枕草子絵詞
枕草子絵詞(まくらのそうしえことば)は、『枕草子』の日記章段の印象的な場面を抽出して絵画化した絵巻。枕草子絵巻(まくらのそうしえまき)とも言う。個人蔵、重要文化財。
鎌倉末期、14世紀の初頭に成立。現存は一巻、詞・絵各七段のみだが、『看聞御記』(永享10年12月3日条、西暦1438年12月19日)に「清少納言枕草子絵二巻」とあり、現存本はその残闕といわれる[2]。
詞書に藍色の雲形文様を四隅に漉き込んだ料紙を使い、金銀泥で下絵を施してある。本文は三巻本系統、書風は伏見院流の二人の男性の筆と見られ、後光厳院をその一に当てる説もある。絵の方は女筆であり、伏見院皇女進子内親王の説もあるが不詳。ほぼ単色の墨絵で、僅かに唇に朱色を点した。人物の輪郭には細い墨の線を、髪や調度品には濃い焦墨を使いわけ、吹抜屋台・引目鉤鼻の技法を用いた。構図は精巧にして無機的で、白描大和絵の典型とされる。
現存する章段
章段の序列は流布本による。
- 第83段「職の御曹司におはしますころ、西の廂に」(二場面)
- 第89段「無名といふ琵琶の御琴」
- 第100段「淑景舎、春宮にまゐり給ふ」
- 第123段「八幡の行幸」
- 第130段「故殿の御ために」
- 第132段「五月ばかりに、月もなくいとくらき夜」
ギャラリー
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「淑景舎、春宮に参り給ふほどのことなど」の段。登華殿東廂の廊。
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「無名といふ琵琶の御琴を」の段。帝が定子のところへ琵琶を持ってきた場面。
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一条帝の八幡(石清水)行幸の場面。画面は葱花輦(そうかれん)に乗って還幸する一条帝を描く。
参考文献
- 『葉月物語絵巻・枕草子絵詞・隆房卿艶詞絵巻』(日本絵巻大成10) 中央公論社刊