分離公理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。H.Y.Logic (会話 | 投稿記録) による 2012年3月20日 (火) 21:47個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎公理)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

数学において、分離公理(ぶんりこうり)とは、空間のつながり具合、特に位相空間または閉集合開集合によりどのように分離されるかということを規定する公理


公理

通常、T0 から T4 の 5 つに区分される。それぞれの公理の内容は、位相空間 X に対して、以下のように述べられる。(ただし、以下では空集合の記号 の代用として Ø を用いている。)

T0(コルモゴロフ (Kolmogorov) の分離公理)
x, yX の相異なる 2 点ならば、x を含む開集合で y を含まないもの、あるいは y を含む開集合で x を含まないもののうち少なくともいずれかが存在する。
T1(フレシェ (Fréchet) の分離公理)
X の任意の点 a と、異なる任意の点 x に対し、a を含み x を含まない開集合が存在する。
T2(ハウスドルフ (Hausdorff) の分離公理)
X の任意の異なる二点 x, y に対し、xU, yV, UV共通部分を持たない(素集合)。という条件を満たす開集合 U, V が存在する。
T3(ビートリス (Vietoris) の分離公理)
X の任意の点 xx を含まない閉集合 F に対し、xU, FH, UH = Ø を満たす開集合 U, H が存在する。
T4(ティーツェ (Tietze) の第一公理)
X において、互いに共通部分を持たない任意の二つの閉集合 E, F に対し、EG, FH, GH = Ø を満たす開集合 G, H が存在する。

加えて、次のような分離公理もある。記号 Cl は閉包作用素(すなわち Cl(A) は A の閉包)である。

T5(ティーツェ (Tietze) の第二公理)
Cl(A) ∩ B = A ∩ Cl(B) = Ø を満たす X の任意の部分集合 A, B に対して、AU, BV, UV が空であるような開集合 U, V が存在する。
T2+1/2
X の相異なる任意の 2 点 a, b に対して, aU, bV, Cl(U) ∩ Cl(V) = Ø を満たす開集合 U, V が存在する。
T3+1/2(チコノフ (Tikhonov) の分離公理)
X の任意の閉集合 FF に含まれない点 a に対して、次を満たす連続関数 f: X → [0, 1] が存在する:
T6
X の任意の閉集合 F に対して、F 上のみで 0 になる連続関数 f: X → [0, 1] が存在する

条件 Ti を満たす位相空間を Ti-空間などと呼ぶことがある。また、通常はこれらの公理を単独で扱うわけではなく幾つか組み合わせたり、別の条件あるいは上の分離公理そのままではないが同値になるような条件を分離公理に加えたりする。

T0 を満たす位相空間をコルモゴロフ空間、T2 を満たす位相空間をハウスドルフ空間、T1 を満たす位相空間をクラトウスキ(Kuratowski)空間、T1 かつ T3 を満たす位相空間を正則空間、T1 かつ T4 を満たす位相空間を正規空間という。また、T1 かつ T3+1/2 を満たす位相空間を完全正則空間と呼ぶ。

  • 距離空間は正規空間である。


性質

相互の関係

  • T2 ⇒ T1 ⇒ T0
  • 正則なら T2
  • 正規なら T2

その他の性質

関連項目