急性音響外傷

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急性音響外傷(きゅうせいおんきょうがいしょう)とは125~135dB以上にもなる予期しない突発的な強大音に暴露した時に起こす外傷の一種で、急性音響性聴器障害とも呼ばれる音響外傷の一種である。外傷性鼓膜穿孔を併発する場合も多い。

実際に起きる事例として多いのが銃の発射音を近距離で聞いた場合であるが、爆弾の爆発、発破工事などで起きる場合もある。

急性音響外傷になると内耳の聴覚細胞が損傷し聴覚障害や耳鳴りが起きる。重傷な場合には蝸牛神経が損傷し聴覚と平衡感覚が失われ中枢神経が失調して歩くことすらできなくなる場合もある。

特に急性音響外傷を起こしやすいのは日常的に銃声や爆発音に晒されている軍人である。耳鳴りを抱えたまま戦地で活動したり、一般社会に復帰した軍人が日常的に耳鳴りに悩まされた結果、精神的に病んで異常行動を起す場合があり、これが帰還兵の大きな問題になる場合が多い。

治療法

内耳へのステロイド剤の投与が行われる。特に戦地経験など心的外傷を負っている場合は耳鳴りが幻聴へと悪化する場合もあるため。投薬を行っても耳鳴りが改善しない場合には心療内科によるメンタルケアを行う必要がある。

予防法

耳栓をするなどして耳を塞ぐのが最も簡単で確実な予防法である。

ただし、軍隊などで耳栓が出来ない場合には覚悟と気合という、いささか精神論的な方法である程度の予防が可能である。これは、急性音響外傷は人間が予期していなかった突発的な強大音によって起きるのであり、逆に言うと、予期していた爆発音などでは起こしにくいためである。これは人間は大きな音が鳴ると反射的に鼓膜張筋と鐙骨筋が緊張して中耳が狭くなることで、大きすぎる振動エネルギーが内耳に伝わらないようにする防御機構を持っているためである。鐙骨筋は顔面神経の支配を受けているため、顔の筋肉が緊張した状態では同様に緊張する。つまり、事前にある程度の緊張状態を保っていれば外傷を軽減できると言うわけである。