電界放射顕微鏡

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電界放射顕微鏡(でんかいほうしゃけんびきょう、英名:Field Emission microscope;FEM)は尖鋭化した試料先端部を陰極として電子を放射することにより、実空間実時間で観測できる投影型の顕微鏡

概要

金属や半導体の表面に高電界を印加すると電界放出により、ポテンシャル障壁が変形してトンネル効果によって電子が真空中に放射されるので、この放射された電子を電気力線に沿って加速することによって蛍光スクリーンに投影する方式で拡大する装置を電界放射顕微鏡(FEM)と呼ぶ[1]

投影型の顕微鏡で、尖鋭化された陰極自体が試料で針先端の微小領域での電子放射現象がスクリーンに投影されることで拡大され、観察できる。加速電圧によって電子線の波長が決まり、画像化に使用される電子線の波長によって空間分解能が制限される電子顕微鏡とは異なり、極めて単純な構造でありながら、FEMは20Å程度の解像度とおよそ10万倍の拡大率を備える[1]。探針にはタングステンのような高融点の材料が使用される。

特徴

  • FEMの画像は仕事関数に依存した像になるので、回折パターンから試料の結晶方位がわかる。
  • 表面に吸着物がある場合にも回折パターンに反映されるので試料表面上の吸着物の動きを確認できる。

脚注

  1. ^ a b 電界放射顕微鏡(FEM)とは”. 2017年6月16日閲覧。

参考文献

  • 金鉉佑, 「電界放出顕微鏡による金属表面の観察」『真空』 5巻 11号 1962年 p.435-449, doi:10.3131/jvsj.5.435
  • 菅田栄治, 文道平, 「電界放射顕微鏡用陰極の加熱による形状変化」『応用物理』 38巻 11号 1969年 p.1024-1031, doi:10.11470/oubutsu1932.38.1024
  • 桜井利夫, 橋詰富博, 「電界イオン-走査トンネル顕微鏡」『日本物理学会誌』 47巻 1号 1992年 p.34-40, doi:10.11316/butsuri1946.47.34
  • 岩田達夫, 「電界放射顕微鏡を用いた圧力測定」『東海大学紀要. 工学部』 31.2 (1991): 107-111, NAID 110000193941

関連項目