大爾朱氏

爾朱英娥（じしゅ えいが、? - 556年）は、北魏の孝荘帝元子攸の皇后。爾朱栄の娘。孝荘帝の死後は高歓の側室となった。本貫は秀容郡。

経歴

はじめ、英娥は孝明帝の妃嬪として北魏の後宮に入った。528年、孝明帝が胡太后に殺害され、胡太后が元釗を皇帝に擁立すると、爾朱栄は胡太后に反発して起兵し、長楽王元子攸を皇帝（孝荘帝）に擁立して、胡太后と元釗を殺害した。爾朱栄が大将軍となって北魏の朝廷を牛耳ると、娘の英娥を孝荘帝の皇后として立てた。

530年、孝荘帝は爾朱栄をおびき寄せて殺害した。爾朱兆と爾朱世隆はいったん逃亡したが、長広王元曄を擁立して、洛陽を攻め落とし、孝荘帝を拘束して晋陽に送り、間もなく殺害した。

孝荘帝が死去すると、英娥は高歓の側室として再婚した。高浟を生み、大爾朱氏と号した。高歓の正妻の婁昭君に対しては、会うときに必ず束帯を着けて、下官を自称した。高歓が柔然の蠕蠕公主を迎えて帰ると、英娥は木井の北に迎え、蠕蠕公主と前後に列を分かれ、互いに会わなかった。蠕蠕公主が角弓を引いてトビを仰ぎ射つと、トビは矢に当たって落ちた。英娥が長弓を引いてカラスを射ると、一発で命中した。高歓は喜んで「わたしにこの二婦人があれば、並んで賊を討つことができるだろう」と言った。後に英娥は出家して尼となり、高歓は彼女のために仏寺を建立した。

550年、北斉が建てられると、彼女の子の高浟は彭城王に封ぜられ、英娥もまた彭城王太妃に封ぜられた。556年、文宣帝が酒に酔って英娥に無礼を働こうとし、英娥はこれを拒んだので、文宣帝に殺害された。

伝記資料

• 『北史』巻十四 列伝第二 后妃下