懈怠 (法学)

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懈怠(かいたい、英語:laches)とは、法律において実施すべき行為を行わずに放置することを指す。仏教用語の懈怠と同様、けたいとの読みがなされることもある。

法理としての原則

英米法における懈怠の原則

エクイティ(衡平法)においては、自らの権利を行使しようとせず、「権利の上にあぐらをかく」ことで適切な時期に権利行使を行わなかった者を救済しないという法理(doctrine of laches)が適用される。

懈怠は、形態としては、遅延行為に対する禁反言(estoppel)にあたる。

例えば、被害額が増加していることがわかっているにも関わらず、それとともに賠償金額が増える可能性を知りながら賠償請求を遅らせるような行為は、賠償請求しないような意思表示を事前にしておきながら意図的に後になって請求する旨を表明したとみなされ、被害者であっても公正では無い行為をとったため救済されないと解される。

日本における懈怠の法理

懈怠の法理は、日本法においても考慮され、民法民事訴訟法などにおいて以下のような法文として見ることができる。

  1. 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
  2. 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
  3. 権利の濫用は、これを許さない。
  1. 裁判所は、民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。

これらの法に基づき当事者は自らの権利行使を公正に行うことが求められ、その一形態として適切な期間内に訴訟などの権利行使を実行することが求められる。

日本法における懈怠条項

民法

会社法

など

刑法

道路交通法

消防法

  • 危険物の漏出等による火災の注意懈怠(消防法39条の3)

医師法

  • 試験問題や採点における注意懈怠(医師法33条)[1]

建築士法

郵便法

  • 重大な過失による郵便物遺失の注意懈怠(郵便法79条)

民間事業者による信書の送達に関する法律

人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律

日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法

脚注

  1. ^ 同様の規定が、視能訓練士法、理学療法士及び作業療法士法、薬剤師法、臨床検査技師等に関する法律、歯科技工士法、診療放射線技師法、歯科医師法、保健師助産師看護師法、栄養士法にもある。[1]

関連項目

参考文献