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ベルトランの仮説

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ベルトランの仮説とは、「自然数 n ≥ 2 に対して、n < p < 2n を満たす素数 p が存在する」という、フランス数学者ベルトランが1845年に発表した命題。ベルトラン自身はこの命題を n が 3 × 106 以下の場合に検証し、一般の場合についての予想として提出した。この命題は実際には1850年にチェビシェフによって証明されており、現在ではベルトラン=チェビシェフの定理、(数論における)チェビシェフの定理とも呼ばれている。

数学者の一松信は、高校数学で証明できる解析的整数論の成果の中で、おそらく「素数の逆数和は発散する」の次くらいに易しいと著している[1]

証明

初等的な証明

最初、チェビシェフにより証明され、それはガンマ関数を使った高度なものであったが、のちになってポール・エルデシュが高校生のときに初等的な証明を与えることとなる[1]

2011年頃、一松信は、エルデシュの初等的な証明の解説[2]を数研通信(数研出版から配布されている冊子)に著した[1]

素数定理による証明

素数定理により、n が十分大きいときには n と 2n の間の素数の個数は n / log n に近いことが言え、特にベルトランの仮説によって保証されている1つの素数の存在よりもより強く、もっとたくさんの素数が n と2n の間に存在していることが分かる。しかしここで素数定理をベルトランの仮説の証明に用いるためには、 n と 2n の間の実際の素数の個数が n / log n からどれだけずれているのかを評価しなければならない。この評価を得ることは可能だが、証明は入り組んだものになるし、チェビシェフによるベルトランの仮説の証明は素数定理の証明よりも前に得られていた。

ゴールドバッハの予想による証明

ゴールドバッハの予想を真と仮定すれば、ベルトランの仮説は簡単に示せる。

n > 1 に対し 2n と 2n + 2 は2つの素数の和として表せる。n が素数でないとき 2n の場合の2つのうち大きい方が、n が素数のとき 2n + 2 の場合の2つのうち大きい方が、n より大きく 2n より小さい。

一般化

さらに、ポール・エルデシュはこの命題の一般化として次の命題を証明した。

「任意の自然数 k に対して、ある自然数 N を取ると、任意の自然数 n > N に対して、n と 2n の間に 素数が少なくとも k 個存在する」 

脚注

参考文献

M. アイグナー, G.M. ツィーグラー, 『天書の証明』(蟹江訳), シュプリンガー・フェアラーク東京, 2002.
H.J. Ricardo and Y. Tanaka, "Goldbach's conjecture implies Bertrand's postulate," The American Mathematical Monthly 112 (2005) 492.