唐物語
「唐物語」(からものがたり)は、中国の故事を翻案し歌物語の形式にした説話物語集。作者は藤原成範である蓋然性が高く、成立は12世紀後半と推定される。
それぞれに異なる人物を主人公とする27の短い物語を集成したものである。『蒙求』『白氏文集』などを主要な出典とし、多くは有名な故事を題材としている。「唐」(から)は中国を意味し、唐代以外の故事も多い。文章は『源氏物語』や和歌の影響の強い優雅な和文体で、内容的にも原典とは細部でかなりの違いが見られる。また、張文成(「遊仙窟」の作者、張鷟)が則天皇后の愛人であったという第9話と、結婚を拒否して山中に逃れた娘が犬と交わるという第27話は、中国の原典が発見されておらず、文学史上注目すべき問題を提起している。