サルベストロール

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サルベストロール(英語:salvestrol)はポリフェノールの一種で、ファイトアレキシン(phytochemical)という植物の二次代謝産物である。無農薬栽培された青果物に多く含まれる天然の成分で、ラテン語の『サルビア』(救う)を語源としている。

「サルベストロール」は、科学的ではなく薬理学的に定義された新しい植物栄養素クラスである。サルベストロールを定義するのは、植物由来化合物であり、CYP1B1酵素で代謝されて抗ガン成分である代謝物を生成するかどうかである。

「サルベストロール」は、 デ・モントフォード大学(英)で抗がん剤の研究中に2002年ゲリー・ポッター博士(Gerard A. Potter)[1]により発見された。「サルベストロール」の郡には、最終的に50種類以上の植物栄養素が含まれると想定され、現在も探索は継続されている。

(Salvestrols: Nature’s Defence Against Cancer: Linking Diet and Cancerより一部引用)

生成のしくみ[編集]

植物の表面にカビが付着すると、その刺激によってサルベストロールが生成され、植物をカビから守る働きをする。植物の種類によって生成されやすさに差はあるものの、私たちが目にするほぼ全ての野菜、果物、ハープに存在すると考えられている。しかし、農薬や防カビ剤が使用されるとカビの刺激がなくなり、サルベストロールの含有量が著しく低下することが分かっている。すなわち、オーガニック(無農薬)栽培の野菜や果物ほどサルベストロールが豊富に含まれ、サルベストロールの含有量の差は3倍から30倍にもなるという。

CYP1B1との関係[編集]

サルベストロールは、一般的な植物に含まれるポリフェノールの一種でありながら、人体内でガン細胞に取り込まれると抗ガン物質に変化するプロドラッグだ[2]。体内に入ると、ガン細胞特有の酵素であるCYP1B1[3][4](シップワンビーワン)によって代謝され、ガン細胞のアポトーシス(細胞死)を誘引する。正常細胞にはCYP1B1がほぼ存在しないため、サルベストロールを取り込んでも影響がない。CYP1B1がガンの種類に関係なくほぼすべてのガン細胞で発現するということは、1997年にイギリスで発見され、ハーバード大学のダナ・ファーバー癌研究所などでも確認されている。

摂取[編集]

サルベストロールは野菜、果物・ハーブの多皮・内皮・種・根の部分に多く含まれ、皮の場合は黒いぷつぷつとした斑点として現れることもある。オーガニックの農作物は、一般的に流通している農作物に比べて変色していたり虫食いがあることもあるが、そのような刺激を受けて、栄養が多い植物が育つのだ。

■野菜

サルベストロールは様々な野菜に含まれるが、特にアブラナ科の野菜などに多い。

カビ菌が付きやすい皮の部分にサルベストロールが多く含まれる。

アボカド、キャベツ、メキャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、ニンニク、オリーブ、タマネギ、アスパラガス、ゴボウ、エンドウ、ソラマメ、セロリ、マメ、キュウリ、クレソン、パセリなど。

■果実

特にベリー系や柑橘類に多く含まれる。

他にも、リンゴ、ブルーベリー、ラズベリー、オレンジ、タンジェリンオレンジ、イチジク、ブドウ、ヨウナシ、プラムなど。

■ハーブ

バジル、ルイボス、ローズヒップ、ローズマリー、パクチー、セイジ、カモミール、タイム、ミントなどのハーブ類など。

サルベストロールとレスベラトロール[編集]

実は、CYP1B1と代謝反応を起こす天然物質として、最初に発見されたのはレスベラトロール[5]だった。ポッター博士は研究の過程で、DMU-212の化学構造がよく知る天然化合物と非常に類似することに気付いたのである。2002年の論文で、レスベラトロールがCYP1B1による代謝で、ピセタノールという抗ガン物質に変化することを発表した。しかし更なる研究の中で、レスベラトロールの濃度を上げていくと、自己阻害作用が発生することが分かった。高用量のレスベラトロールは、CYP1B1の代謝活性を遮断し、結果としてガン細胞にダメージを与えることは無かった。

レスベラトロールの研究結果により、天然抗ガン成分として振る舞う、別の食物由来化合物の探索が促された。研究チームは果物、野菜およびハーブ類の詳細な分析を行い、結果として20種類を超える天然食物由来化合物が発見され、分析されている。これらはいずれもフィトアレキシンという植物の二次代謝産物であり、CYP1B1で代謝され、抗ガン機能を持つ代謝物に変化する特性を持つ。ポッター博士は、 この新しいクラスの植物栄養素を「サルベストロール」と命名した。

出典[編集]

  1. ^ Ware, William R. (2009年3月). “Nutrition and the prevention and treatment of cancer: association of cytochrome P450 CYP1B1 with the role of fruit and fruit extracts”. Integrative Cancer Therapies 8 (1): 22–28. doi:10.1177/1534735408328573. ISSN 1534-7354. PMID 19116217. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19116217. 
  2. ^ “Pharmacognosy” (英語). Journal of Pharmacy and Pharmacology 59 (S1): A–59-A-63. (2007年9月). doi:10.1211/002235707781850122. ISSN 0022-3573. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1211/002235707781850122. 
  3. ^ Murray, G. I.; Taylor, M. C.; McFadyen, M. C.; McKay, J. A.; Greenlee, W. F.; Burke, M. D.; Melvin, W. T. (1997年7月15日). “Tumor-specific expression of cytochrome P450 CYP1B1”. Cancer Research 57 (14): 3026–3031. ISSN 0008-5472. PMID 9230218. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9230218. 
  4. ^ Maecker, Britta; Sherr, David H.; Vonderheide, Robert H.; von Bergwelt-Baildon, Michael S.; Hirano, Naoto; Anderson, Karen S.; Xia, Zhinan; Butler, Marcus O. et al. (2003年11月1日). “The shared tumor-associated antigen cytochrome P450 1B1 is recognized by specific cytotoxic T cells”. Blood 102 (9): 3287–3294. doi:10.1182/blood-2003-05-1374. ISSN 0006-4971. PMID 12869499. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12869499. 
  5. ^ Potter, G A; Patterson, L H; Wanogho, E; Perry, P J; Butler, P C; Ijaz, T; Ruparelia, K C; Lamb, J H et al. (2002年3月4日). “The cancer preventative agent resveratrol is converted to the anticancer agent piceatannol by the cytochrome P450 enzyme CYP1B1”. British Journal of Cancer 86 (5): 774–778. doi:10.1038/sj.bjc.6600197. ISSN 0007-0920. PMC PMC2375304. PMID 11875742. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2375304/.