不動産競売

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。MX1800 (会話 | 投稿記録) による 2015年12月1日 (火) 01:52個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎外部リンク)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

不動産競売(ふどうさんけいばい)とは、民事執行法(以下「法」という)に基づき、債権回収のために、債権者が裁判所に対して申立てを行うと、その不動産裁判所が売却する手続である。強制競売と担保不動産競売を併せて一般にこのように呼ぶ。

強制競売

債権者が、公正証書判決等の債務名義に基づき、債務者又は保証人の所有する不動産に対して当該不動産を管轄する地方裁判所に対して強制競売を申し立てることができる(法43条以下)。地方裁判所では強制競売の申立てを受理すると、「平成○○年(ヌ)第○○号」事件との事件番号を付して強制競売を進める。債務者の意思は反映されずに裁判所の命令で手続きが進むため、強制競売と呼ばれる。

手続の流れについては強制執行#強制競売参照。

  • 一括売却
相互の利用上不動産を他の不動産(差押債権者・債務者が異なる場合を含む)と一括して同一の買受人に買い受けさせることが相当であると認めるときは、これらの不動産を一括売却できる(法61条)。ただし、超過売却のときは債務者の同意がある場合に限られる(法61条ただし書)。
  • 超過売却
1個の申立てにより強制競売の開始決定がされた数個の不動産のうち、一部の不動産の買受可能価額で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる見込みがある場合は、債務者の同意があるときに限り売却することができる(法61条ただし書)。
また、数個の不動産を売却実施(入札など)した場合において、一部の買受申出の額で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる見込みがある場合は、執行裁判所は他の不動産の売却許可決定を留保しなければならない(法73条1項)。各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる見込みの不動産が数個あるときは、どの不動産を売却すべきかについて、あらかじめ、債務者の意見を聴かなければならない(同条2項)。
土地・建物(法定地上権付)の競売であっても超過売却になると法定地上権付の建物だけ競売で売却されることとなる。もちろん債務者(所有者)の同意があれば一括で売却されるが、本来、不動産を購入したい人は、土地付きの建物を求めるのが普通であり、この売り方ではなかなか売却されず、その結果、競売価格が下がり、申立債権者を害することがよくあり、債務者(所有者)にも大きな損害を与える結果(本来なら余剰があり、配当されるべきものが、配当されなくなるなど)となるとの問題もある。

担保不動産競売

債権者が、債務者・物上保証人から抵当権根抵当権の設定を受けた担保権者である場合に、抵当権(根抵当権)の実行として、当該不動産を管轄する地方裁判所に対して担保不動産競売を申し立てることができる(法180条以下)。地方裁判所では担保不動産競売の申立を受理すると、「平成○○年(ケ)第○○号」事件との事件番号を付して担保不動産競売を進める。原則として、強制競売の規定が準用される(法188条)。

期間入札と特別売却

強制競売が決定すると、まず裁判所の執行官による査定が行われる。この査定により最低売却価格が決定する。その数ヶ月後に、2週間から1ヶ月の間で定めて期間入札が行われる。この入札は個人、法人を問わず保証金を裁判所に支払えば誰でもできる。

期間内に入札がなかった場合、特別売却となり先着順での落札となる。特別売却でも売れなかった場合、査定を再度行い、最低売却価格を下げて期間入札が行われる。この繰り返しは現状3回が限度で、3回競売にかけて売れなかった不動産は、裁判所が債権者に対し競売中止の通知を出すことになっている。

強制競売のメリット・デメリット

最近は住宅ローンが払えず、債権者が強制競売を行う事例が増えている。競売のデメリットは市場価格より2、3割安いことがほとんどなので、落札金額が債務額を下回ることが多い。公的な競売であるから裁判所を通じ誰でも物件情報を見ることができるため、不動産業者が頻繁に訪れることもある。メリットとしては裁判所が売却の手続きを勝手にやってくれるので、殆ど何もしなくて良い。

入札する側としてのメリットは当然安いことだがリスクも存在する。建物内部は執行官が撮影した写真を見て判断することになるが、現状渡しが原則なので落札後に発見された構造上の瑕疵等の修復費用は落札者が負担しなければならない。また落札後、元の所有者が居座り続けるケースもある。その場合、裁判所に引き渡し命令の申し立てを行い、執行官による強制立ち退きも可能ではあるが、相応の費用がかかるし、立ち退き費用は原則立ち退く側の負担だが、話し合いにより落札者が立ち退き費用を負担せざるを得ない場合もある。

その他の問題

不動産競売に関しては、入札参加の規定に、暴力団など反社会的団体を排除する規定が盛り込まれていない。このこともあって、土地や建物の競売に暴力団が堂々と参加し、組事務所などに使用することが相次いでおり、全国で問題となっている。日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会は、入札参加から暴力団排除を可能とするため、民事執行法の改正を法務省などに求める方針である[1][2]

脚注

  1. ^ 組事務所の入手、こんな手口も…組長名で堂々と 読売新聞 2013年1月4日
  2. ^ 差し押さえられた土地、暴力団が公売で買い戻し 読売新聞 2013年1月6日

外部リンク