グリーン関数(グリーンかんすう)は
- ジョージ・グリーン (George Green) により導入された関数。微分方程式の解法を与える。本項で詳述。
- J. A. Green により導入された組合せ論的関数。グリーン多項式とも。有限シュバレー群(オリジナルは有限体上の一般線型群)の既約表現を記述する数学的対象である。
グリーン関数 (Green's function) とは、微分方程式や偏微分方程式の解法の一つであるグリーン関数法に現れる関数である。グリーン関数法は、英国の数学者ジョージ・グリーンによって考案された。
下の偏微分方程式の(初期値)境界値問題を例に考える。
ここで、L は微分作用素、Ω は領域であり、領域の境界 Γ は、
が規定されている境界 Γ1 と、
が規定されている境界 Γ2 からなり、Γ1 ∪ Γ2 = Γ、Γ1 ∩ Γ2 = ∅ であるものとする。また、n は境界での外向き法線方向を示す。
上記の問題に対するグリーン関数 G(x, x′) とは次の条件を満たす関数のことである。
ここに、x′ はソース点の位置を表す。
物理学、数学、工学各分野において非常に重要な関数であり、広い用途で使用される。プロパゲータ、伝播関数と呼ばれることもある。また、無限領域におけるグリーン関数を基本解という。
ただし、境界が単純(無限領域、半無限領域、無限平板領域など)でない場合にはグリーン関数を解析的に求めるのは大変困難である。
摂動論とグリーン関数
系のハミルトニアンが与えられて、量子論におけるシュレーディンガー方程式などの基本方程式が与えられたとき、その方程式を厳密に解く事は一般的に非常に困難な場合が多い。
そのため多くの近似手法が存在するのであるが、時として近似が不十分な場合がでてくる。その際、用いた近似手法を補正する常套手法に摂動論がある。グリーン関数は摂動論とも密接にかかわっており非常に有用なテクニックである。
以下では摂動論におけるグリーン関数の形式理論について解説する。
系のハミルトニアンHが与えられたとき、第0近似として
が与えられたとする。この時、この
に対して固有値方程式
が成り立つとする。(例:ハートリー-フォック近似など。)
この時、
を微分作用素として考えると非摂動グリーン関数が
と定義される。
(ここでデルタ関数
は形式的に1とした。)
次に系のハミルトニアンから
を取り除いた残留相互作用を
とするとき、この残留相互作用を摂動として取り扱った場合の摂動展開は
この式の両辺に
を作用させると
となることが容易にわかる。そして右辺の第2項を左辺に移項することによって摂動グリーン関数は
を満たしていることがわかる。また、この摂動グリーン関数が満たす関係式は
に対応している。
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