスリラー
テクノスリラー(英語:techno-thriller)とは、政治、軍事、諜報、陰謀、科学などの技術の脅威を扱う、スリラーのジャンルの文学である。スパイ小説、戦争小説、SF(歴史改変SF)の内容を含むことが多く、コンピュータやバイオテクノロジーを扱った設定も多い。 このジャンルは、20世紀初めに現れて、20世紀中頃にジャンルとしての存在を認知されるようになった。[1]
歴史
[編集]20世紀初めには、テクノスリラーはSFのサブジャンルと見なされていたが、その人気は顕著に広がっていった。[1] 最初のテクノスリラーの一つは、アリステア・マクリーン『悪魔の兵器』(1962年)と考えられているが、第二次世界大戦前後のソ連のSF小説にはテクノロジーの詳細さと複雑なスパイもののプロットによりテクノスリラー的とされる作品が多く、例えばグリゴリー・アダモフ『The Mystery of the Two Oceans』(1939年)などが挙げられる。 現代テクノスリラーの父と見られるのはマイケル・クライトンとトム・クランシーで [2]、 クライトンの『アンドロメダ病原体』(1969年)とクランシー『レッド・オクトーバーを追え』(1984年)が典型例だが、それ以前にも同様な素材の作品が描かれており、クレイグ・トーマスもBBCニュースにて初期の革新者と紹介された[3]。
スタイル
[編集]テクノスリラーでは特にテクノロジーに関する緻密な描写があり、それは軍事要素についてのことも多い。[4] 幅広い視野で展開されるために、同時代に関する思弁的な要素を見出されることもある。また近未来SF、軍事小説、スパイ小説などのジャンルと重なることもある。[5] ただし現代社会におけるテクノロジーの役割の大きさから、スリラー小説の多くはテクノスリラー的要素を持っている。そしてテクノスリラーが現在または近未来のテクノロジーを強調することで、ハードSFにも近接する。軍事的、政治的な活動を題材にすることで、謀略小説や破滅SFと重なることもある。テクノロジーは常に変化し続けるために、テクノスリラーにも新しい視点がもたらされ続ける。[1]
バリエーション
[編集]テクノスリラーには以下のような種類がある。
- 軍事テクノスリラー : 主に軍事的な問題をテーマにする。軍の制度や、戦争に関わる技術が扱われる。もっとも著名な作家にトム・クランシーがいる。[6]
- スパイ・テクノスリラー : スパイ活動をテーマにする。SF的な要素が含まれる場合はSpy-Fiとも呼ばれる。[6]
- 暗号テクノスリラー : コンピューターネットワーク上で物語の多くが展開される。ダン・ブラウン『デジタル要塞』(1998年)やニール・スティーヴンスン『クリプトノミコン』(1999年)などがある。[6]
- 災害テクノスリラー : 地震などの自然災害、戦争・核戦争、人類滅亡、世界の終末などをテーマにする。その影響は地域にとどまらず全世界的なものにもなる。もっとも著名な作家にボイド・モリソンがおり、クライブ・カッスラーとの共作『戦慄の魔薬<タイフーン>を掃滅せよ!』(2017年)などのベストセラーがある。[6]
- SFテクノスリラー : 舞台は未来に設定され、SF小説の体裁をとる。科学的な仮説に基づいた『ジュラシック・パーク』(1990年)がその例。[6]
代表的作家
[編集]脚注
[編集]- ^ a b c “Themes : Technothriller : SFE : Science Fiction Encyclopedia”. www.sf-encyclopedia.com. 2019年5月6日閲覧。
- ^ “Analysis of Suspense, Surprise and Artistic Unity in Michael Crichton's 'Jurassic Park'.”. 2022年2月18日閲覧。
- ^ “Techno thriller writer Craig Thomas dies”. BBC News. (8 April 2011) 15 April 2014閲覧。
- ^ Minzesheimer, Bob (3 October 2013). “Appreciation: Tom Clancy mastered the techno-thriller”. USA Today 15 April 2014閲覧。
- ^ Boush, Sam (19 July 2018). “Crypto, Sci-Fi, Soldiers, Spies (and Disasters): 5 Varieties Within the Technothriller Genre”. Writer's Digest 19 July 2018閲覧。
- ^ a b c d e Column, Guest (2018年7月19日). “Crypto, Sci-Fi, Soldiers, Spies (and Disasters, of Course): 5 Varieties in the Technothriller Genre” (英語). Writer's Digest. 2019年5月6日閲覧。